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君の好きは、どの好き?

#12

12

翌日の朝。律は教室に入ってきた遥の姿を見て、一瞬で違和感を覚えた。
いつもなら真っ先に自分の席に走ってくる遥が、妙にぎこちない足取りで、引きずるように歩いている。
さらに、初夏だというのに、遥は長袖のカーディガンをきっちりと着込んでいた。
「おい、遥」
律は遥が席に着く前に、その腕を掴んだ。
「あ、律!おはよ――」
「っ……!」
腕を掴まれた瞬間、遥の顔が痛みに小さく歪んだ。
律の鋭い目が、遥のカーディガンの袖口からチラリと覗いた、痛々しい紫色の青あざを捉える。
「……その腕、どうした」
律の声が、低く地を這うようなトーンに変わる。
「え? あ、これ? 昨日ね、階段でちょっとダンスの練習してたら、ステップを踏み外しちゃって!私って本当にドジだよね」
遥は慌てて袖を引っ張り、いつものようにケラケラと笑ってみせた。
「嘘つけ。お前がドジなのは知ってるが、そんなあざができるわけねぇだろ。足も引きずってんじゃねえか。誰にやられた」
「誰もやってないよ!本当に、私が自分で転んだだけだもん!」
遥は真っ直ぐに律の目を見て言い張った。
超天然な遥は、結衣たちにされたことが「いじめ」だと薄々気づき始めてはいたが、それを認めたくなかった。何より、自分が原因で、大好きな幼馴染の律が怒ったり、巻き込まれて傷ついたりすることが一番怖かったのだ。
「……そうかよ」
律はそれ以上追及するのをやめ、掴んでいた手を離した。
これ以上聞いても、この頑固な天然が本当のことを言うはずがない。
律は席に戻り、拳を強く握りしめた。
(自分から転んだ? わけねぇだろ。遥が何かを隠してる……)
教室の片隅で、勝ち誇ったような顔で鏡を見ている結衣の姿が、律の視界に入る。
律の胸の中で、氷のような冷たい怒りと、遥を守れなかった焦燥感が渦巻き始めていた。真実が暴かれるまで、あと数ヶ月――いじめの嵐は、さらに激しさを増していく。

2026/05/30 14:01

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