文字サイズ変更

君の好きは、どの好き?

#8

1時間目の授業が始まる直前、教室がにぎやかくなってきた。
遥の席の周りには、他クラスの女子生徒や、同じクラスの男子が集まって楽しそうに話している。遥のその底抜けの明るさと天然な愛嬌は、学年でも密かに人気があった。
「なぁ水瀬、今週末の土曜って暇? みんなでカラオケ行かない?」
同じクラスの男子生徒が、遥に声をかけているのが聞こえた。
サッカー部の朝練の疲れを癒やすフリをして、机に顔を伏せていた律の耳が、ピクリと動く。
「あ、カラオケ? 行きたい!」
遥は嬉しそうに声を弾ませた。
「マジで? じゃあ、土曜の昼に駅前集合な!」
「うん! ……あ、でも待って」
遥は何かを思い出したように、くるりと後ろを振り返った。ベースの机に突っ伏している律の背中を、ツンツンと人差し指で突ついた。
「律、今週の土曜日って、サッカー部休みだっけ?」
「……あ? オフだけど。それがどうした」
律は顔だけを横に向けて、気だるげに答える。
「よかった! じゃあ、律も一緒にカラオケ行こうよ!」
「は? なんで俺が……」
「だって、土曜日は律と一緒に、溜まってる録画のアニメ見る約束してたでしょ? 律がカラオケ来てくれたら、そのあと一緒にうちでアニメ見られるもん!」
遥は何の悪気もなく、クラスメイトたちの前で「土曜日は律と過ごす予定だった」という事実を暴露した。
周りの男子たちが「えっ、お前ら土曜に家で行き来してんの……?」と、驚いたような、羨むような視線を律に一斉に向ける。
「っ、おい! 遥、お前そういう紛らわしい言い方すんな!」
律はガタッと椅子を鳴らして立ち上がった。顔がまた赤くなる。
「ええ? 嘘じゃないよ? 律、行かないの?」
遥は寂しそうに、きゅるんとした瞳で律を見上げてくる。そんな顔をされたら、断れるはずがなかった。
「……チッ、行くよ。お前が迷子になったら面倒だしな」
「わーい! 決まりね!」
遥は満足そうに微笑み、クラスメイトたちに「律も行くって!」と伝えている。
律は乱暴に頭を掻きながら、再び席に座り直した。
周りの男子からの視線は痛いが、胸の奥では「遥の予定を自分が一番に占有していた」という事実に、ほんの少しだけ優越感を抱いてしまう律だった。

2026/05/30 13:56

コメント

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はおひめ〈活動報告名ぼしゅーちゅー!〉さんに帰属します

TOP