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君の名前を呼ぶまで

#1

第1話 雨の校舎裏

春の雨は、やさしいようで残酷だった。
濡れたアスファルトに落ちる雫の音が、胸の奥の痛みを静かに広げていく。

「……なんで、あんな言い方するの」

声に出した瞬間、涙がこぼれた。
誰もいない校舎裏。
傘もささず、私はただ立ち尽くしていた。

好きだった人に、あっさり振られた。
理由も、慰めも、何もなく。
「ごめん」の一言だけ。

その一言が、こんなにも重いなんて知らなかった。

「泣いてるの?」

不意に、低い声が背後から落ちてきた。
振り返ると、そこに立っていたのは――

蒼真(そうま)。

クラスでほとんど喋らない、いつも窓際で本を読んでいる男の子。
目が合うと、彼は少しだけ眉を寄せた。

「……泣いてないよ」

強がった声は、雨よりも震えていた。

蒼真は何も言わず、私の頭上にそっと傘を差し出した。
その距離が近すぎて、心臓が跳ねる。

「じゃあ、雨のせいってことにしておく」

淡々とした声なのに、妙にあたたかい。
その優しさに触れた瞬間、胸の奥がじんと痛んだ。

「……なんで、ここにいるの」

「雨宿り。たまたま」

たまたま。
でも、彼の靴はびしょ濡れで、どう見ても“たまたま”じゃない。

嘘だ、と気づいたけれど、指摘する気力はなかった。

「帰るの、待ってた」

その一言に、呼吸が止まった。

蒼真は視線をそらし、少しだけ耳が赤い。

「……泣いてる人、放っとけないから」

胸がきゅっと締めつけられる。
どうしてだろう。
失恋したばかりなのに、こんなにも心が揺れるなんて。

「……ありがとう」

そう言うと、蒼真は小さくうなずいた。

雨音だけが響く校舎裏で、
私たちの距離は、ほんの少しだけ近づいた。
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作者メッセージ

めっちゃ頑張ってかいてきた作品です!ため書きしていたので投稿頻度すごくなると思います

2026/03/14 17:01

おひめ
ID:≫ 19ZQABSFMiPlU
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