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「それにしても、三人でやることってあるのかしら?」
人気のない教室の中、[漢字]佐奈[/漢字][ふりがな]さな[/ふりがな]がふとそう声に出す。
「確かに……」
三人しかいない教室の中の一人、私もそう同意する。
「とりあえずトランプとか?三人だと丁度いいだろ」
教室にいる最後の一人、[漢字]練[/漢字][ふりがな]れん[/ふりがな]疑問形になりながらそう返す。
「練くん、それいいね。よーし、やろ!」
私の賛同の言葉に、佐那も大きく頷く。
「そうね。練にしてはいい考えよ!さて、早速やるわよ」
そう言って佐奈が先生の机の横の引き出しを開ける。
すると、そこからカードゲームが三つほど出てきた。
全クラスに備わっているもので、自由に使ってよい。
「さーて、何やろうかしら?」
「ババ抜きがいいー!」
「俺もー。それ以外なんてあるの?」
「あるわよ。馬鹿ね」
「馬鹿というより、箱入り感があるなぁ……」
「今時カードゲームなんてほぼやらないだろ」
自然な会話を交えながら佐那がカードを一枚ずつ配ってくれる。
私の時は毎回手渡しで微笑みながら渡してくれるが、調子に乗る練には投げるように乱暴に渡している。
その様子を見て、思わず笑みが溢れた。
「はー、また勝っちゃったわ!」
「佐那、強すぎる……」
「何かズルでもしてるんじゃないのかよー」
「はっ、ズルなんてしてる訳ないでしょう?きっと練は馬鹿だから負け続けるのね。[漢字]凛音[/漢字][ふりがな]りんね[/ふりがな]は私とかなりいい勝負だったわ」
「ほんと?やったー!」
「はぁ?俺だって今年は風邪ひいたし!だから馬鹿じゃねーし!」
佐那が得意げに、集めたカードをシャッフルする。
「『今年は』でしょう?去年とか、一昨年とかはずっとひいてなかったわよね」
「そうなの!?体質的な問題じゃなくて?」
「馬鹿は風邪をひかないって言うだろー?体質的な問題だとしたら俺の体質は「馬鹿」だな」
「きっとそうだわ。そういうことだったのね!」
「な、なるほど……」
「おいおい、誰か否定しろよー」
練が思い切りぐっと伸びをする。
「もう一回戦する?まだ時間はあるわ」
「えーっと、みんなが来るのが八時半だから……」
「あと十五分はあるな。よし、今度こそ勝ってやる!」
「いいわ、二人ともかかってきなさい。存分に叩きのめしてやるわ!」
「望むところ!頑張るぞー!」
「おー」
「やっと勝った……疲れた……」
十分後、三人のトランプ勝負は幕を閉じた。
勝者は私。
長い激闘の末、何とか強敵の佐奈に勝ったのだ。
「凛音……立派になったわね……」
対する佐奈も、くたくたになって机に突っ伏している。
「おいお前ら、わかってると思うけど俺がビリだからな?すこしは俺の心配しろよ?」
一番に疲れているようにも見える、結局は一度も勝てなかった雑魚の練がそううめく。
「あら、敗者が何を言っているのかしら。この弱肉強食の世界では、商社が第一なのよ。雑魚の練にはなにもないわ」
「佐那、トランプってそんなハードな世界だったの……!?」
「佐那は俺に冷たいだけだぞ」
「無様ね。勝つためには醜く足掻き続けることが重要なのよ!」
「おお、佐那には強い精神と覚悟が学べそう!頑張れ、練くん!」
「まずは凛音に勝つことを目標にするか……」
練がうめくのをやめて顔を上げる。
すると、遠くから数人の足音が聞こえた。
そろそろクラスメイトが来たようだ。
それに気付いたらしい佐那が声を上げる。
「あら、誰か来たのかしら」
「そうっぽいね。トランプはもう片付ける?」
「そうだな。結局、一回も勝てなかった……」
