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君の名前を呼ぶまで

#41

第41話 初デート

初めてのデート当日。
朝から胸がそわそわして、落ち着かない。

――今日、蒼真くんと歩くんだ。

その事実だけで、何度も深呼吸した。

待ち合わせは、駅前の小さな広場。
少し早く着いてしまって、手元のスマホを何度も確認する。

すると――

「……結衣」

名前を呼ばれて顔を上げると、
蒼真が、少し息を弾ませながら立っていた。

「おはよう、蒼真くん」

「……おはよう」

いつもより少しだけ整えられた髪。
いつもより少しだけきれいに畳まれた制服。
それだけで、胸がぎゅっとなる。

蒼真は視線をそらしながら、ぽつりと言った。

「……来てくれて、ありがとう」

「私こそ……誘ってくれて、ありがとう」

二人で歩き出す。
最初は少しぎこちない。
でも、そのぎこちなさが愛おしい。

駅前の道を抜けて、
少し静かな住宅街へ。

「……結衣」

名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねる。

「なに?」

蒼真は、迷うように指先を動かしながら言った。

「手……つないでもいい?」

胸が熱くなる。

「うん」

差し出した手を、蒼真はそっと包んだ。
いつもより少しだけ強く。
いつもより少しだけ長く。

指が絡む。
温度が伝わる。
胸がじんわりとあたたかくなる。

「……あったかい」

蒼真が小さくつぶやいた。

「蒼真くんの手も……あったかいよ」

しばらく歩いたあと、蒼真がぽつりと言った。

「こうやって歩くの……ずっとしてみたかった」

その言葉に、胸がぎゅっとなる。

「私も……だよ」

二人でゆっくり歩く。
ただそれだけなのに、世界が少し優しく見えた。

風が吹いて、蒼真の前髪が揺れる。

「結衣と歩くと……落ち着く」

「私も……蒼真くんと歩くと、嬉しいよ」

初めてのデートは、
特別な場所じゃなくていい。

ただ、隣に蒼真がいるだけで、
それだけで十分だった。
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2026/03/14 17:53

おひめ
ID:≫ 19ZQABSFMiPlU
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