2
いつだって、朝からは逃げられない。
「ジリリリリ……」という目覚まし時計の音に目を覚ます。
時計を見れば、針は七時を指していた。
もう起きる時間だ。
私はベッドから起き上がると、朝の支度をするために寝室を出た。
「おはよう……」
ぼんやりとしたまま、目を擦りながらお母さんに挨拶する。
「おはよう。ご飯できてるから食べな。今日は卒業式だよ」
そう言うお母さんの目は、どこか同情を含んだように目尻が下がっていた。
「はーい……」
欠伸をしながらそう返事して、リビングのダイニングテーブルへと向かう。
そこには、いつもより少し豪華な朝食が並んでいた。
___あぁ、お母さんだって引っ越しは悲しいんだなぁ。
「お母さーん、今日のご飯めっちゃ美味しそう。ありがと」
___だけど、私のために尽くしてくれてる。
「よかったあ。今日は[漢字]凛音[/漢字][ふりがな]りんね[/ふりがな]の好きなメニューにしたからね。さ、食べな食べな!」
___だから、私はそれに答えなきゃいけない。
「うん……!」
今日の朝食は、炊き込みご飯に目玉焼き、卵焼き、トマトサラダ。
私の大好物だ。
今日は学校の最終日。
そして、みんなに会える最後の日。
だけど、そんな一日を少しでも楽しくしたかった。
支度を終えて、外に出る。
私の通学班の集合場所に向かうと、そこには通学班の同級生・[漢字]平野佐那[/漢字][ふりがな]ひらのさな[/ふりがな]がいた。
彼女はクラスは違うが私と同じ六年生で、家も近く仲の良い幼馴染だ。
私が小走りで佐那に近づくと、彼女はそっと微笑みかけてくれた。
「おはよー、佐那!」
「おはよう。今日は卒業式ね。凛音と会えるのも、今日が最後なのよね……」
佐那はそう言って少し寂しそうに笑うと、無理しているように再び微笑んだ。
___彼女は昔から、辛い時こそその辛さを隠そうと無理してしまっていることが多い。
だから。
「うん……。だけど、連絡取って今度遊ぼうよ。私も佐那と会いたいし!とりあえず、今日を楽しもう!」
「ありがとう……。そうよね。今日は卒業式が終わったら卒業パーティーだし、楽しまなきゃ損よね!」
佐那はそう言って明るく頷いてくれた。
だけどやっぱり、自分でも思ってしまう。
___あぁ、今日で最後なんだなぁ、と。
「あ、六年の二人もう来てたんだ!」
「早いなぁ、やっぱり卒業式だから?」
声のした方を見ると、通学班の五年生の二人・[漢字]椎名結花[/漢字][ふりがな]しいなゆいか[/ふりがな]と[漢字]七瀬八重[/漢字][ふりがな]ななせやえ[/ふりがな]が歩いてくるところだった。
「おはよう、二人とも!二人も早いね」
「おはよう。卒業式だから目が冴えてしまったのよ。今日は五年と六年だけだし、少し早いけどもう出発しようかしら?」
「おはよー!そうだねぇ、ちょっと早いけどもう行っちゃおっか!」
「おはよ~。早起きしたからちょっと眠いよ~。まあ、もう出発しちゃうか~」
私の学校・小田山小学校では、卒業式の日は卒業する六年とそれを見学する五年が卒業式に参加する方式だ。
そして六年と五年で卒業式の準備をしてから親に衣装を持って来てもらい、用意した服に着替えたらすぐ卒業式が始まる。
そうして、私・[漢字]高橋[/漢字][ふりがな]たかはし[/ふりがな]凛音と平野佐那、元気いっぱいの椎名結花、眠そうにしている七瀬八重は、いつもより少ない通学班で学校に向かって歩き始めた。
「……でね、お母さんと一緒に笑っちゃったのよ!」
「あはは、そんなことあったんだ!」
佐那との会話に夢中になっていてあまり気付いていなかったが、談笑している内に学校の近くの交差点まで来ていた。
そんな時、交差点の向こう側から声がした。
「あれ、凛音と佐那!二人とも今日は早いな」
しっかりと芯の通った、澄んだ声。
反射的に声のした方を見ると、[漢字]糸魚川練[/漢字][ふりがな]いといがわれん[/ふりがな]がいた。
頼れてかっこいい、私の大好きな人。
「あら、『今日は』だなんてご挨拶じゃないの。お互い様なのに」
「うん、確かに……」
少しだけ、声が震えてしまった。
あの人を見ると、今日で最後なのが本当に辛くなる。
___心配そうな顔を向けた佐那にも気付かずに、私は悲しみに囚われてしまった。
いつだって、朝からは逃げられない。