佐那が席から立ち上がってトランプを引き出しに戻す。
すると、クラスメイトの[漢字]道枝結菜[/漢字][ふりがな]みちえだゆいな[/ふりがな]と[漢字]野里理沙[/漢字][ふりがな]のざとりさ[/ふりがな]が扉を開けて教室に入ってきた。
「あ、凛音ちゃん。おはよう」
「おはよー!早いね」
「おはよ!来る時間、間違えちゃってさ」
「あはは、なるほど」
「わかりにくかったし、しょうがないよ」
二人は口々にそう言うと、各々の席に向かっていった。
「はぁ。トランプ終わったはいいけど、まだまだ時間はかかりそうだな」
「そうだねぇ。何しよっか?」
「あ、係の仕事あるんだった。忘れてたー、やって来る」
「そっか。頑張って!」
練が席を外したのと同時ぐらいに佐那が近づいてくる。
「凛音、どう?何か進展はあった?」
「ぅえっ!?……う、うーん。どうだろ?」
「今日で最後なんだから、満足するまで仲良くしておきなさいよ。心残りの内容にね。告白するのもいいかもしれないわよ」
「こっ、告っ!?……まあ、考えとこっかな」
ほんの少しだけ頬が熱くなった。
「まあ、引っ越しても連絡して遊べばいいだけだもの。県内なんでしょ?」
「うん。そうだよね、何回でも遊びに来るから!週一ぐらいで!」
「あはは、そんな頻度できたらお母さんが大変じゃない。でも、時々でも顔は出しなさいよ」
「うん。ぜひそうさせてもらうねー!」
佐那も、本当はお互いすごく悲しいのかもしれない。
だけどそれを隠して、できるだけいいお別れをしようと努力してくれている。
だから私も、それに応えなきゃ。
「あら、ところであいつは?」
「練くんは係の仕事やりに行ったよー」
「あ、私も係の仕事やらなきゃいけないんだったわ!やって来るわね」
「うん、いってらっしゃい!」
……今日はみんなとお別れするまで、ずっと笑顔でいよう。
周りに誰もいなくなった私は、静かにそう決意した。
「それにしても、三人でやることってあるのかしら?」
人気のない教室の中、[漢字]佐奈[/漢字][ふりがな]さな[/ふりがな]がふとそう声に出す。
「確かに……」
三人しかいない教室の中の一人、私もそう同意する。
「とりあえずトランプとか?三人だと丁度いいだろ」
教室にいる最後の一人、[漢字]練[/漢字][ふりがな]れん[/ふりがな]疑問形になりながらそう返す。
「練くん、それいいね。よーし、やろ!」
私の賛同の言葉に、佐那も大きく頷く。
「そうね。練にしてはいい考えよ!さて、早速やるわよ」
そう言って佐奈が先生の机の横の引き出しを開ける。
すると、そこからカードゲームが三つほど出てきた。
全クラスに備わっているもので、自由に使ってよい。
「さーて、何やろうかしら?」
「ババ抜きがいいー!」
「俺もー。それ以外なんてあるの?」
「あるわよ。馬鹿ね」
「馬鹿というより、箱入り感があるなぁ……」
「今時カードゲームなんてほぼやらないだろ」
自然な会話を交えながら佐那がカードを一枚ずつ配ってくれる。
私の時は毎回手渡しで微笑みながら渡してくれるが、調子に乗る練には投げるように乱暴に渡している。
その様子を見て、思わず笑みが溢れた。
「はー、また勝っちゃったわ!」
「佐那、強すぎる……」
「何かズルでもしてるんじゃないのかよー」
「はっ、ズルなんてしてる訳ないでしょう?きっと練は馬鹿だから負け続けるのね。[漢字]凛音[/漢字][ふりがな]りんね[/ふりがな]は私とかなりいい勝負だったわ」
「ほんと?やったー!」
「はぁ?俺だって今年は風邪ひいたし!だから馬鹿じゃねーし!」
佐那が得意げに、集めたカードをシャッフルする。
「『今年は』でしょう?去年とか、一昨年とかはずっとひいてなかったわよね」
