その日の放課後。律が先生に呼ばれて職員室へ行っている隙を、結衣は見逃さなかった。
一人で下駄箱に向かっていた遥は、背後から強引に腕を掴まれ、普段は誰も使わない旧校舎の物置部屋へと引きずり込まれた。
バタン!と重い扉が閉まり、鍵がかけられる。
「ちょっと、いい加減にしてくれる? 律くんに告げ口して守ってもらおうなんて、本当に汚い女」
結衣の目が、憎悪でドス黒く濁っていた。
「告げ口なんて、してない……! 律は、何も知らないよ……っ」
遥が声を震わせながら否定すると、結衣の取り巻きの一人が、遥のカバンを奪い取って中身を床にぶちまけた。
「じゃあこれ、何よ!?」
結衣が床に放り出したのは、遥のスマートフォンだった。画面には、これまで結衣たちにされた嫌がらせの日記や、ボロボロになった制服の、遥自身による「メモ(記録)」が映し出されていた。
遥は、いじめられている自覚を無理やり隠すために、日記に「今日もドジをして階段で転んだ。次は気をつけよう」と書き殴っていたのだ。しかし結衣には、それが「いつか先生に提出するための証拠」に見えた。
「こういうの残して、ゆいたちをハメようとしてたんだ。本当に陰険。ねえ、あんたみたいな男たらしの嘘つきは、この学校に、世界に、どこにも居場所なんてないんだよ?」
結衣は遥のスマートフォンを床に置くと、ヒールのついたローファーで、思い切りその画面を踏みつけた。
バキッ、と鈍い音がして、液晶画面が粉々に砕け散る。
「あ……」
「明日から、もうそのキモい顔、ゆいたちに見せないでね」
結衣たちは壊れたスマホをそのままに、遥を暗い物置部屋に閉じ込めたまま立ち去った。
光の届かない物置の床で、遥は完全に崩れ落ちた。
宝物だったフルートに続き、誰とも繋がれないように連絡手段まで壊され、さらに「お前の居場所はない」という言葉が、遥の心を完全にへし折った。
「う、うああん……っ! ひっく、ううう……!」
誰の耳にも届かない暗闇の中で、遥は初めて、声を上げて大泣きした。
いつも自分を支えていた「超天然な笑顔」の仮面は完全に剥がれ落ち、ただの傷ついた17歳の少女として、冷たい床で震えることしかできなかった。
しかし、この物置部屋のすぐ外まで、一人の少年の足音が、静かに、そして凄まじい怒りを孕んで近づいてきていることに、遥はまだ気づいていなかった。
一人で下駄箱に向かっていた遥は、背後から強引に腕を掴まれ、普段は誰も使わない旧校舎の物置部屋へと引きずり込まれた。
バタン!と重い扉が閉まり、鍵がかけられる。
「ちょっと、いい加減にしてくれる? 律くんに告げ口して守ってもらおうなんて、本当に汚い女」
結衣の目が、憎悪でドス黒く濁っていた。
「告げ口なんて、してない……! 律は、何も知らないよ……っ」
遥が声を震わせながら否定すると、結衣の取り巻きの一人が、遥のカバンを奪い取って中身を床にぶちまけた。
「じゃあこれ、何よ!?」
結衣が床に放り出したのは、遥のスマートフォンだった。画面には、これまで結衣たちにされた嫌がらせの日記や、ボロボロになった制服の、遥自身による「メモ(記録)」が映し出されていた。
遥は、いじめられている自覚を無理やり隠すために、日記に「今日もドジをして階段で転んだ。次は気をつけよう」と書き殴っていたのだ。しかし結衣には、それが「いつか先生に提出するための証拠」に見えた。
「こういうの残して、ゆいたちをハメようとしてたんだ。本当に陰険。ねえ、あんたみたいな男たらしの嘘つきは、この学校に、世界に、どこにも居場所なんてないんだよ?」
結衣は遥のスマートフォンを床に置くと、ヒールのついたローファーで、思い切りその画面を踏みつけた。
バキッ、と鈍い音がして、液晶画面が粉々に砕け散る。
「あ……」
「明日から、もうそのキモい顔、ゆいたちに見せないでね」
結衣たちは壊れたスマホをそのままに、遥を暗い物置部屋に閉じ込めたまま立ち去った。
光の届かない物置の床で、遥は完全に崩れ落ちた。
宝物だったフルートに続き、誰とも繋がれないように連絡手段まで壊され、さらに「お前の居場所はない」という言葉が、遥の心を完全にへし折った。
「う、うああん……っ! ひっく、ううう……!」
誰の耳にも届かない暗闇の中で、遥は初めて、声を上げて大泣きした。
いつも自分を支えていた「超天然な笑顔」の仮面は完全に剥がれ落ち、ただの傷ついた17歳の少女として、冷たい床で震えることしかできなかった。
しかし、この物置部屋のすぐ外まで、一人の少年の足音が、静かに、そして凄まじい怒りを孕んで近づいてきていることに、遥はまだ気づいていなかった。