翌朝。
遥はいつもより早く学校に着いた。
律にちゃんと話すため──というより、
「律がまた逃げる前に捕まえよう」という、
天然だけど妙に的確な作戦だった。
教室の前で待っていると、
律が廊下の角から姿を見せた。
「……遥?」
律は驚いたように立ち止まる。
逃げようと一歩下がった瞬間、
遥がすばやく腕をつかんだ。
「逃げないで。今日は話すの」
律は観念したようにため息をついた。
「……昨日は悪かった」
その声は小さくて、でもちゃんと届いた。
遥はぱっと顔を上げる。
「怒ってたの?」
「怒ってたっていうか……その……」
律は言葉を探すように視線を泳がせる。
「瀬尾と……楽しそうだったから」
遥はぽかんとした。
「え? 瀬尾くんと? 文房具屋のこと?」
律は少しだけ眉をひそめる。
「……他に何があるんだよ」
「だってあれ、律に渡すシャーペン選んでただけだよ?」
律の目が一瞬、大きく開いた。
「……は?」
「瀬尾くん、色のセンスいいから相談しただけで……
瀬尾くんに渡すわけないじゃん。
瀬尾くん、絶対すぐ無くすし」
律は思わず吹き出しそうになった。
「……お前、ほんと……」
「え? なに?」
「いや……なんでもない」
律は顔をそむけたけど、
耳まで赤くなっているのが丸見えだった。
遥は小さな紙袋をそっと差し出した。
「これ……律に渡したかったの。
おそろいのシャーペン」
律は袋を受け取り、ゆっくり開けた。
中には、シンプルだけど綺麗な色のシャーペンが二本。
「……なんで俺とおそろい?」
遥は迷いなく答えた。
「律と一緒がいいから」
律は一瞬、息を飲んだ。
その言葉は、遥にとってはただの“素直な気持ち”で、
特別な意味を持たせたつもりはない。
でも律には、
胸の奥にまっすぐ刺さる言葉だった。
「……大事にする」
律は小さくつぶやき、
シャーペンをそっと握った。
遥はほっと笑う。
「よかった。瀬尾くんに選んでもらったかいがあった」
「……そこは言わなくていい」
律は照れたように顔をそむけた。
でもその横顔は、
昨日までの険しさが嘘みたいに柔らかかった。
遥はいつもより早く学校に着いた。
律にちゃんと話すため──というより、
「律がまた逃げる前に捕まえよう」という、
天然だけど妙に的確な作戦だった。
教室の前で待っていると、
律が廊下の角から姿を見せた。
「……遥?」
律は驚いたように立ち止まる。
逃げようと一歩下がった瞬間、
遥がすばやく腕をつかんだ。
「逃げないで。今日は話すの」
律は観念したようにため息をついた。
「……昨日は悪かった」
その声は小さくて、でもちゃんと届いた。
遥はぱっと顔を上げる。
「怒ってたの?」
「怒ってたっていうか……その……」
律は言葉を探すように視線を泳がせる。
「瀬尾と……楽しそうだったから」
遥はぽかんとした。
「え? 瀬尾くんと? 文房具屋のこと?」
律は少しだけ眉をひそめる。
「……他に何があるんだよ」
「だってあれ、律に渡すシャーペン選んでただけだよ?」
律の目が一瞬、大きく開いた。
「……は?」
「瀬尾くん、色のセンスいいから相談しただけで……
瀬尾くんに渡すわけないじゃん。
瀬尾くん、絶対すぐ無くすし」
律は思わず吹き出しそうになった。
「……お前、ほんと……」
「え? なに?」
「いや……なんでもない」
律は顔をそむけたけど、
耳まで赤くなっているのが丸見えだった。
遥は小さな紙袋をそっと差し出した。
「これ……律に渡したかったの。
おそろいのシャーペン」
律は袋を受け取り、ゆっくり開けた。
中には、シンプルだけど綺麗な色のシャーペンが二本。
「……なんで俺とおそろい?」
遥は迷いなく答えた。
「律と一緒がいいから」
律は一瞬、息を飲んだ。
その言葉は、遥にとってはただの“素直な気持ち”で、
特別な意味を持たせたつもりはない。
でも律には、
胸の奥にまっすぐ刺さる言葉だった。
「……大事にする」
律は小さくつぶやき、
シャーペンをそっと握った。
遥はほっと笑う。
「よかった。瀬尾くんに選んでもらったかいがあった」
「……そこは言わなくていい」
律は照れたように顔をそむけた。
でもその横顔は、
昨日までの険しさが嘘みたいに柔らかかった。