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君の好きは、どの好き?

#39

39

翌朝。
遥はいつもより早く学校に着いた。
律にちゃんと話すため──というより、
「律がまた逃げる前に捕まえよう」という、
天然だけど妙に的確な作戦だった。

教室の前で待っていると、
律が廊下の角から姿を見せた。

「……遥?」

律は驚いたように立ち止まる。
逃げようと一歩下がった瞬間、
遥がすばやく腕をつかんだ。

「逃げないで。今日は話すの」

律は観念したようにため息をついた。

「……昨日は悪かった」

その声は小さくて、でもちゃんと届いた。

遥はぱっと顔を上げる。

「怒ってたの?」

「怒ってたっていうか……その……」

律は言葉を探すように視線を泳がせる。

「瀬尾と……楽しそうだったから」

遥はぽかんとした。

「え? 瀬尾くんと? 文房具屋のこと?」

律は少しだけ眉をひそめる。

「……他に何があるんだよ」

「だってあれ、律に渡すシャーペン選んでただけだよ?」

律の目が一瞬、大きく開いた。

「……は?」

「瀬尾くん、色のセンスいいから相談しただけで……
 瀬尾くんに渡すわけないじゃん。
 瀬尾くん、絶対すぐ無くすし」

律は思わず吹き出しそうになった。

「……お前、ほんと……」

「え? なに?」

「いや……なんでもない」

律は顔をそむけたけど、
耳まで赤くなっているのが丸見えだった。

遥は小さな紙袋をそっと差し出した。

「これ……律に渡したかったの。
 おそろいのシャーペン」

律は袋を受け取り、ゆっくり開けた。
中には、シンプルだけど綺麗な色のシャーペンが二本。

「……なんで俺とおそろい?」

遥は迷いなく答えた。

「律と一緒がいいから」

律は一瞬、息を飲んだ。
その言葉は、遥にとってはただの“素直な気持ち”で、
特別な意味を持たせたつもりはない。

でも律には、
胸の奥にまっすぐ刺さる言葉だった。

「……大事にする」

律は小さくつぶやき、
シャーペンをそっと握った。

遥はほっと笑う。

「よかった。瀬尾くんに選んでもらったかいがあった」

「……そこは言わなくていい」

律は照れたように顔をそむけた。

でもその横顔は、
昨日までの険しさが嘘みたいに柔らかかった。

作者メッセージ

勘違い...

2026/07/12 20:27

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