「ちいと待ちんさいって言よーるだらーが!!」
佐賀県庁の階段をドタバタと駆け下り、そのままの勢いで佐賀市内の路上を引きずられていく鳥取が叫んだ。
手首をがっちり掴まれたままである。
「離しんさいよ!うちは鳥取!日本一人口が少ないけど、砂丘とカニと梨でそこそこに平和を生きとる鳥取なの! なんで長崎に乗り込むハメになってんのよ!」
「バカ言え鳥取!北海道ん圧倒的な食ん暴力に立ち向かうには、九州ん誇るハイカラ&高カロリー爆薬――『長崎ちゃんぽん』と『皿うどん』ん加勢ん不可欠や!」
佐賀は鼻息荒く宣言すると、愛車の軽トラの助手席に鳥取を押し込んだ。
車内にはほのかに有田焼の粘土の匂いと、荷台には佐賀県産米「さがびより」の袋が高く積まれている。
「とにかく西さん突っ走るぞ! 目指すは長崎県庁!」
「あーもう! 砂丘の砂で目潰ししてやろうかしら……!」
軽トラはエンジン音を爆発させ、一路、西へ向かって国道を爆走し始めた。
[水平線]
車を走らせること約1時間半。有明海の風を感じながら県境を越え、坂の街・長崎へと侵入した二人。
長崎県庁の講堂に土足で踏み込んだ佐賀は、中央で優雅にカステラを切り分けていた異国情緒漂う女性――長崎に向かって叫んだ。
「長崎!おいと一緒に魔王北海道ば倒しにいこう!!」
優雅にカステラと紅茶を嗜んでいた長崎が、心底うっとうしそうな顔で振り返った。
「無理」
「即答!?」
鳥取が思わずツッコミを入れる。長崎は紅茶を一口すすると、佐賀を軽蔑した目で見下ろした。
「 我が長崎県が、なしておうちんような『どこにあるかイマイチようわからん県』に従わんばならんと?」
「存在感がのうしてよかとばい!」
佐賀が噛みつくように抗議すると、長崎は冷ややかに溜息をつく。
「よか? 北海道ん『味噌ラーメン』『塩ラーメン』『醤油ラーメン』ん三大ラーメン陣形ば前に、うちん『ちゃんぽん』と『皿うどん』だけで対抗でくるとでも? 圧倒的に層ん厚さが違うと」
そして、長崎はこう言い放った。
「やけん、うちゃ北海道に従うた。うちば巻き込まんでくるる?」
「おいおい長崎、何ば弱気なこつ言いよったい!」
佐賀は怯みもせず、ドカッと長崎の向かいの席に座り込み、ニヤリと不敵に笑った。
「確かにラーメンの層は厚か。だがな、わいには『異国情緒』があるじゃろ! カステラにちゃんぽん、角煮まんじゅう! 奴らん豪快な北ん大地グルメに対して、こちらは華麗なる和洋折衷ん技で攻むっとばい!」
「言いよーことは一理あるばってん、戦力が違いすぎる……」
鳥取が横からボソッと口を挟む。
「だいたいね長崎、この人、北海道の弱点は『広すぎて移動時間が長いこと』とか本気で言よーるのよ? ついていったら絶対、ろくなことにならんわよ」
その言葉を聞いた佐賀は鳥取に、勝手なことを言うな、とばかりに視線を送る。
「……相変わらずん思考回路ね、佐賀」
はぁ。と長崎は呆れ果てたように眉間を押さえた。長崎は、北海道に従う姿勢を崩さない。
(こりゃ無理だ)
鳥取が諦めて、佐賀を連れて帰ろうとしたときだった。
胸ポケットから佐賀が誇る至高のブランド牛『佐賀牛』の最高級A5ランク肉の引き換えクーポンを取り出し、長崎の目の前に突きつけた。
「長崎! わいん『佐賀牛×長崎ちゃんぽん』ん夢んコラボ攻撃があっぎー、北海道ん先鋒である『ジンギスカン軍団』だって突破でくっ! おいと一緒に天下ば取ろうや!」
「……」
長崎の目が、一瞬だけ鋭く光った。
「……佐賀牛んトッピング、悪うなかばい。あん極上ん脂がちゃんぽんの濃厚スープに溶け込めば、たしかに北海道んジンギスカンにも引けば取らん最高峰んB級グルメ兵器が完成する……」
「乗っかるな長崎ぃぃぃ!」
鳥取の突っ込みが部屋に響き渡る。長崎はゆっくりと立ち上がり、優雅にカステラナイフを構えた。
「よかばい、佐賀。おうちん無謀な挑戦、少しだけ付き合うちゃる。ただし仲間やなか。こりゃあくまで、長崎んブランド力ば全国に知らしめるためん……利害ん一致ばい!」
その言葉に、佐賀の顔がパアァと明るくなる。そして、長崎の手をガシッと掴んで言った。
「よっしゃー!あいがとう長崎!仲間になってくれて、心強かぞ!」
「やけん、仲間やなかと⋯⋯!」
佐賀は呆れたように苦情を言う長崎を無視して、勢いそのまま鳥取を振り返る。
「これで三人目ばい、鳥取!」
「うちを勝手にパーティーに組み込まいで!! うちは砂丘に帰るの!!」
鳥取の悲鳴が響き渡る。
「さあ、次は熊本や!雄大な阿蘇山ば有すっ大地に行くぞ!」
「聞いちゃおらん!!」
こうして無事、長崎を仲間にした佐賀一行は、次なる決戦の地、熊本に向けて歩き出す。
