雨が上がった翌日。
空は晴れているのに、胸の奥はどこかざわついていた。
――昨日、蒼真が言いかけた言葉。
雨音にかき消されて聞こえなかったけれど、
あの瞬間の蒼真の表情が、ずっと頭から離れない。
教室に入ると、蒼真はいつもの席にいた。
でも、今日はどこか落ち着かない様子で本をめくっている。
「……おはよう」
声をかけると、蒼真は顔を上げた。
その瞳が、ほんの一瞬だけ揺れた。
「……おはよう」
返事はいつも通りなのに、どこかぎこちない。
席に戻ろうとしたとき、蒼真がぽつりと言った。
「今日……帰り、ちょっと寄り道してもいい?」
昨日と同じ言葉。
でも、声のトーンが少し違う。
「うん、いいよ」
蒼真は小さくうなずき、視線をそらした。
放課後。
校門を出ると、蒼真が待っていた。
「……行こ」
その声は静かで、どこか決意のようなものが混ざっていた。
歩きながら、蒼真はほとんど話さなかった。
沈黙が続くたび、胸がざわつく。
「蒼真くん、どこ行くの?」
「……ちょっと、見せたいものがある」
見せたいもの。
その言葉が胸に引っかかる。
しばらく歩いて、住宅街に入った。
夕陽が差し込んで、家々の影が長く伸びる。
そして――蒼真は一軒の家の前で立ち止まった。
「……ここ」
「ここって……蒼真くんの家?」
蒼真は小さくうなずいた。
「……うん」
家は静かで、どこか冷たい雰囲気をまとっていた。
窓は閉ざされ、カーテンは重く垂れ下がっている。
胸がざわつく。
「どうして……ここに?」
蒼真はしばらく黙っていた。
風が吹いて、彼の前髪が揺れる。
そして、ぽつり。
「……俺が、人に触れられなくなった理由」
息が止まった。
「ここで……いろいろあった」
その言葉は淡々としているのに、
どこか深い傷が滲んでいた。
「結衣には……知ってほしかった」
胸がぎゅっと締めつけられる。
「蒼真くん……」
「でも、全部話すのは……まだ無理」
蒼真はゆっくりと私の方を向いた。
「……だから、今日はここまで」
その瞳は、どこか寂しげで、どこか救いを求めているようだった。
私はそっと言った。
「うん。蒼真くんのペースでいいよ」
蒼真は驚いたように目を瞬き、
そして、小さくうなずいた。
「……ありがとう」
その声は、今までで一番弱くて、
でも一番本音に近かった。
夕陽の中で、二人の距離はまたひとつ、確かに近づいた。
空は晴れているのに、胸の奥はどこかざわついていた。
――昨日、蒼真が言いかけた言葉。
雨音にかき消されて聞こえなかったけれど、
あの瞬間の蒼真の表情が、ずっと頭から離れない。
教室に入ると、蒼真はいつもの席にいた。
でも、今日はどこか落ち着かない様子で本をめくっている。
「……おはよう」
声をかけると、蒼真は顔を上げた。
その瞳が、ほんの一瞬だけ揺れた。
「……おはよう」
返事はいつも通りなのに、どこかぎこちない。
席に戻ろうとしたとき、蒼真がぽつりと言った。
「今日……帰り、ちょっと寄り道してもいい?」
昨日と同じ言葉。
でも、声のトーンが少し違う。
「うん、いいよ」
蒼真は小さくうなずき、視線をそらした。
放課後。
校門を出ると、蒼真が待っていた。
「……行こ」
その声は静かで、どこか決意のようなものが混ざっていた。
歩きながら、蒼真はほとんど話さなかった。
沈黙が続くたび、胸がざわつく。
「蒼真くん、どこ行くの?」
「……ちょっと、見せたいものがある」
見せたいもの。
その言葉が胸に引っかかる。
しばらく歩いて、住宅街に入った。
夕陽が差し込んで、家々の影が長く伸びる。
そして――蒼真は一軒の家の前で立ち止まった。
「……ここ」
「ここって……蒼真くんの家?」
蒼真は小さくうなずいた。
「……うん」
家は静かで、どこか冷たい雰囲気をまとっていた。
窓は閉ざされ、カーテンは重く垂れ下がっている。
胸がざわつく。
「どうして……ここに?」
蒼真はしばらく黙っていた。
風が吹いて、彼の前髪が揺れる。
そして、ぽつり。
「……俺が、人に触れられなくなった理由」
息が止まった。
「ここで……いろいろあった」
その言葉は淡々としているのに、
どこか深い傷が滲んでいた。
「結衣には……知ってほしかった」
胸がぎゅっと締めつけられる。
「蒼真くん……」
「でも、全部話すのは……まだ無理」
蒼真はゆっくりと私の方を向いた。
「……だから、今日はここまで」
その瞳は、どこか寂しげで、どこか救いを求めているようだった。
私はそっと言った。
「うん。蒼真くんのペースでいいよ」
蒼真は驚いたように目を瞬き、
そして、小さくうなずいた。
「……ありがとう」
その声は、今までで一番弱くて、
でも一番本音に近かった。
夕陽の中で、二人の距離はまたひとつ、確かに近づいた。
- 1.第1話 雨の校舎裏
- 2.第2話 同じ傘の下で
- 3.第3話 名前を呼んでほしくて
- 4.第4話 距離の理由
- 5.第5話 触れられない理由
- 6.第6話 放課後の図書室
- 7.第7話 気づいてしまった想い
- 8.第8話 秘密のメッセージ
- 9.第9話 胸の音がうるさい
- 10.第10話 雨が降るまで
- 11.第11話 蒼真の家の前で
- 12.第12話 言えないこと、言いたいこと
- 13.第13話 弱さを見せる勇気
- 14.第14話 触れそうで、触れない
- 15.第15話 名前を呼ぶ声
- 16.第16話 触れない距離のまま
- 17.第17話 近づくたびに
- 18.第18話 言葉と心
- 19.第19話 言えない言葉
- 20.第20話 触れたいのに
- 21.第21話 言葉より気持ち
- 22.第22話 好きって怖い
- 23.第23話 寄り添い方
- 24.第24話 好きの形
- 25.第25話 止まらない気持ち
- 26.第26話 指先と気持ち
- 27.第27話 理由なんていらない
- 28.第28話 離したくない
- 29.第29話 名前を呼ぶ距離
- 30.第30話 名前を呼ぶ距離
- 31.第31話 名前を呼ぶ距離
- 32.第32話 好きって言葉は超最高
- 33.第33話 この気持ちの名前
- 34.第34話 世界の変化
- 35.第35話 恋人の空気
- 36.第36話 近づくたびに
- 37.第37話 もっと知りたい 知ってほしい
- 38.第38話 もっと知りたい 知ってほしい
- 39.第39話 知っていく
- 40.第40話 約束
- 41.第41話 初デート
- 42.第42話 同じ気持ち
- 43.第43話 帰りたくない
- 44.第44話 胸の温度
- 45.第45話 特別
- 46.第46話 わがままじゃない
- 47.第47話 最終話