「ねぇ」
顔を背ける。
「愛してる」
目を合わせられない。
「貴方の横顔が好き。運動してる時の輝いてる貴方が好き。独りで席に座って本を読んでる貴方も好き」
手汗を握る。
「黄昏てる貴方が好き。……泣いてる貴方も。悲しくて、1人陰で泣いてる姿も。ずーっと、ずーっと見てた。ずーっと好きだった」
それは慰めて欲しかったかもしれない。
「でも」
目を閉じる。雛形の指らしき物が俺の胸の中心辺りに触れる。
「他の女の子と楽しそうに話してる晴翔はキラーイ……」
まるで俺を真っ二つに割るかのように、胸からヘソを雛形がなぞる。
……俺は、やはり外見しか見ていなかったのだろうか。雛形莉乃という人物と、何年も関わっておきながら。一年疎遠になったぐらいで、好きになってしまう男など。コイツにふさわしくないんじゃないか。
「ねぇねぇ」
冷静な思考回路は、そこで途切れ。心臓が高鳴る。
「晴翔は私の事好き?」
この感情は恋なんかじゃない。そうだろう。そうじゃなきゃ、何故彼女の方を向けないんだ。
「好きだよね? ねぇ、答えてよ」
目を瞑って下を向いたままの俺は、雛形に突き飛ばされる。後ろは壁。いや、だからこそ彼女は突き飛ばしたのか。分からないが、俺は壁を背にして座り込むことしかできなかった。
「好きって、言ってよ……!」
膝に乗る感触。重い。人の体が乗っているとしか思えない俺の膝は、既に悲鳴をあげている。一部分に体重が掛かっている。
目を開ける。
「……やっと目ー開けた」
目の前には雛形の顔があった。キスでもするかのような距離感。
____そして、雛形はそのまま俺の唇に自らの唇を重ねた。強引だった、俺の頭を掴んで離さない。
力は俺よりも弱い……はず。
だが、なんだろうか。女子の魔力とでも言おうか。俺は、痺れたように動くことが出来なかった。そして、何故か目も閉じる事はできなかった。
唇を重ねて、いくらの時間が経っただろうか。唇を重ね続けて、もう何年も経ったかのような感覚が体にある。しかし、既に痺れはない。
思考も既に回っていた。俺が相当なクズだという事も、今やっと理解することが出来た。
俺が彼女の何に怯えているのか。自分でも分からない。だが……今の彼女は、怖い。
雛形が不意に唇を離し、口を開く。
「……私がどれだけ晴翔を好きか、分かったでしょ?」
「…………」
「だからさ……好きって、言って」
顔を真っ赤にして、顔を背ける彼女は先ほどまでとは全く印象が違った。とても可愛らしく、初心な女の子のように見える。……見える。見えるはずだ。見えるはずなんだ……。
見えるはずなのに、見えない。彼女の底が。彼女自身が。
莉乃は、唇を噛み、目線だけはこちらに向けながら俺の答えを待つ。
俺は。
「……ごめ」
……逃げた。
この、心の底から湧き上がってくる恐怖心と。
どうしようもなく溢れてくる、罪悪感から逃げたくて。
♦︎
……え?
なんで? なんで……???
その返答が否定であることに気づいたのは、沢山時間が経った後の話。晴翔はもう目の前には居なかった。
彼は依存したのではないのか、私に。私はとっくに依存など済ませてしまっているが、彼も私と同じように、相手に興味を深く持ってくれたのではないのか。
「ぅぅ……晴翔……はるとぉ!!」
枕に顔を押し付けながら声を出す。
あまつさえ、涙も出てきてしまった。
自分がおかしいことは分かってる。分かってるけど……。分かってるけど、分かってるけど!!!!
「好きっ……」
一声。
「好きぃっ……!」
二声。
「はぁ……ぁぁっ……!!!
