ドン、ドン、と旧校舎の廊下に激しい足音が響き渡る。
律は狂ったように遥を探していた。下駄箱に残された遥の靴、誰もいない教室、そして、すれ違った生徒が漏らした「結衣たちが旧校舎の方へ向かった」という些細な噂。
胸のざわつきが止まらない。嫌な予感しか中を占めていなかった。
古びた物置部屋の前に辿り着いた時、律の足がピタリと止まった。
ドアの前に、粉々に砕け散った遥のスマートフォンの破片が散らばっていたからだ。
「……遥!? 遥、そこにいるのか!」
律は激しくドアノブを回すが、頑丈な南京錠がかけられていて開かない。
「……う、うう……りつ……?」
中から、消え入りそうな、泣きじゃくる遥の声が聞こえた。
「遥! 下がってろ!」
律は周囲を見回し、近くにあった古びた鉄製の消火器を両手で抱え上げた。
「っらぁ!!」
凄まじい衝撃音とともに、消火器を南京錠へ叩きつける。一度、二度、三度。火花が散り、ついに錆びついた金具が悲鳴を上げて弾け飛んだ。
勢いよく扉を開けると、カビ臭い暗闇の床で、小さくうずくまって震えている遥の姿があった。
髪はベタベタに汚れ、制服は埃まみれ。いつも輝いていたはずの瞳は涙でボロボロになり、怯えたように肩を揺らしている。
「遥……っ!」
律はカバンを放り出し、床に膝をつくと、迷わず遥の細い体を両腕で強く、強く抱きしめた。
「ごめん……ごめん、遥。俺が、もっと早く気づいてやれれば……!」
律の腕の中に、遥の冷え切った体温が伝わってくる。
「りつ……ごめ、んね……。わたし、またドジしちゃって、スマホ落として、みんなに迷惑かけて……」
遥はここに至ってもなお、引きつった笑顔で「天然な嘘」をつこうとした。
「もういい……! もういいから喋るな!」
律は遥の頭を自分の胸に強く押し当てた。
「ドジなわけねぇだろ……! 全部知ってる、お前が誰にかばわれて、誰にこんな目に遭わされてたか、全部わかったから……! だからもう、嘘つかなくていいんだよ……っ」
律の胸の鼓動と、彼の目から溢れた熱い涙が遥の頬に触れた。
そのぬくもりに触れた瞬間、遥の中で張り詰めていた最後の糸が、プツリと切れた。
「……う、うわあああん! 怖かった……っ、怖かったよ、律……! フルートも、みんなも、私の居場所、なくなっちゃったの……っ!」
遥は律の制服の胸ぐらをきゅっと掴み、子供のように声を上げて大泣きした。律は何も言わず、ただ遥の背中を何度も、何度も優しくさすり続けた。その瞳の奥には、結衣たちに対する、地獄のような冷たい怒りの炎が灯っていた。
律は狂ったように遥を探していた。下駄箱に残された遥の靴、誰もいない教室、そして、すれ違った生徒が漏らした「結衣たちが旧校舎の方へ向かった」という些細な噂。
胸のざわつきが止まらない。嫌な予感しか中を占めていなかった。
古びた物置部屋の前に辿り着いた時、律の足がピタリと止まった。
ドアの前に、粉々に砕け散った遥のスマートフォンの破片が散らばっていたからだ。
「……遥!? 遥、そこにいるのか!」
律は激しくドアノブを回すが、頑丈な南京錠がかけられていて開かない。
「……う、うう……りつ……?」
中から、消え入りそうな、泣きじゃくる遥の声が聞こえた。
「遥! 下がってろ!」
律は周囲を見回し、近くにあった古びた鉄製の消火器を両手で抱え上げた。
「っらぁ!!」
凄まじい衝撃音とともに、消火器を南京錠へ叩きつける。一度、二度、三度。火花が散り、ついに錆びついた金具が悲鳴を上げて弾け飛んだ。
勢いよく扉を開けると、カビ臭い暗闇の床で、小さくうずくまって震えている遥の姿があった。
髪はベタベタに汚れ、制服は埃まみれ。いつも輝いていたはずの瞳は涙でボロボロになり、怯えたように肩を揺らしている。
「遥……っ!」
律はカバンを放り出し、床に膝をつくと、迷わず遥の細い体を両腕で強く、強く抱きしめた。
「ごめん……ごめん、遥。俺が、もっと早く気づいてやれれば……!」
律の腕の中に、遥の冷え切った体温が伝わってくる。
「りつ……ごめ、んね……。わたし、またドジしちゃって、スマホ落として、みんなに迷惑かけて……」
遥はここに至ってもなお、引きつった笑顔で「天然な嘘」をつこうとした。
「もういい……! もういいから喋るな!」
律は遥の頭を自分の胸に強く押し当てた。
「ドジなわけねぇだろ……! 全部知ってる、お前が誰にかばわれて、誰にこんな目に遭わされてたか、全部わかったから……! だからもう、嘘つかなくていいんだよ……っ」
律の胸の鼓動と、彼の目から溢れた熱い涙が遥の頬に触れた。
そのぬくもりに触れた瞬間、遥の中で張り詰めていた最後の糸が、プツリと切れた。
「……う、うわあああん! 怖かった……っ、怖かったよ、律……! フルートも、みんなも、私の居場所、なくなっちゃったの……っ!」
遥は律の制服の胸ぐらをきゅっと掴み、子供のように声を上げて大泣きした。律は何も言わず、ただ遥の背中を何度も、何度も優しくさすり続けた。その瞳の奥には、結衣たちに対する、地獄のような冷たい怒りの炎が灯っていた。