このゲームを終わらせたのは俺でも、拓弥でもない。もちろん、実況の和義でもない。
下校を知らせる乾いたチャイム音だった。
正直、ここまで真剣に集中したことがなかったものだから、時間などあっという間に過ぎるという感覚は今までになかった。
「…と、いうことで。この試合、引き分けとなりました!」
和義は大きく伸びをしたかと思えば、立ち上がって帰りの支度に取り組み始めていた。
俺も拓弥も、この宣言を認識するのに時間がかかった。
「やるじゃあないか。」
婚礼前の両親との顔合わせで相手を認める親父のような言い方だな。
「まあ、結局勝負なし。というか時間切れだが」
俺もさっさと身支度を済ませる。
「明日もやるか?」
「やらん」
「即答かよ。悲しいなー。」
まったく悲しくなさそうに言うじゃん。真顔じゃん。
「さて、鍵閉めるから出てけよ」
和義が帰宅の合図をかけると、俺らはそそくさと外に出て昇降口へと向かった。
結局、その日の部活はこんな感じで終わった。進級早々だいぶ濃い目の部活だったが。
後日、というか二日後に俺は部室へと足を運んだわけだが、その日はもうすでに二人とも来ていた。
「お、来たじゃないか。」
「昨日は予定があったんだよな」
「そう、バイトだバイト」
「じゃあ、やるか。」
「「何を?」」
俺と和義がハモった。
「決まってんだろ。」
ニンマリと笑うと、
「特効元気薬を飲ませるんだよ。」
「嫌だぁあああぁぁぁぁぁ!!」
ああ、そんなのがあったな。
「部活動紹介に乗っけようと思ってるから。いいリアクション頼むよ。」
ここはバラエティ番組のスタジオですかね?
「任せとけ」
こいつも乗り気じゃねえか。
「それでは、撮影五秒前。」
どっからかひょいっとビデオカメラを取り出すと、和義と俺を映して
「三、二、一、どうぞ!」
「…えー。どうも、想造部部長の臼井和義です。早速ですが、呪物ドリンクを飲もうと思います」
「なんだよ、その導入」
「いいじゃねえか」
「よくねえだろ。やり直しだ、やり直し」
「すいません、伊月監督!」
「なんだお前」
「じゃあ、撮り直すぞ。よーい、アクアション!」
「やあ、想造部の部長臼井和義です。俺知ってるぜ。森◯乳業ってグ◯コのことでしょ?え、違うの?俺知らなかったわ。じゃあ、なんのことだ?」
「多方面に喧嘩売るな!」
「ということで、今日は飲むと頭が良くなるジュースを飲もうと思います」
「…どういうことだよ!わっかんないよ!」
「ほな、いただきます」
そう言うと、和義はペットボトルの蓋を勢いよく回した。プシュッとたぶん炭酸が抜ける音がした。これやばいだろ。野菜しか入れてないってことは、あの音は微生物が分解して生み出した二酸化炭素ってことだよな…。
「…においはしないな。不味そう…」
「見てるだけなのに体が危険信号出してんだが」
「安全だから、大丈夫。たぶん。」
「そのお茶を濁す言い方やめてくれよ!」
「とりあえず、飲んでくれ。」
顰め面をしながらも、ペットボトルに口をつけると、砂時計をひっくり返すように一気にグイッとあおった。喉が動いたかと思うと、
「ゴバッ、ッグア!」
咳き込みながらペットボトルを机に置くと、そのまま倒れ込んでしまった。熊にあったときに死んだふりをすればいいという迷信を信じた子供のような見様だが、和義は苦しそうに咳き込んでいる。これほんとに死ぬんじゃないか?
