壁一面、どこもかしこも俺がその部屋に存在している。
どこを見回しても、俺。俺。俺……。写真が貼り付けられていたり、机には俺と雛形のツーショット写真が拡大されたものが貼り付けられていた。画質荒すぎ……って、いや……は?
「ぅぇ……ぁ? ぇ"ぇ"っ……?」
極度の緊張状態や、突然のハプニングが起こると人間は何も語れなくなる、と聞いたことがあるが。まさに俺が体験しているのがその感覚だ。
最初に抱いたのは……恐怖。
あれ……と、いうか。
俺は、最近の雛形の何を知っているというんだ?
そもそも、一年前もこの部屋に入らせてもらった覚えはない。雛形の部屋に、俺自身も興味は無かったからこそ入ろうとしなかった。
……俺の中の危険信号が限界まで振り切れる。
尋常じゃない。
こんなもの、俺の後ろをついて回らなければ手に入らない写真ばかりじゃないか。
俺がやっている、ストーカー紛いの事をしなければ、絶対に手に入れられないモノ。……俺が、やっている。その行為をしなければ、絶対に手に入らないもの。
部屋の写真の中には、友達と駄弁りながら帰っている俺。ラノベを買い漁っている俺。野鳥を追いかけて遊んでいる俺。捨て猫を撫でている俺。
そして、真っ二つに破かれている俺と元俺のクラスの委員長が手を繋いでいる写真。
……これ、確か文化祭でやったんだよ、どこから見てたんだ。関わり持ってなかった最近の事じゃねぇか……!?
なんだか、眩暈がした。情報量が余りにも多すぎたのである。
そして、この部屋に立っていられなくなった俺は、閉めたドアを開けて廊下に出ようとする。
____ドアを開けたその先。
「……晴翔?」
心臓が飛び出るかと思った。雛形がそこに、本当に驚いたような顔で立っていた。
………しかし、彼女は直ぐに正気を取り戻したようで、ニコ。と笑みを作る。
俺は、何も声を出すことが出来ずに、首を曲げる雛形から視線を逸らす。本当にびっくりした時、声が出なくなるのは本当のようだ。
「ねぇ、何してたの?」
答えられない。
「ねぇ」
口は開かない。
「ねぇー?」
喉も閉じたまま。こんな状態で歌を歌ったら、きっと笑われてしまうだろう。
「…………」
不意に雛形も口を閉じた。
そして、雛形は俺の耳元に手を当てがい、唇を近づけてくる。
「……見ちゃったよねぇ」
……見ちゃった。なんて、あたりまえのように笑えたらどれだけ良かっただろう。
笑えない。
笑うことなんて出来ない。
「恥ずかしくって言えなかったけどさ……」
「…………」
「これだけ。晴翔を付け回しちゃうほど、私って晴翔の事が好きなんだよね」
「………………」
「好き。貴方の事が好き。ずっと好き。気づいてくれない貴方も好き……」
「ぉ、ぁ…………?」
「貴方が欲しい。ずっと欲しかった。自分の物にしたかった。でも、手に入らなかった。貴方が離れていくのが怖かったから」
沈黙すら、俺にとっては痛かった。
いや、待て。そもそも、莉乃ってこんなに喋る奴だっただろうか?
学校では、椅子に腰掛けて優美に紅茶を飲んでいるんだろう、って予想されるぐらいには、人と関わっていなかったように思う。
そして、俺の脳の中はやはりこんがらがったまま。彼女の言葉を受け止めきれずにいる。
深呼吸。
「……っと。す、スマン、何言ってるかわかんねぇや、ハハ」
「……ふーん」
「……一回、落ち着かせてくんね」
その言葉を聞いた雛形は、うんうんと頷いた。
「ダーメ」
嗜虐的な様。表情が雛形の顔に浮かんだ。口角は上がり、目元はニコニコとそり曲がっている。
その顔に、俺の恐怖心はさらに増大する。殺人現場を見ているという訳では無いというのに。やっぱり違う。俺の知ってる莉乃じゃない。
どこを見回しても、俺。俺。俺……。写真が貼り付けられていたり、机には俺と雛形のツーショット写真が拡大されたものが貼り付けられていた。画質荒すぎ……って、いや……は?