好き……! 好き好き好き好き好き好きっ、好きぃっ、好き!!!!!」
どれだけ願っても、叫んでも。届かぬ愛は部屋にしか轟かない。
枕を叩けども、返ってくるのは羽毛の小さな反発のみなのである。
顔を背ける。
「愛してる」
目を合わせられない。
「貴方の横顔が好き。運動してる時の輝いてる貴方が好き。独りで席に座って本を読んでる貴方も好き」
手汗を握る。
「黄昏てる貴方が好き。……泣いてる貴方も。悲しくて、1人陰で泣いてる姿も。ずーっと、ずーっと見てた。ずーっと好きだった」
それは慰めて欲しかったかもしれない。
「でも」
目を閉じる。雛形の指らしき物が俺の胸の中心辺りに触れる。
「他の女の子と楽しそうに話してる晴翔はキラーイ……」
まるで俺を真っ二つに割るかのように、胸からヘソを雛形がなぞる。
……俺は、やはり外見しか見ていなかったのだろうか。雛形莉乃という人物と、何年も関わっておきながら。一年疎遠になったぐらいで、好きになってしまう男など。コイツにふさわしくないんじゃないか。
「ねぇねぇ」
冷静な思考回路は、そこで途切れ。心臓が高鳴る。
「晴翔は私の事好き?」
この感情は恋なんかじゃない。そうだろう。そうじゃなきゃ、何故彼女の方を向けないんだ。
「好きだよね? ねぇ、答えてよ」
目を瞑って下を向いたままの俺は、雛形に突き飛ばされる。後ろは壁。いや、だからこそ彼女は突き飛ばしたのか。分からないが、俺は壁を背にして座り込むことしかできなかった。
「好きって、言ってよ……!」
膝に乗る感触。重い。人の体が乗っているとしか思えない俺の膝は、既に悲鳴をあげている。一部分に体重が掛かっている。
目を開ける。
「……やっと目ー開けた」
目の前には雛形の顔があった。キスでもするかのような距離感。
____そして、雛形はそのまま俺の唇に自らの唇を重ねた。強引だった、俺の頭を掴んで離さない。
力は俺よりも弱い……はず。
だが、なんだろうか。女子の魔力とでも言おうか。俺は、痺れたように動くことが出来なかった。そして、何故か目も閉じる事はできなかった。
唇を重ねて、いくらの時間が経っただろうか。唇を重ね続けて、もう何年も経ったかのような感覚が体にある。しかし、既に痺れはない。
思考も既に回っていた。俺が相当なクズだという事も、今やっと理解することが出来た。
俺が彼女の何に怯えているのか。自分でも分からない。だが……今の彼女は、怖い。
雛形が不意に唇を離し、口を開く。
「……私がどれだけ晴翔を好きか、分かったでしょ?」
「…………」
「だからさ……好きって、言って」
顔を真っ赤にして、顔を背ける彼女は先ほどまでとは全く印象が違った。とても可愛らしく、初心な女の子のように見える。……見える。見えるはずだ。見えるはずなんだ……。
見えるはずなのに、見えない。彼女の底が。彼女自身が。
莉乃は、唇を噛み、目線だけはこちらに向けながら俺の答えを待つ。
俺は。
「……ごめ」
……逃げた。
この、心の底から湧き上がってくる恐怖心と。
どうしようもなく溢れてくる、罪悪感から逃げたくて。
♦︎
……え?
なんで? なんで……???
その返答が否定であることに気づいたのは、沢山時間が経った後の話。晴翔はもう目の前には居なかった。
彼は依存したのではないのか、私に。私はとっくに依存など済ませてしまっているが、彼も私と同じように、相手に興味を深く持ってくれたのではないのか。
「ぅぅ……晴翔……はるとぉ!!」
枕に顔を押し付けながら声を出す。
あまつさえ、涙も出てきてしまった。
自分がおかしいことは分かってる。分かってるけど……。分かってるけど、分かってるけど!!!!
「好きっ……」
一声。
「好きぃっ……!」
二声。
「はぁ……ぁぁっ……!!!
好き……! 好き好き好き好き好き好きっ、好きぃっ、好き!!!!!」
どれだけ願っても、叫んでも。届かぬ愛は部屋にしか轟かない。
枕を叩けども、返ってくるのは羽毛の小さな反発のみなのである。