コンプレックス・ツインズ
#1
似て非なる双子
歩高side
俺、[漢字]峯本[/漢字][ふりがな]みねもと[/ふりがな][漢字]歩高[/漢字][ふりがな]ほだか[/ふりがな]には、双子の兄がいる。
兄の名前は、峯本[漢字]優進[/漢字][ふりがな]ゆうしん[/ふりがな]。
一卵性の双子だから、顔は瓜二つ。でも性格はまるで違う。
幼い頃は仲が良かった。
行動は常に一緒で、弟の俺はいつ何時だって優進の真似をしていた。優進が滑り台で遊べば俺もそれに続いたし、優進が夕飯でピーマンを残せば、俺も全く同じように残した。
優進は何かと俺を気にかけてくれた。「ほだかぁぁ〜」と口を大きく開けて無垢な笑みを浮かべる幼少期の兄の顔は、今でも記憶に新しい。
でもそんな優進が、昔みたく無邪気に俺を呼ぶことなんてもうない。
[中央寄せ]= ・ = ・ = ❖ = ・ = ・ =[/中央寄せ]
「なあ、おい」
廊下から教室の開いた窓に顔を出したのは、よく見慣れた茶髪の男子。でも顔は俺とそっくり。
「......優進?」
思わず目を見開いてしまった。
5月、とある日の昼休み。
1人、教室で購買のあんパンに[漢字]齧[/漢字][ふりがな]かじ[/ふりがな]りついていた俺に優進から声がかかった。後ろには俺の苦手なタイプの陽キャがクスクスと趣味の悪い笑い声を上げている。
高校生に成長した俺たちの性格は真逆になった。いや、元々真逆だったのが最近やっと著しくわかるようになったのかもしれない。
優進はクラスのど真ん中に居座る、中心核的存在だ。一方の俺は、教室の隅で大人しくしているしかない超陰キャである。
多分優進は、こんな根暗な奴が双子の弟なんて心底嫌なんだろう。
だからせめて、俺とそっくりな顔の印象を変えるために髪を茶色く染めた......と俺は勝手に解釈している。
兄とは同じ高校に通っているが、理由はただ単に“距離が近いから”だ。
クラスはもちろん分かれていて、俺がC組、優進がD組。隣のクラスだからしょっちゅう見かける。
「なんでそんな驚くんだよ」
俺の反応に優進は半笑いで小突いてきた。このノリ、苦手。
「どう、したの」
――どうせまた忘れ物だ。
「どーもこーもねぇ。ジャージ貸せよ。あ、ついでに日本史の教科書も」
人に頼むときの態度がそれか。叱責の1つでも浴びせてやりたいくらいだが、面倒なので「わかった」と短く返してジャージと教科書を持ってくる。
手渡すと優進は「今日帰ってから返すわ」と礼も言わずに風のように去っていった。
どうも優進は、俺のことを“同じ名字の便利な奴”程度にしか思っていないようだ。
結局、俺のジャージと教科書が帰ってきたのは3日後。そのせいで2回も日本史と体育で忘れ物扱いされ、酷い目に遭った。
「ほらよ」
3日後、投げ返されたジャージは砂まみれ。教科書は変な折れ目が。
そのせいで気付くのはかなり遅かった。
ジャージのほつれが直っていたことに。
教科書に書かれていた悪口の落書きが、全部消えていたことに。
[中央寄せ]= ・ = ・ = ❖ = ・ = ・ =[/中央寄せ]
そういえば、この学年にはもう1組双子がいる。
俺たちとは正反対の、仲睦まじくて微笑ましい2人。
「――にーちゃん、見て! これ美術で[漢字]描[/漢字][ふりがな]か[/ふりがな]いたんだ〜!」
「おぉ〜......虫?」
「お花だよ?」
放課後、廊下を歩きながら何やら気になる会話をするこの2人こそが、
[漢字]常葉[/漢字][ふりがな]ときわ[/ふりがな][漢字]日織[/漢字][ふりがな]ひおり[/ふりがな]と常葉[漢字]伊月[/漢字][ふりがな]いづき[/ふりがな]。
「嘘、足と触覚があるじゃん」
「そうじゃなくて、茎と葉っぱだよぉ〜......」
そのときの俺は、のちにこの2人と深い関係になるなんて夢にも思わなかった。
