遥と瀬尾は雑貨屋を出て、モールの中央にあるカフェへと向かっていった。
律は買い出しの荷物を抱えたまま、気付けば吸い寄せられるように、ふたりの後ろを遠くからついて行ってしまっていた。
カフェのテラス席に座ったふたり。瀬尾が遥のために冷たいドリンクを運んできて、遥のストローの袋を優しく剥いて手渡している。遥は嬉しそうに、ペコリと頭を下げてそれを受け取った。
その光景は、どこからどう見ても、お似合いの「恋人同士」のデートだった。
「(邪魔、しなきゃ……。またあの男に、変なことされるかもしれないだろ……っ)」
律は拳を強く握りしめ、テラス席へと歩みを進めようとした。
しかし、遥の横顔がパッと輝き、心からの満開の笑顔を瀬尾に向けた瞬間、律の手の力が、すうっと抜けた。
いじめられていた時、あんなに暗い顔をしていた遥が、今は心底楽しそうに笑っている。
その笑顔を引き出しているのは、自分ではなく、瀬尾だった。
「……あいつが、楽しそうなら、それでいいじゃねえか」
律の口から、掠れた、今にも消えそうな声が漏れた。
いつもは「俺の指定席だ」と言い張っていたはずなのに。本当に遥を失うかもしれないという恐怖に直面した時、律が選んだのは、初めて遥の幸せを願って「身を引く」という、あまりにも不器用で切ない選択だった。
律はふたりに背を向け、逃げるようにその場を歩き出した。
夕暮れの街へ続く歩道、買い出しの袋を強く抱きしめながら、律は俯いて歩く。
「……勝手に照れて、勝手にツンツンしてさ。……俺、本当にバカだ」
ぽつりと溢れた涙が、夏の熱いアスファルトに落ちて、一瞬で消えていく。
邪魔をしなかった。いや、できなかった。
ただの幼馴染という殻に閉じこもっていたツンデレな少年が、初めて「本当の恋の痛みに泣いた」夏の日の放課後。全150話の長い旅路の中で、ふたりの関係は一度、最も切ない距離へと離れていくことになる。
律は買い出しの荷物を抱えたまま、気付けば吸い寄せられるように、ふたりの後ろを遠くからついて行ってしまっていた。
カフェのテラス席に座ったふたり。瀬尾が遥のために冷たいドリンクを運んできて、遥のストローの袋を優しく剥いて手渡している。遥は嬉しそうに、ペコリと頭を下げてそれを受け取った。
その光景は、どこからどう見ても、お似合いの「恋人同士」のデートだった。
「(邪魔、しなきゃ……。またあの男に、変なことされるかもしれないだろ……っ)」
律は拳を強く握りしめ、テラス席へと歩みを進めようとした。
しかし、遥の横顔がパッと輝き、心からの満開の笑顔を瀬尾に向けた瞬間、律の手の力が、すうっと抜けた。
いじめられていた時、あんなに暗い顔をしていた遥が、今は心底楽しそうに笑っている。
その笑顔を引き出しているのは、自分ではなく、瀬尾だった。
「……あいつが、楽しそうなら、それでいいじゃねえか」
律の口から、掠れた、今にも消えそうな声が漏れた。
いつもは「俺の指定席だ」と言い張っていたはずなのに。本当に遥を失うかもしれないという恐怖に直面した時、律が選んだのは、初めて遥の幸せを願って「身を引く」という、あまりにも不器用で切ない選択だった。
律はふたりに背を向け、逃げるようにその場を歩き出した。
夕暮れの街へ続く歩道、買い出しの袋を強く抱きしめながら、律は俯いて歩く。
「……勝手に照れて、勝手にツンツンしてさ。……俺、本当にバカだ」
ぽつりと溢れた涙が、夏の熱いアスファルトに落ちて、一瞬で消えていく。
邪魔をしなかった。いや、できなかった。
ただの幼馴染という殻に閉じこもっていたツンデレな少年が、初めて「本当の恋の痛みに泣いた」夏の日の放課後。全150話の長い旅路の中で、ふたりの関係は一度、最も切ない距離へと離れていくことになる。