文字サイズ変更

君の名前を呼ぶまで

#47

第47話 最終話

帰り道。
夕陽が沈み、街灯がぽつぽつと灯り始める。

蒼真は、歩きながら何度もこちらを見ては、
すぐに視線をそらしていた。

胸がざわつく。

「……蒼真くん?」

呼ぶと、蒼真は立ち止まり、
ゆっくりとこちらを振り返った。

「結衣……ちょっと、いい?」

その声はいつもより低くて、
どこか決意が混ざっていた。

一歩近づかれただけで、心臓が跳ねる。

「どうしたの……?」

蒼真は、迷うように息を吸い込んだ。

「今日……ずっと思ってた。
 結衣のこと、触れたいって」

胸が一気に熱くなる。

「……私もだよ」

その瞬間、蒼真の目が揺れた。
驚きと、安堵と、抑えきれない想いが混ざったような目。

次の瞬間――

蒼真が、結衣の手首をそっとつかんだ。

「え……?」

気づいたときには、
背中が壁に触れていた。

ドンッ

蒼真の手が、結衣のすぐ横に置かれる。
逃げられない距離。
息が触れそうなほど近い。

胸が苦しいほど高鳴る。

「……蒼真くん……?」

蒼真は、震える声で言った。

「ごめん……強引かもしれないけど……
 もう、抑えられない。
 結衣のこと……好きすぎて」

その言葉だけで、涙が出そうになる。

「……嫌じゃないよ」

そう言うと、蒼真の表情がふっと緩んだ。

そして――

ゆっくりと、
迷いながら、
でも確かに距離を詰めてきて。

結衣の頬に、そっと手が触れた。

その手があたたかくて、
触れられただけで胸が溶けそうになる。

「結衣……」

名前を呼ばれた瞬間、
息が止まった。

そして――

蒼真の唇が、
結衣の唇にそっと触れた。

触れたか触れないかの、
優しくて、震えるようなキス。

ほんの一瞬なのに、
世界が静かになった気がした。

離れたあと、蒼真は額を結衣の額にそっと寄せて、
小さく、震える声で言った。

「……好きだよ。
 結衣が、ほんとに好き」

胸がぎゅっとなる。

「……私も。
 蒼真くんが、大好き」

二人の影が重なり、
静かな夜の中で、
初めてのキスはそっと落ちた。

甘くて、
優しくて、
忘れられない夜だった。
ページ選択

2026/03/14 21:38

おひめ
ID:≫ 19ZQABSFMiPlU
コメント

この小説につけられたタグ

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はおひめさんに帰属します

TOP