海の日から数日後。夏休みも中盤に差し掛かったある日の午後。
律は母親に頼まれた夕飯の買い出しのため、駅前の大きなショッピングモールへと向かっていた。
あの日の海以来、律の頭の中は遥のことで一杯だった。手を握った時の熱さ、瀬尾に向けた独占欲の塊のような自分の言葉。思い出すだけで顔が熱くなり、サッカーの自主練にも身が入らない。
(あいつ、あの後からなんとなく俺を避けてる気がするし……)
そんな悶々とした気持ちのまま、モールの2階にあるお洒落な雑貨屋の前を通りかかった時のことだ。
「あ、これ可愛い! 律の部屋のカーテンと同じ色だよ!」
「へえ、水瀬さんは椎名くんの部屋の模様まで把握してるんだね。ちょっと嫉妬しちゃうな」
聞き覚えのある、鈴の鳴るような遥の声。そして、あの低くて爽やかな瀬尾の声。
律は弾かれたように足を止め、ディスプレイの影に身を隠した。
ガラス越しに見えたのは、並んで棚の小物を眺めている遥と瀬尾の姿だった。遥は楽しそうに笑い、瀬尾はそんな遥を愛おしそうな目で見つめながら、彼女の歩幅に合わせてゆっくりと歩いている。
「っ……!」
律の心臓が、ドクンと嫌な音を立てて波打った。
いつもなら、迷わずふたりの間に割って入り、遥の腕を掴んで連れ戻していただろう。だが、この時の律の足は、まるで地面に張り付いたように一歩も動かなかった。
脳裏に、海の日に行き去り際の瀬尾が残した言葉がリフレインする。
『その気持ち、ちゃんと伝えてあげなよ? じゃないと、本当に誰かに持っていかれちゃうよ』
(俺は……あいつに何も伝えてねぇ。ただ幼馴染の特権を振りかざして、束縛してただけだ……)
楽しそうに瀬尾と笑い合う遥の姿を見て、律の胸に、初めて「自分が遥の笑顔を奪っているのではないか」という、底知れない不安と切なさが押し寄せていた。
律は母親に頼まれた夕飯の買い出しのため、駅前の大きなショッピングモールへと向かっていた。
あの日の海以来、律の頭の中は遥のことで一杯だった。手を握った時の熱さ、瀬尾に向けた独占欲の塊のような自分の言葉。思い出すだけで顔が熱くなり、サッカーの自主練にも身が入らない。
(あいつ、あの後からなんとなく俺を避けてる気がするし……)
そんな悶々とした気持ちのまま、モールの2階にあるお洒落な雑貨屋の前を通りかかった時のことだ。
「あ、これ可愛い! 律の部屋のカーテンと同じ色だよ!」
「へえ、水瀬さんは椎名くんの部屋の模様まで把握してるんだね。ちょっと嫉妬しちゃうな」
聞き覚えのある、鈴の鳴るような遥の声。そして、あの低くて爽やかな瀬尾の声。
律は弾かれたように足を止め、ディスプレイの影に身を隠した。
ガラス越しに見えたのは、並んで棚の小物を眺めている遥と瀬尾の姿だった。遥は楽しそうに笑い、瀬尾はそんな遥を愛おしそうな目で見つめながら、彼女の歩幅に合わせてゆっくりと歩いている。
「っ……!」
律の心臓が、ドクンと嫌な音を立てて波打った。
いつもなら、迷わずふたりの間に割って入り、遥の腕を掴んで連れ戻していただろう。だが、この時の律の足は、まるで地面に張り付いたように一歩も動かなかった。
脳裏に、海の日に行き去り際の瀬尾が残した言葉がリフレインする。
『その気持ち、ちゃんと伝えてあげなよ? じゃないと、本当に誰かに持っていかれちゃうよ』
(俺は……あいつに何も伝えてねぇ。ただ幼馴染の特権を振りかざして、束縛してただけだ……)
楽しそうに瀬尾と笑い合う遥の姿を見て、律の胸に、初めて「自分が遥の笑顔を奪っているのではないか」という、底知れない不安と切なさが押し寄せていた。