「ジリリリリ……」という目覚まし時計の音に目を覚ます。
時計を見れば、針は七時を指していた。
もう起きる時間だ。
私はベッドから起き上がると、朝の支度をするために寝室を出た。
「おはよう……」
ぼんやりとしたまま、目を擦りながらお母さんに挨拶する。
「おはよう。ご飯できてるから食べな。今日は卒業式だよ」
そう言うお母さんの目は、どこか同情を含んだように目尻が下がっていた。
「はーい……」
欠伸をしながらそう返事して、リビングのダイニングテーブルへと向かう。
そこには、いつもより少し豪華な朝食が並んでいた。
___あぁ、お母さんだって引っ越しは悲しいんだなぁ。
「お母さーん、今日のご飯めっちゃ美味しそう。ありがと」
___だけど、私のために尽くしてくれてる。
「よかったあ。今日は[漢字]凛音[/漢字][ふりがな]りんね[/ふりがな]の好きなメニューにしたからね。さ、食べな食べな!」
___だから、私はそれに答えなきゃいけない。
「うん……!」
今日の朝食は、炊き込みご飯に目玉焼き、卵焼き、トマトサラダ。
私の大好物だ。
今日は学校の最終日。
そして、みんなに会える最後の日。
だけど、そんな一日を少しでも楽しくしたかった。
支度を終えて、外に出る。
私の通学班の集合場所に向かうと、そこには通学班の同級生・[漢字]平野佐那[/漢字][ふりがな]ひらのさな[/ふりがな]がいた。
彼女はクラスは違うが私と同じ六年生で、家も近く仲の良い幼馴染だ。
私が小走りで佐那に近づくと、彼女はそっと微笑みかけてくれた。
「おはよー、佐那!」
「おはよう。今日は卒業式ね。凛音と会えるのも、今日が最後なのよね……」
佐那はそう言って少し寂しそうに笑うと、無理しているように再び微笑んだ。
___彼女は昔から、辛い時こそその辛さを隠そうと無理してしまっていることが多い。
だから。
「うん……。だけど、連絡取って今度遊ぼうよ。私も佐那と会いたいし!とりあえず、今日を楽しもう!」
「ありがとう……。そうよね。今日は卒業式が終わったら卒業パーティーだし、楽しまなきゃ損よね!」
佐那はそう言って明るく頷いてくれた。
だけどやっぱり、自分でも思ってしまう。
___あぁ、今日で最後なんだなぁ、と。
「あ、六年の二人もう来てたんだ!」
「早いなぁ、やっぱり卒業式だから?」
声のした方を見ると、通学班の五年生の二人・[漢字]椎名結花[/漢字][ふりがな]しいなゆいか[/ふりがな]と[漢字]七瀬八重[/漢字][ふりがな]ななせやえ[/ふりがな]が歩いてくるところだった。
「おはよう、二人とも!二人も早いね」
「おはよう。卒業式だから目が冴えてしまったのよ。今日は五年と六年だけだし、少し早いけどもう出発しようかしら?」
「おはよー!そうだねぇ、ちょっと早いけどもう行っちゃおっか!」
「おはよ~。早起きしたからちょっと眠いよ~。まあ、もう出発しちゃうか~」
私の学校・小田山小学校では、卒業式の日は卒業する六年とそれを見学する五年が卒業式に参加する方式だ。
そして六年と五年で卒業式の準備をしてから親に衣装を持って来てもらい、用意した服に着替えたらすぐ卒業式が始まる。
そうして、私・[漢字]高橋[/漢字][ふりがな]たかはし[/ふりがな]凛音と平野佐那、元気いっぱいの椎名結花、眠そうにしている七瀬八重は、いつもより少ない通学班で学校に向かって歩き始めた。
「……でね、お母さんと一緒に笑っちゃったのよ!」
「あはは、そんなことあったんだ!」
佐那との会話に夢中になっていてあまり気付いていなかったが、談笑している内に学校の近くの交差点まで来ていた。
そんな時、交差点の向こう側から声がした。
「あれ、凛音と佐那!二人とも今日は早いな」
しっかりと芯の通った、澄んだ声。
反射的に声のした方を見ると、[漢字]糸魚川練[/漢字][ふりがな]いといがわれん[/ふりがな]がいた。
頼れてかっこいい、私の大好きな人。
「あら、『今日は』だなんてご挨拶じゃないの。お互い様なのに」
「うん、確かに……」
少しだけ、声が震えてしまった。
あの人を見ると、今日で最後なのが本当に辛くなる。
___心配そうな顔を向けた佐那にも気付かずに、私は悲しみに囚われてしまった。