「ぅぇ……ぁ? ぇ"ぇ"っ……?」
極度の緊張状態や、突然のハプニングが起こると人間は何も語れなくなる、と聞いたことがあるが。まさに俺が体験しているのがその感覚だ。
最初に抱いたのは……恐怖。
あれ……と、いうか。
俺は、最近の雛形の何を知っているというんだ?
そもそも、一年前もこの部屋に入らせてもらった覚えはない。雛形の部屋に、俺自身も興味は無かったからこそ入ろうとしなかった。
……俺の中の危険信号が限界まで振り切れる。
尋常じゃない。
こんなもの、俺の後ろをついて回らなければ手に入らない写真ばかりじゃないか。
俺がやっている、ストーカー紛いの事をしなければ、絶対に手に入れられないモノ。……俺が、やっている。その行為をしなければ、絶対に手に入らないもの。
部屋の写真の中には、友達と駄弁りながら帰っている俺。ラノベを買い漁っている俺。野鳥を追いかけて遊んでいる俺。捨て猫を撫でている俺。
そして、真っ二つに破かれている俺と元俺のクラスの委員長が手を繋いでいる写真。
……これ、確か文化祭でやったんだよ、どこから見てたんだ。関わり持ってなかった最近の事じゃねぇか……!?
なんだか、眩暈がした。情報量が余りにも多すぎたのである。
そして、この部屋に立っていられなくなった俺は、閉めたドアを開けて廊下に出ようとする。
____ドアを開けたその先。
「……晴翔?」
心臓が飛び出るかと思った。雛形がそこに、本当に驚いたような顔で立っていた。
………しかし、彼女は直ぐに正気を取り戻したようで、ニコ。と笑みを作る。
俺は、何も声を出すことが出来ずに、首を曲げる雛形から視線を逸らす。本当にびっくりした時、声が出なくなるのは本当のようだ。
「ねぇ、何してたの?」
答えられない。
「ねぇ」
口は開かない。
「ねぇー?」
喉も閉じたまま。こんな状態で歌を歌ったら、きっと笑われてしまうだろう。
「…………」
不意に雛形も口を閉じた。
そして、雛形は俺の耳元に手を当てがい、唇を近づけてくる。
「……見ちゃったよねぇ」
……見ちゃった。なんて、あたりまえのように笑えたらどれだけ良かっただろう。
笑えない。
笑うことなんて出来ない。
「恥ずかしくって言えなかったけどさ……」
「…………」
「これだけ。晴翔を付け回しちゃうほど、私って晴翔の事が好きなんだよね」
「………………」
「好き。貴方の事が好き。ずっと好き。気づいてくれない貴方も好き……」
「ぉ、ぁ…………?」
「貴方が欲しい。ずっと欲しかった。自分の物にしたかった。でも、手に入らなかった。貴方が離れていくのが怖かったから」
沈黙すら、俺にとっては痛かった。
いや、待て。そもそも、莉乃ってこんなに喋る奴だっただろうか?
学校では、椅子に腰掛けて優美に紅茶を飲んでいるんだろう、って予想されるぐらいには、人と関わっていなかったように思う。
そして、俺の脳の中はやはりこんがらがったまま。彼女の言葉を受け止めきれずにいる。
深呼吸。
「……っと。す、スマン、何言ってるかわかんねぇや、ハハ」
「……ふーん」
「……一回、落ち着かせてくんね」
その言葉を聞いた雛形は、うんうんと頷いた。
「ダーメ」
嗜虐的な様。表情が雛形の顔に浮かんだ。口角は上がり、目元はニコニコとそり曲がっている。
その顔に、俺の恐怖心はさらに増大する。殺人現場を見ているという訳では無いというのに。やっぱり違う。俺の知ってる莉乃じゃない。