佐賀県庁の階段をドタバタと駆け下り、そのままの勢いで佐賀市内の路上を引きずられていく鳥取が叫んだ。
手首をがっちり掴まれたままである。
「離しんさいよ!うちは鳥取!日本一人口が少ないけど、砂丘とカニと梨でそこそこに平和を生きとる鳥取なの! なんで長崎に乗り込むハメになってんのよ!」
「バカ言え鳥取!北海道ん圧倒的な食ん暴力に立ち向かうには、九州ん誇るハイカラ&高カロリー爆薬――『長崎ちゃんぽん』と『皿うどん』ん加勢ん不可欠や!」
佐賀は鼻息荒く宣言すると、愛車の軽トラの助手席に鳥取を押し込んだ。
車内にはほのかに有田焼の粘土の匂いと、荷台には佐賀県産米「さがびより」の袋が高く積まれている。
「とにかく西さん突っ走るぞ! 目指すは長崎県庁!」
「あーもう! 砂丘の砂で目潰ししてやろうかしら……!」
軽トラはエンジン音を爆発させ、一路、西へ向かって国道を爆走し始めた。
[水平線]
車を走らせること約1時間半。有明海の風を感じながら県境を越え、坂の街・長崎へと侵入した二人。
長崎県庁の講堂に土足で踏み込んだ佐賀は、中央で優雅にカステラを切り分けていた異国情緒漂う女性――長崎に向かって叫んだ。
「長崎!おいと一緒に魔王北海道ば倒しにいこう!!」
優雅にカステラと紅茶を嗜んでいた長崎が、心底うっとうしそうな顔で振り返った。
「無理」
「即答!?」
鳥取が思わずツッコミを入れる。長崎は紅茶を一口すすると、佐賀を軽蔑した目で見下ろした。
「 我が長崎県が、なしておうちんような『どこにあるかイマイチようわからん県』に従わんばならんと?」
「存在感がのうしてよかとばい!」
佐賀が噛みつくように抗議すると、長崎は冷ややかに溜息をつく。
「よか? 北海道ん『味噌ラーメン』『塩ラーメン』『醤油ラーメン』ん三大ラーメン陣形ば前に、うちん『ちゃんぽん』と『皿うどん』だけで対抗でくるとでも? 圧倒的に層ん厚さが違うと」
そして、長崎はこう言い放った。
「やけん、うちゃ北海道に従うた。うちば巻き込まんでくるる?」
「おいおい長崎、何ば弱気なこつ言いよったい!」
佐賀は怯みもせず、ドカッと長崎の向かいの席に座り込み、ニヤリと不敵に笑った。
「確かにラーメンの層は厚か。だがな、わいには『異国情緒』があるじゃろ! カステラにちゃんぽん、角煮まんじゅう! 奴らん豪快な北ん大地グルメに対して、こちらは華麗なる和洋折衷ん技で攻むっとばい!」
「言いよーことは一理あるばってん、戦力が違いすぎる……」
鳥取が横からボソッと口を挟む。
「だいたいね長崎、この人、北海道の弱点は『広すぎて移動時間が長いこと』とか本気で言よーるのよ? ついていったら絶対、ろくなことにならんわよ」
その言葉を聞いた佐賀は鳥取に、勝手なことを言うな、とばかりに視線を送る。
「……相変わらずん思考回路ね、佐賀」
はぁ。と長崎は呆れ果てたように眉間を押さえた。長崎は、北海道に従う姿勢を崩さない。
(こりゃ無理だ)
鳥取が諦めて、佐賀を連れて帰ろうとしたときだった。
胸ポケットから佐賀が誇る至高のブランド牛『佐賀牛』の最高級A5ランク肉の引き換えクーポンを取り出し、長崎の目の前に突きつけた。
「長崎! わいん『佐賀牛×長崎ちゃんぽん』ん夢んコラボ攻撃があっぎー、北海道ん先鋒である『ジンギスカン軍団』だって突破でくっ! おいと一緒に天下ば取ろうや!」
「……」
長崎の目が、一瞬だけ鋭く光った。
「……佐賀牛んトッピング、悪うなかばい。あん極上ん脂がちゃんぽんの濃厚スープに溶け込めば、たしかに北海道んジンギスカンにも引けば取らん最高峰んB級グルメ兵器が完成する……」
「乗っかるな長崎ぃぃぃ!」
鳥取の突っ込みが部屋に響き渡る。長崎はゆっくりと立ち上がり、優雅にカステラナイフを構えた。
「よかばい、佐賀。おうちん無謀な挑戦、少しだけ付き合うちゃる。ただし仲間やなか。こりゃあくまで、長崎んブランド力ば全国に知らしめるためん……利害ん一致ばい!」
その言葉に、佐賀の顔がパアァと明るくなる。そして、長崎の手をガシッと掴んで言った。
「よっしゃー!あいがとう長崎!仲間になってくれて、心強かぞ!」
「やけん、仲間やなかと⋯⋯!」
佐賀は呆れたように苦情を言う長崎を無視して、勢いそのまま鳥取を振り返る。
「これで三人目ばい、鳥取!」
「うちを勝手にパーティーに組み込まいで!! うちは砂丘に帰るの!!」
鳥取の悲鳴が響き渡る。
「さあ、次は熊本や!雄大な阿蘇山ば有すっ大地に行くぞ!」
「聞いちゃおらん!!」
こうして無事、長崎を仲間にした佐賀一行は、次なる決戦の地、熊本に向けて歩き出す。