「そうなの!?体質的な問題じゃなくて?」
「馬鹿は風邪をひかないって言うだろー?体質的な問題だとしたら俺の体質は「馬鹿」だな」
「きっとそうだわ。そういうことだったのね!」
「な、なるほど……」
「おいおい、誰か否定しろよー」
練が思い切りぐっと伸びをする。
「もう一回戦する?まだ時間はあるわ」
「えーっと、みんなが来るのが八時半だから……」
「あと十五分はあるな。よし、今度こそ勝ってやる!」
「いいわ、二人ともかかってきなさい。存分に叩きのめしてやるわ!」
「望むところ!頑張るぞー!」
「おー」
「やっと勝った……疲れた……」
十分後、三人のトランプ勝負は幕を閉じた。
勝者は私。
長い激闘の末、何とか強敵の佐奈に勝ったのだ。
「凛音……立派になったわね……」
対する佐奈も、くたくたになって机に突っ伏している。
「おいお前ら、わかってると思うけど俺がビリだからな?すこしは俺の心配しろよ?」
一番に疲れているようにも見える、結局は一度も勝てなかった雑魚の練がそううめく。
「あら、敗者が何を言っているのかしら。この弱肉強食の世界では、商社が第一なのよ。雑魚の練にはなにもないわ」
「佐那、トランプってそんなハードな世界だったの……!?」
「佐那は俺に冷たいだけだぞ」
「無様ね。勝つためには醜く足掻き続けることが重要なのよ!」
「おお、佐那には強い精神と覚悟が学べそう!頑張れ、練くん!」
「まずは凛音に勝つことを目標にするか……」
練がうめくのをやめて顔を上げる。
すると、遠くから数人の足音が聞こえた。
そろそろクラスメイトが来たようだ。
それに気付いたらしい佐那が声を上げる。
「あら、誰か来たのかしら」
「そうっぽいね。トランプはもう片付ける?」
「そうだな。結局、一回も勝てなかった……」
佐那が席から立ち上がってトランプを引き出しに戻す。
すると、クラスメイトの[漢字]道枝結菜[/漢字][ふりがな]みちえだゆいな[/ふりがな]と[漢字]野里理沙[/漢字][ふりがな]のざとりさ[/ふりがな]が扉を開けて教室に入ってきた。
「あ、凛音ちゃん。おはよう」
「おはよー!早いね」
「おはよ!来る時間、間違えちゃってさ」
「あはは、なるほど」
「わかりにくかったし、しょうがないよ」
二人は口々にそう言うと、各々の席に向かっていった。
「はぁ。トランプ終わったはいいけど、まだまだ時間はかかりそうだな」
「そうだねぇ。何しよっか?」
「あ、係の仕事あるんだった。忘れてたー、やって来る」
「そっか。頑張って!」
練が席を外したのと同時ぐらいに佐那が近づいてくる。
「凛音、どう?何か進展はあった?」
「ぅえっ!?……う、うーん。どうだろ?」
「今日で最後なんだから、満足するまで仲良くしておきなさいよ。心残りの内容にね。告白するのもいいかもしれないわよ」
「こっ、告っ!?……まあ、考えとこっかな」
ほんの少しだけ頬が熱くなった。
「まあ、引っ越しても連絡して遊べばいいだけだもの。県内なんでしょ?」
「うん。そうだよね、何回でも遊びに来るから!週一ぐらいで!」
「あはは、そんな頻度できたらお母さんが大変じゃない。でも、時々でも顔は出しなさいよ」
「うん。ぜひそうさせてもらうねー!」
佐那も、本当はお互いすごく悲しいのかもしれない。
だけどそれを隠して、できるだけいいお別れをしようと努力してくれている。
だから私も、それに応えなきゃ。
「あら、ところであいつは?」
「練くんは係の仕事やりに行ったよー」
「あ、私も係の仕事やらなきゃいけないんだったわ!やって来るわね」
「うん、いってらっしゃい!」
……今日はみんなとお別れするまで、ずっと笑顔でいよう。
周りに誰もいなくなった私は、静かにそう決意した。