梅雨が本格化し始めた6月の中旬。その日の放課後は、バケツをひっくり返したような大雨だった。
吹奏楽部の練習を終え、誰もいない北校舎の階段を下りていた遥の前に、結衣と2人の女子グループが立ち塞がった。
「ちょっと、遥ちゃん。お話あるんだけどぉ」
結衣はいつも通りの猫なで声だが、その目は一切笑っていない。
「あ、結衣ちゃん!どうしたの?」
いつも通り笑顔で応じる遥の腕を、結衣の取り巻きの女子が乱暴に掴み、壁に押し付けた。
「っ……痛い、なにするの?」
「とぼけないでよ。あんた、律くんに色目使って楽しい? 天然のフリして男にベタベタしてさ、本当に目障りなんだよね」
結衣はそう言うと、遥が抱えていた大切なフルートのケースを奪い取り、階段の下へと投げ落とした。
ガツン、と鈍い音がして、ケースが転がり落ちる。
「あ……っ、ダメ、それ大事な――」
遥が拾おうと足を踏み出した瞬間、結衣が遥の肩を強く突き飛ばした。
「キャッ……!」
バランスを崩した遥は、数段の階段を転げ落ち、踊り場で激しく膝と肘を床に打ち付けた。じわじわと、制服のストッキングに赤い血がにじんでいく。
「あはは、おっちょこちょいだねぇ。階段で転ぶなんて危ないよぉ?」
結衣は蔑むような笑みを浮かべ、取り巻きたちと去っていった。
一人残された遥は、痛む体を起こし、真っ先にフルートのケースを抱きしめた。
「よかった……。楽器は壊れてない……」
遥は涙をぐっと堪え、ズキズキと痛む足を引きずりながら、いつも通り「自分がドジだから転んだんだ」と自分に言い聞かせるように、静かに帰路についた。
吹奏楽部の練習を終え、誰もいない北校舎の階段を下りていた遥の前に、結衣と2人の女子グループが立ち塞がった。
「ちょっと、遥ちゃん。お話あるんだけどぉ」
結衣はいつも通りの猫なで声だが、その目は一切笑っていない。
「あ、結衣ちゃん!どうしたの?」
いつも通り笑顔で応じる遥の腕を、結衣の取り巻きの女子が乱暴に掴み、壁に押し付けた。
「っ……痛い、なにするの?」
「とぼけないでよ。あんた、律くんに色目使って楽しい? 天然のフリして男にベタベタしてさ、本当に目障りなんだよね」
結衣はそう言うと、遥が抱えていた大切なフルートのケースを奪い取り、階段の下へと投げ落とした。
ガツン、と鈍い音がして、ケースが転がり落ちる。
「あ……っ、ダメ、それ大事な――」
遥が拾おうと足を踏み出した瞬間、結衣が遥の肩を強く突き飛ばした。
「キャッ……!」
バランスを崩した遥は、数段の階段を転げ落ち、踊り場で激しく膝と肘を床に打ち付けた。じわじわと、制服のストッキングに赤い血がにじんでいく。
「あはは、おっちょこちょいだねぇ。階段で転ぶなんて危ないよぉ?」
結衣は蔑むような笑みを浮かべ、取り巻きたちと去っていった。
一人残された遥は、痛む体を起こし、真っ先にフルートのケースを抱きしめた。
「よかった……。楽器は壊れてない……」
遥は涙をぐっと堪え、ズキズキと痛む足を引きずりながら、いつも通り「自分がドジだから転んだんだ」と自分に言い聞かせるように、静かに帰路についた。