その日の放課後、私はなんとなく図書室へ向かった。
静かな場所に行けば、蒼真のことを落ち着いて考えられる気がしたから。
けれど、扉を開けた瞬間――
そこにいたのは、まさにその本人だった。
窓際の席で本を読んでいる蒼真。
夕陽が差し込んで、彼の横顔をやわらかく照らしていた。
気づかれないようにそっと入ろうとしたのに、
蒼真はページをめくる手を止め、顔を上げた。
「……結衣?」
「えっ、あ……うん。ちょっと本、借りに」
嘘ではないけれど、本当でもない。
胸がどきどきして、落ち着かない。
蒼真は少し迷ったように視線を泳がせ、
そしてぽつりと言った。
「……ここ、座る?」
隣の席を指さしていた。
その仕草が不器用で、胸がじんと温かくなる。
「いいの?」
「……別に」
その“別に”が、もう照れ隠しだって分かるようになってきた。
私は蒼真の隣に座った。
距離は近いのに、どこか安心する。
しばらく二人で黙って本を読む。
ページをめくる音だけが、静かな空間に落ちていく。
ふと、蒼真が小さな声で言った。
「……昨日のこと、考えてた」
「昨日?」
「……触れられるの、苦手って言ったやつ」
胸が少し痛む。
でも、蒼真は続けた。
「結衣が……無理に聞かなかったの、嬉しかった」
「そっか……よかった」
「……だから、少しだけ話す」
蒼真は本を閉じ、視線を落とした。
「俺、小さい頃……家でいろいろあって。
人が近くに来ると、体が勝手に固まる」
その言葉は淡々としているのに、
どこか苦しさが滲んでいた。
私はそっと言った。
「教えてくれて、ありがとう」
蒼真は驚いたように目を上げた。
「……怖くないの?」
「ううん。むしろ……嬉しいよ。
蒼真くんが、私に話してくれたことが」
蒼真は視線をそらし、耳が赤くなる。
「……結衣って、ほんと変わってる」
「またそれ言う」
「……でも、嫌じゃない」
その言葉に、胸がふわりと温かくなる。
図書室の静けさの中で、
二人の距離はまたひとつ、確かに近づいた。
静かな場所に行けば、蒼真のことを落ち着いて考えられる気がしたから。
けれど、扉を開けた瞬間――
そこにいたのは、まさにその本人だった。
窓際の席で本を読んでいる蒼真。
夕陽が差し込んで、彼の横顔をやわらかく照らしていた。
気づかれないようにそっと入ろうとしたのに、
蒼真はページをめくる手を止め、顔を上げた。
「……結衣?」
「えっ、あ……うん。ちょっと本、借りに」
嘘ではないけれど、本当でもない。
胸がどきどきして、落ち着かない。
蒼真は少し迷ったように視線を泳がせ、
そしてぽつりと言った。
「……ここ、座る?」
隣の席を指さしていた。
その仕草が不器用で、胸がじんと温かくなる。
「いいの?」
「……別に」
その“別に”が、もう照れ隠しだって分かるようになってきた。
私は蒼真の隣に座った。
距離は近いのに、どこか安心する。
しばらく二人で黙って本を読む。
ページをめくる音だけが、静かな空間に落ちていく。
ふと、蒼真が小さな声で言った。
「……昨日のこと、考えてた」
「昨日?」
「……触れられるの、苦手って言ったやつ」
胸が少し痛む。
でも、蒼真は続けた。
「結衣が……無理に聞かなかったの、嬉しかった」
「そっか……よかった」
「……だから、少しだけ話す」
蒼真は本を閉じ、視線を落とした。
「俺、小さい頃……家でいろいろあって。
人が近くに来ると、体が勝手に固まる」
その言葉は淡々としているのに、
どこか苦しさが滲んでいた。
私はそっと言った。
「教えてくれて、ありがとう」
蒼真は驚いたように目を上げた。
「……怖くないの?」
「ううん。むしろ……嬉しいよ。
蒼真くんが、私に話してくれたことが」
蒼真は視線をそらし、耳が赤くなる。
「……結衣って、ほんと変わってる」
「またそれ言う」
「……でも、嫌じゃない」
その言葉に、胸がふわりと温かくなる。
図書室の静けさの中で、
二人の距離はまたひとつ、確かに近づいた。
- 1.第1話 雨の校舎裏
- 2.第2話 同じ傘の下で
- 3.第3話 名前を呼んでほしくて
- 4.第4話 距離の理由
- 5.第5話 触れられない理由
- 6.第6話 放課後の図書室
- 7.第7話 気づいてしまった想い
- 8.第8話 秘密のメッセージ
- 9.第9話 胸の音がうるさい
- 10.第10話 雨が降るまで
- 11.第11話 蒼真の家の前で
- 12.第12話 言えないこと、言いたいこと
- 13.第13話 弱さを見せる勇気
- 14.第14話 触れそうで、触れない
- 15.第15話 名前を呼ぶ声
- 16.第16話 触れない距離のまま
- 17.第17話 近づくたびに
- 18.第18話 言葉と心
- 19.第19話 言えない言葉
- 20.第20話 触れたいのに
- 21.第21話 言葉より気持ち
- 22.第22話 好きって怖い
- 23.第23話 寄り添い方
- 24.第24話 好きの形
- 25.第25話 止まらない気持ち
- 26.第26話 指先と気持ち
- 27.第27話 理由なんていらない
- 28.第28話 離したくない
- 29.第29話 名前を呼ぶ距離
- 30.第30話 名前を呼ぶ距離
- 31.第31話 名前を呼ぶ距離
- 32.第32話 好きって言葉は超最高
- 33.第33話 この気持ちの名前
- 34.第34話 世界の変化
- 35.第35話 恋人の空気
- 36.第36話 近づくたびに
- 37.第37話 もっと知りたい 知ってほしい
- 38.第38話 もっと知りたい 知ってほしい
- 39.第39話 知っていく
- 40.第40話 約束
- 41.第41話 初デート
- 42.第42話 同じ気持ち
- 43.第43話 帰りたくない
- 44.第44話 胸の温度
- 45.第45話 特別
- 46.第46話 わがままじゃない
- 47.第47話 最終話