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君の名前を呼ぶまで

#21

第21話 言葉より気持ち

蒼真が、震える指先で私の指に触れた翌日。
その一瞬の温度が、まだ指先に残っている気がした。

――触れたい。

その言葉が、何度も胸の奥で反響していた。

教室に入ると、蒼真はいつもの席にいた。
でも、今日は本を開いてすらいなかった。

「……おはよう」

声をかけると、蒼真はゆっくり顔を上げた。

「……おはよう」

その声は小さいのに、昨日よりもずっと優しい。
胸がふわりと温かくなる。

席に戻ろうとしたとき、蒼真がぽつりと言った。

「今日……帰り、話したいことがある」

胸が跳ねた。

「うん、いいよ」

蒼真は小さくうなずき、視線をそらした。
耳がほんのり赤い。

放課後。
校門を出ると、蒼真が待っていた。

「……行こ」

その声は静かで、どこか決意が混ざっていた。

二人で歩く帰り道。
いつもよりさらにゆっくりした歩幅。
沈黙が続いても、不思議と苦しくない。

夕陽が沈みかけ、街がオレンジ色に染まる。

ふと、蒼真が立ち止まった。

「……結衣」

名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねる。

「なに?」

蒼真は少しだけ迷ったように指先を動かし、
そして、ぽつりと言った。

「昨日……触れたとき」

胸がぎゅっとなる。

「怖かったけど……嬉しかった」

その一言で、息が止まった。

夕陽が二人の影を長く伸ばす。
風が吹いて、蒼真の前髪が揺れる。

「……蒼真くん」

名前を呼ぶと、蒼真は少しだけ目をそらした。

「結衣の手……あったかかった」

その声は震えていて、どこか苦しそうで、でも優しかった。

「もっと触れたいって……思った」

胸が熱くなる。
涙が出そうなくらい嬉しくて、苦しくて。

蒼真はゆっくりと息を吸い、
そして、静かに続けた。

「結衣のこと……好きかもしれない」

その言葉は、告白というより、
心がこぼれ落ちたみたいに自然だった。

私は息を呑んだ。
胸が熱くて、苦しくて、でも嬉しくて。

「……“かもしれない”じゃなくていいよ」

蒼真は驚いたように顔を上げた。

「私も……蒼真くんのこと、好きだから」

夕陽の中で、
言葉より先に、気持ちが触れた。
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2026/03/14 17:21

おひめ
ID:≫ 19ZQABSFMiPlU
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