「…。」
拓弥は相変わらずニヤニヤしながらビデオを撮っていた。
「い、以上で想造部の紹介を…終わ、ッ!」
口を抑えた。そのまま勢いよく部室を飛び出した。どうやら我慢の限界だったらしい。
「と、いうことでね。以上で紹介を終わりまーす。」
恐ろしいなこいつ。
下校を知らせる乾いたチャイム音だった。
正直、ここまで真剣に集中したことがなかったものだから、時間などあっという間に過ぎるという感覚は今までになかった。
「…と、いうことで。この試合、引き分けとなりました!」
和義は大きく伸びをしたかと思えば、立ち上がって帰りの支度に取り組み始めていた。
俺も拓弥も、この宣言を認識するのに時間がかかった。
「やるじゃあないか。」
婚礼前の両親との顔合わせで相手を認める親父のような言い方だな。
「まあ、結局勝負なし。というか時間切れだが」
俺もさっさと身支度を済ませる。
「明日もやるか?」
「やらん」
「即答かよ。悲しいなー。」
まったく悲しくなさそうに言うじゃん。真顔じゃん。
「さて、鍵閉めるから出てけよ」
和義が帰宅の合図をかけると、俺らはそそくさと外に出て昇降口へと向かった。
結局、その日の部活はこんな感じで終わった。進級早々だいぶ濃い目の部活だったが。
後日、というか二日後に俺は部室へと足を運んだわけだが、その日はもうすでに二人とも来ていた。
「お、来たじゃないか。」
「昨日は予定があったんだよな」
「そう、バイトだバイト」
「じゃあ、やるか。」
「「何を?」」
俺と和義がハモった。
「決まってんだろ。」
ニンマリと笑うと、
「特効元気薬を飲ませるんだよ。」
「嫌だぁあああぁぁぁぁぁ!!」
ああ、そんなのがあったな。
「部活動紹介に乗っけようと思ってるから。いいリアクション頼むよ。」
ここはバラエティ番組のスタジオですかね?
「任せとけ」
こいつも乗り気じゃねえか。
「それでは、撮影五秒前。」
どっからかひょいっとビデオカメラを取り出すと、和義と俺を映して
「三、二、一、どうぞ!」
「…えー。どうも、想造部部長の臼井和義です。早速ですが、呪物ドリンクを飲もうと思います」
「なんだよ、その導入」
「いいじゃねえか」
「よくねえだろ。やり直しだ、やり直し」
「すいません、伊月監督!」
「なんだお前」
「じゃあ、撮り直すぞ。よーい、アクアション!」
「やあ、想造部の部長臼井和義です。俺知ってるぜ。森◯乳業ってグ◯コのことでしょ?え、違うの?俺知らなかったわ。じゃあ、なんのことだ?」
「多方面に喧嘩売るな!」
「ということで、今日は飲むと頭が良くなるジュースを飲もうと思います」
「…どういうことだよ!わっかんないよ!」
「ほな、いただきます」
そう言うと、和義はペットボトルの蓋を勢いよく回した。プシュッとたぶん炭酸が抜ける音がした。これやばいだろ。野菜しか入れてないってことは、あの音は微生物が分解して生み出した二酸化炭素ってことだよな…。
「…においはしないな。不味そう…」
「見てるだけなのに体が危険信号出してんだが」
「安全だから、大丈夫。たぶん。」
「そのお茶を濁す言い方やめてくれよ!」
「とりあえず、飲んでくれ。」
顰め面をしながらも、ペットボトルに口をつけると、砂時計をひっくり返すように一気にグイッとあおった。喉が動いたかと思うと、
「ゴバッ、ッグア!」
咳き込みながらペットボトルを机に置くと、そのまま倒れ込んでしまった。熊にあったときに死んだふりをすればいいという迷信を信じた子供のような見様だが、和義は苦しそうに咳き込んでいる。これほんとに死ぬんじゃないか?
「…。」
拓弥は相変わらずニヤニヤしながらビデオを撮っていた。
「い、以上で想造部の紹介を…終わ、ッ!」
口を抑えた。そのまま勢いよく部室を飛び出した。どうやら我慢の限界だったらしい。
「と、いうことでね。以上で紹介を終わりまーす。」
恐ろしいなこいつ。