俺、[漢字]峯本[/漢字][ふりがな]みねもと[/ふりがな][漢字]歩高[/漢字][ふりがな]ほだか[/ふりがな]には、双子の兄がいる。
兄の名前は、峯本[漢字]優進[/漢字][ふりがな]ゆうしん[/ふりがな]。
一卵性の双子だから、顔は瓜二つ。でも性格はまるで違う。
幼い頃は仲が良かった。
行動は常に一緒で、弟の俺はいつ何時だって優進の真似をしていた。優進が滑り台で遊べば俺もそれに続いたし、優進が夕飯でピーマンを残せば、俺も全く同じように残した。
優進は何かと俺を気にかけてくれた。「ほだかぁぁ〜」と口を大きく開けて無垢な笑みを浮かべる幼少期の兄の顔は、今でも記憶に新しい。
でもそんな優進が、昔みたく無邪気に俺を呼ぶことなんてもうない。
[中央寄せ]= ・ = ・ = ❖ = ・ = ・ =[/中央寄せ]
「なあ、おい」
廊下から教室の開いた窓に顔を出したのは、よく見慣れた茶髪の男子。でも顔は俺とそっくり。
「......優進?」
思わず目を見開いてしまった。
5月、とある日の昼休み。
1人、教室で購買のあんパンに[漢字]齧[/漢字][ふりがな]かじ[/ふりがな]りついていた俺に優進から声がかかった。後ろには俺の苦手なタイプの陽キャがクスクスと趣味の悪い笑い声を上げている。
高校生に成長した俺たちの性格は真逆になった。いや、元々真逆だったのが最近やっと著しくわかるようになったのかもしれない。
優進はクラスのど真ん中に居座る、中心核的存在だ。一方の俺は、教室の隅で大人しくしているしかない超陰キャである。
多分優進は、こんな根暗な奴が双子の弟なんて心底嫌なんだろう。
だからせめて、俺とそっくりな顔の印象を変えるために髪を茶色く染めた......と俺は勝手に解釈している。
兄とは同じ高校に通っているが、理由はただ単に“距離が近いから”だ。
クラスはもちろん分かれていて、俺がC組、優進がD組。隣のクラスだからしょっちゅう見かける。
「なんでそんな驚くんだよ」
俺の反応に優進は半笑いで小突いてきた。このノリ、苦手。
「どう、したの」
――どうせまた忘れ物だ。
「どーもこーもねぇ。ジャージ貸せよ。あ、ついでに日本史の教科書も」
人に頼むときの態度がそれか。叱責の1つでも浴びせてやりたいくらいだが、面倒なので「わかった」と短く返してジャージと教科書を持ってくる。
手渡すと優進は「今日帰ってから返すわ」と礼も言わずに風のように去っていった。
どうも優進は、俺のことを“同じ名字の便利な奴”程度にしか思っていないようだ。
結局、俺のジャージと教科書が帰ってきたのは3日後。そのせいで2回も日本史と体育で忘れ物扱いされ、酷い目に遭った。
「ほらよ」
3日後、投げ返されたジャージは砂まみれ。教科書は変な折れ目が。
そのせいで気付くのはかなり遅かった。
ジャージのほつれが直っていたことに。
教科書に書かれていた悪口の落書きが、全部消えていたことに。
[中央寄せ]= ・ = ・ = ❖ = ・ = ・ =[/中央寄せ]
そういえば、この学年にはもう1組双子がいる。
俺たちとは正反対の、仲睦まじくて微笑ましい2人。
「――にーちゃん、見て! これ美術で[漢字]描[/漢字][ふりがな]か[/ふりがな]いたんだ〜!」
「おぉ〜......虫?」
「お花だよ?」
放課後、廊下を歩きながら何やら気になる会話をするこの2人こそが、
[漢字]常葉[/漢字][ふりがな]ときわ[/ふりがな][漢字]日織[/漢字][ふりがな]ひおり[/ふりがな]と常葉[漢字]伊月[/漢字][ふりがな]いづき[/ふりがな]。
「嘘、足と触覚があるじゃん」
「そうじゃなくて、茎と葉っぱだよぉ〜......」
そのときの俺は、のちにこの2人と深い関係になるなんて夢にも思わなかった。