1時間目の授業が始まる直前、教室がにぎやかくなってきた。
遥の席の周りには、他クラスの女子生徒や、同じクラスの男子が集まって楽しそうに話している。遥のその底抜けの明るさと天然な愛嬌は、学年でも密かに人気があった。
「なぁ水瀬、今週末の土曜って暇? みんなでカラオケ行かない?」
同じクラスの男子生徒が、遥に声をかけているのが聞こえた。
サッカー部の朝練の疲れを癒やすフリをして、机に顔を伏せていた律の耳が、ピクリと動く。
「あ、カラオケ? 行きたい!」
遥は嬉しそうに声を弾ませた。
「マジで? じゃあ、土曜の昼に駅前集合な!」
「うん! ……あ、でも待って」
遥は何かを思い出したように、くるりと後ろを振り返った。ベースの机に突っ伏している律の背中を、ツンツンと人差し指で突ついた。
「律、今週の土曜日って、サッカー部休みだっけ?」
「……あ? オフだけど。それがどうした」
律は顔だけを横に向けて、気だるげに答える。
「よかった! じゃあ、律も一緒にカラオケ行こうよ!」
「は? なんで俺が……」
「だって、土曜日は律と一緒に、溜まってる録画のアニメ見る約束してたでしょ? 律がカラオケ来てくれたら、そのあと一緒にうちでアニメ見られるもん!」
遥は何の悪気もなく、クラスメイトたちの前で「土曜日は律と過ごす予定だった」という事実を暴露した。
周りの男子たちが「えっ、お前ら土曜に家で行き来してんの……?」と、驚いたような、羨むような視線を律に一斉に向ける。
「っ、おい! 遥、お前そういう紛らわしい言い方すんな!」
律はガタッと椅子を鳴らして立ち上がった。顔がまた赤くなる。
「ええ? 嘘じゃないよ? 律、行かないの?」
遥は寂しそうに、きゅるんとした瞳で律を見上げてくる。そんな顔をされたら、断れるはずがなかった。
「……チッ、行くよ。お前が迷子になったら面倒だしな」
「わーい! 決まりね!」
遥は満足そうに微笑み、クラスメイトたちに「律も行くって!」と伝えている。
律は乱暴に頭を掻きながら、再び席に座り直した。
周りの男子からの視線は痛いが、胸の奥では「遥の予定を自分が一番に占有していた」という事実に、ほんの少しだけ優越感を抱いてしまう律だった。
遥の席の周りには、他クラスの女子生徒や、同じクラスの男子が集まって楽しそうに話している。遥のその底抜けの明るさと天然な愛嬌は、学年でも密かに人気があった。
「なぁ水瀬、今週末の土曜って暇? みんなでカラオケ行かない?」
同じクラスの男子生徒が、遥に声をかけているのが聞こえた。
サッカー部の朝練の疲れを癒やすフリをして、机に顔を伏せていた律の耳が、ピクリと動く。
「あ、カラオケ? 行きたい!」
遥は嬉しそうに声を弾ませた。
「マジで? じゃあ、土曜の昼に駅前集合な!」
「うん! ……あ、でも待って」
遥は何かを思い出したように、くるりと後ろを振り返った。ベースの机に突っ伏している律の背中を、ツンツンと人差し指で突ついた。
「律、今週の土曜日って、サッカー部休みだっけ?」
「……あ? オフだけど。それがどうした」
律は顔だけを横に向けて、気だるげに答える。
「よかった! じゃあ、律も一緒にカラオケ行こうよ!」
「は? なんで俺が……」
「だって、土曜日は律と一緒に、溜まってる録画のアニメ見る約束してたでしょ? 律がカラオケ来てくれたら、そのあと一緒にうちでアニメ見られるもん!」
遥は何の悪気もなく、クラスメイトたちの前で「土曜日は律と過ごす予定だった」という事実を暴露した。
周りの男子たちが「えっ、お前ら土曜に家で行き来してんの……?」と、驚いたような、羨むような視線を律に一斉に向ける。
「っ、おい! 遥、お前そういう紛らわしい言い方すんな!」
律はガタッと椅子を鳴らして立ち上がった。顔がまた赤くなる。
「ええ? 嘘じゃないよ? 律、行かないの?」
遥は寂しそうに、きゅるんとした瞳で律を見上げてくる。そんな顔をされたら、断れるはずがなかった。
「……チッ、行くよ。お前が迷子になったら面倒だしな」
「わーい! 決まりね!」
遥は満足そうに微笑み、クラスメイトたちに「律も行くって!」と伝えている。
律は乱暴に頭を掻きながら、再び席に座り直した。
周りの男子からの視線は痛いが、胸の奥では「遥の予定を自分が一番に占有していた」という事実に、ほんの少しだけ優越感を抱いてしまう律だった。