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君の好きは、どの好き?

#37

37

翌朝。
教室に入った瞬間、遥は律の姿を探した。
昨日の避けられ方が胸に残ったまま、眠れなかった夜の余韻がまだ体に残っている。

律はもう席にいた。
けれど──やっぱり、遥のほうを見ない。

今日こそ話さなきゃ。
逃げられてばかりじゃ、何も変わらない。

チャイムが鳴り、授業が始まり、終わり、
休み時間になっても律は席を立たない。
まるで“動かないことで避けている”みたいに。

遥は意を決して立ち上がった。

「律、ちょっと……話したい」

律の肩がわずかに揺れた。
でも顔は上げない。

「……今、無理」

その言い方が、遥の胸に刺さった。

「なんで? 最近ずっと避けてるよね」

律は黙ったまま、教科書を閉じる。
その音がやけに大きく響いた。

「避けてない」

「避けてるよ。目も合わせてくれないし、話しかけても逃げるし……」

声が震える。
昨日からずっと我慢していたものが、堰を切ったようにあふれそうになる。

律は立ち上がり、遥の横を通り過ぎようとした。

「……瀬尾と、楽しそうだったじゃん」

その一言で、遥の足が止まった。

「え……?」

律は顔をそむけたまま続ける。

「この前、二人で出かけてたの、見た。
 ……仲良さそうに笑ってた」

遥は一瞬、何を言われているのかわからなかった。
でもすぐに思い当たる。

──あの日。
瀬尾と文房具屋に行った日。

「ち、違うよ……! あれは──」

「別にいい。俺には関係ないし」

その言い方が、遥の胸を強く締めつけた。

「関係あるよ……! 律がそんなふうに言うから……っ」

涙がにじむ。
律も苦しそうに眉を寄せた。

「……もういいだろ」

「よくない!」

声が教室に響いた。
周りの視線が集まる。
でも遥にはもう、そんな余裕はなかった。

「律が避ける理由も言わないで、勝手に決めつけて……
 そんなの、ひどいよ……!」

律は言葉を失ったように黙り込む。
遥の手には、小さな紙袋。
ぎゅっと握りしめたまま、震えていた。

「……もう知らない」

遥はそれだけ言って、教室を飛び出した。

律は追いかけようと一歩踏み出したが、
足が止まった。

自分の胸の奥が、痛いほど苦しかった。

作者メッセージ

せつないねぇ

2026/06/19 17:50

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