蒼真の家の前で別れた翌日。
胸の奥に残ったざわつきは、まだ消えていなかった。
――ここで、いろいろあった。
蒼真がそう言ったときの表情。
淡々としているのに、どこか痛みを隠しているような瞳。
その姿が、何度も頭の中でよみがえる。
教室に入ると、蒼真はいつもの席にいた。
けれど、今日は本を開いたまま、ページをめくっていない。
「……おはよう」
声をかけると、蒼真はゆっくり顔を上げた。
「……おはよう」
返事はいつも通りなのに、どこか疲れているように見えた。
席に戻ろうとしたとき、蒼真がぽつりと言った。
「昨日……ごめん」
「え、なんで?」
「……結衣を、変な気持ちにさせたかもしれないから」
胸がきゅっとなる。
「変じゃないよ。むしろ……話してくれて嬉しかった」
蒼真は少しだけ目を伏せ、
そして、かすかに息を吐いた。
「……結衣は、優しすぎる」
「またそれ言う」
「……ほんとに、そう思う」
その声は弱くて、でもどこか安心しているようだった。
放課後。
私は自然と校舎裏へ向かった。
理由なんていらない。
そこに行けば、蒼真に会える気がしたから。
そして――やっぱり、彼はいた。
「……来ると思った」
「蒼真くんも」
「……なんとなく」
その“なんとなく”が、もう嘘じゃないことくらい分かっている。
沈黙が落ちる。
でも、昨日よりも今日の沈黙のほうが、ずっと優しい。
「蒼真くん」
「……なに」
「昨日のこと……無理に話さなくていいからね」
蒼真は驚いたように目を瞬き、
そして、ゆっくりと視線をそらした。
「……結衣って、ほんとに変わってる」
「またそれ?」
「……でも、結衣にだけは……嫌われたくない」
その一言で、息が止まった。
「嫌うわけないよ」
「……ほんとに?」
「ほんと」
蒼真はしばらく黙っていた。
風が吹いて、二人の間をすり抜けていく。
そして、ぽつり。
「……結衣には、言いたいことがある」
胸が跳ねた。
「でも……まだ言えない」
その言葉は、告白のようで、告白じゃない。
でも、確かに“何か”がそこにあった。
私はそっと言った。
「言えるときでいいよ。蒼真くんのペースで」
蒼真はゆっくりと顔を上げ、
そして、小さくうなずいた。
「……ありがとう」
その声は、昨日よりも今日のほうが、ずっと近かった。
胸の奥に残ったざわつきは、まだ消えていなかった。
――ここで、いろいろあった。
蒼真がそう言ったときの表情。
淡々としているのに、どこか痛みを隠しているような瞳。
その姿が、何度も頭の中でよみがえる。
教室に入ると、蒼真はいつもの席にいた。
けれど、今日は本を開いたまま、ページをめくっていない。
「……おはよう」
声をかけると、蒼真はゆっくり顔を上げた。
「……おはよう」
返事はいつも通りなのに、どこか疲れているように見えた。
席に戻ろうとしたとき、蒼真がぽつりと言った。
「昨日……ごめん」
「え、なんで?」
「……結衣を、変な気持ちにさせたかもしれないから」
胸がきゅっとなる。
「変じゃないよ。むしろ……話してくれて嬉しかった」
蒼真は少しだけ目を伏せ、
そして、かすかに息を吐いた。
「……結衣は、優しすぎる」
「またそれ言う」
「……ほんとに、そう思う」
その声は弱くて、でもどこか安心しているようだった。
放課後。
私は自然と校舎裏へ向かった。
理由なんていらない。
そこに行けば、蒼真に会える気がしたから。
そして――やっぱり、彼はいた。
「……来ると思った」
「蒼真くんも」
「……なんとなく」
その“なんとなく”が、もう嘘じゃないことくらい分かっている。
沈黙が落ちる。
でも、昨日よりも今日の沈黙のほうが、ずっと優しい。
「蒼真くん」
「……なに」
「昨日のこと……無理に話さなくていいからね」
蒼真は驚いたように目を瞬き、
そして、ゆっくりと視線をそらした。
「……結衣って、ほんとに変わってる」
「またそれ?」
「……でも、結衣にだけは……嫌われたくない」
その一言で、息が止まった。
「嫌うわけないよ」
「……ほんとに?」
「ほんと」
蒼真はしばらく黙っていた。
風が吹いて、二人の間をすり抜けていく。
そして、ぽつり。
「……結衣には、言いたいことがある」
胸が跳ねた。
「でも……まだ言えない」
その言葉は、告白のようで、告白じゃない。
でも、確かに“何か”がそこにあった。
私はそっと言った。
「言えるときでいいよ。蒼真くんのペースで」
蒼真はゆっくりと顔を上げ、
そして、小さくうなずいた。
「……ありがとう」
その声は、昨日よりも今日のほうが、ずっと近かった。
- 1.第1話 雨の校舎裏
- 2.第2話 同じ傘の下で
- 3.第3話 名前を呼んでほしくて
- 4.第4話 距離の理由
- 5.第5話 触れられない理由
- 6.第6話 放課後の図書室
- 7.第7話 気づいてしまった想い
- 8.第8話 秘密のメッセージ
- 9.第9話 胸の音がうるさい
- 10.第10話 雨が降るまで
- 11.第11話 蒼真の家の前で
- 12.第12話 言えないこと、言いたいこと
- 13.第13話 弱さを見せる勇気
- 14.第14話 触れそうで、触れない
- 15.第15話 名前を呼ぶ声
- 16.第16話 触れない距離のまま
- 17.第17話 近づくたびに
- 18.第18話 言葉と心
- 19.第19話 言えない言葉
- 20.第20話 触れたいのに
- 21.第21話 言葉より気持ち
- 22.第22話 好きって怖い
- 23.第23話 寄り添い方
- 24.第24話 好きの形
- 25.第25話 止まらない気持ち
- 26.第26話 指先と気持ち
- 27.第27話 理由なんていらない
- 28.第28話 離したくない
- 29.第29話 名前を呼ぶ距離
- 30.第30話 名前を呼ぶ距離
- 31.第31話 名前を呼ぶ距離
- 32.第32話 好きって言葉は超最高
- 33.第33話 この気持ちの名前
- 34.第34話 世界の変化
- 35.第35話 恋人の空気
- 36.第36話 近づくたびに
- 37.第37話 もっと知りたい 知ってほしい
- 38.第38話 もっと知りたい 知ってほしい
- 39.第39話 知っていく
- 40.第40話 約束
- 41.第41話 初デート
- 42.第42話 同じ気持ち
- 43.第43話 帰りたくない
- 44.第44話 胸の温度
- 45.第45話 特別
- 46.第46話 わがままじゃない
- 47.第47話 最終話