文字サイズ変更

君の好きは、どの好き?

#13

13

6月も終わりに近づき、体育の授業では女子のプールが始まっていた。
どんよりとした曇り空の下、冷たい水に入ったあとの女子更衣室は、独特の湿気と寒さに包まれている。
遥が授業を終えて更衣室に戻ると、自分のカバンがどこにも見当たらなかった。
「あれ……? 私、カバンの置き場所を間違えちゃったのかな……」
キョロキョロと辺りを見回す遥の後ろで、結衣たちがクスクスと意地の悪い笑い声を漏らす。
「あーあ、遥ちゃん。おっちょこちょいだから、自分の荷物も失くしちゃうんだねぇ? もしかして、あそこにあるんじゃない?」
結衣が指差したのは、更衣室の隅にある、使われていない錆びついた掃除用具入れのロッカーだった。
遥がそっとロッカーを開けると、そこには水浸しになった遥の制服とカバンが、乱暴に押し込まれていた。教科書もノートも、水を含んで無残に膨れ上がっている。
「っ……!」
さすがの遥も、言葉を失って立ち尽くした。
「ゆいたち、親切だから教えてあげたんだぉ? じゃあねー」
結衣は冷たい笑みを残し、他の女子たちと更衣室を出て行った。直後、バタンと大きな音がして、更衣室の重い扉が外から完全にロックされた。
「え……? 開かない……」
薄暗く、冷え切った更衣室に、一人きりで閉じ込められた遥。
濡れた水着のまま、ガタガタと体が震え出す。
「大丈夫……。きっと、誰かが間違えて鍵を閉めちゃっただけだよね……。律にクッキーのカード渡したから、神様がちょっと意地悪してるだけ……」
遥は冷たくなった自分の体を抱きしめ、真っ暗な部屋の片隅で、ただ静かにガタガタと震えながら時間が過ぎるのを待っていた。

2026/05/30 14:02

コメント

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はおひめ〈活動報告名ぼしゅーちゅー!〉さんに帰属します

TOP