文字サイズ変更

君の好きは、どの好き?

#16

16

それから数日後。体調が戻った遥は、律に怪しまれないよう、わざと「吹奏楽部の居残り練習がある」と嘘をついて、律を先に帰らせた。
一人で校門を出て、寂しい夕暮れの通学路を歩く。
しかし、駅へと続く近道の路地裏に入った瞬間、前方の曲がり角から複数の影が現れた。
結衣と、そのグループの女子たちだった。
「あら、遥ちゃん。今日は律くんと一緒じゃないんだねぇ?」
結衣は手に持った炭酸飲料のペットボトルを弄びながら、冷酷な笑みを浮かべた。
「結衣、ちゃん……」
遥は思わず一歩後退りするが、後ろの路地も結衣の取り巻きたちによって完全に塞がれていた。
「あんたのせいで、律くんにものすごい目で睨まれたんだけど。マジでムカつく。ねえ、ちょっと痛い目見ないと、自分の立場ってものが分からないのかなぁ?」
結衣の合図で、周りの女子たちが一斉に遥に掴みかかった。
「やめて……っ!」
遥の手首が乱暴に壁に押し付けられ、カバンが地面に叩きつけられる。中の楽譜がバラバラに散らばった。
結衣は一歩近づくと、容赦なく遥の髪を強く引っ張り上げた。
「痛っ……!」
「お前みたいな地味な天然女が、いつまでも律くんの隣にいるんじゃないわよ!」
結衣はそう叫ぶと、手に持っていた炭酸飲料のキャップを開け、遥の頭から容赦なく流し込んだ。
ベタベタとした甘い液体が、遥の髪を伝い、お気に入りの制服のブレザーを汚していく。
「あはは! 超ウケる! 炭酸人間じゃん!」
周りの女子たちが嘲笑う中、遥はただじっと歯を食いしばり、地面の楽譜を見つめていた。
(泣かない。ここで泣いたら、あの人たちの思い通りになっちゃう。私は、大丈夫……)
結衣たちは一通り遥を突き飛ばし、罵声を浴びせかけると、満足したように夜の街へと消えていった。
静まり返った路地裏で、遥はベタベタになった髪を抑えながら、ボロボロになった楽譜を一枚ずつ拾い集めた。
その目から、ついに我慢していた涙がポロポロと地面にこぼれ落ちる。
「……うぅ、ひっく……。ううん、泣いちゃダメ。……私は、ドジだから、ジュースを浴びちゃっただけ……だもん……」
薄暗い袋小路で、遥は震える声で自分に嘘をつき続けていた。真実が律に知られ、この日常が壊れてしまうことを、何よりも恐れながら。

作者メッセージ

とりあえず今はここまで

2026/05/30 14:05

コメント

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はおひめ〈活動報告名ぼしゅーちゅー!〉さんに帰属します

TOP