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あと履歴も。
「……小川、貴様、今なんと言った?」
壇上の蛇崩先生の声が、怒りで低く震えていた。マイクを通したその声は、体育館の冷たい空気をビリビリと震わせる。
しかし、凛先輩は動じない。それどころか、校則で禁止されている「腰に手を当てるポーズ」で、さらに挑発を重ねた。
「だからぁ、耳悪いんすか? 『ちいかわ』だってば。あ、ついでに言うと、そのネクタイの結び目、コンマ五ミリ右にズレててダサいっすよ」
「貴様ぁぁぁ!!」
先生が咆哮し、教員たちが一斉に凛先輩へ駆け寄ろうとしたその瞬間だった。
私はポケットの中で、冷たくなったスイッチを強く押し込んだ。
――プシュッ。
天井の通気口から、目に見えないほど微細な、けれど確実に「牙」を持った粉末が、全校生徒の頭上に降り注いだ。
「……っ、……っく、……ッしゅん!!」
静寂を切り裂いたのは、列の最前列にいた二年生の声だった。
それを皮切りに、体育館は地獄、あるいは天国のような混沌へと変貌した。
「はっくしゅん!」「くちゅん!」「ぶえっくしょい!!」
一人、また一人と、鉄の規律で縛られていたはずの少女たちの体が、生理現象という抗えない本能によって弾ける。
「な、なんだ!? 何が起きている! 貴様ら、静縮しろ! 咳を止めろ! 嚔は校則違反だぞ!!」
蛇崩先生が絶叫するが、もはや手遅れだった。一度決壊したダムは止まらない。
生徒たちは涙目になりながら、鼻を押さえ、身をよじらせる。その光景は、厳格な宗教儀式が、一夜にして狂乱のダンスパーティーに変わったかのようだった。
「あはははは! 見てよ蒼ちゃん、サイコー! みんな、いい顔してるじゃん!」
混乱の渦中で、凛先輩が私の方を振り返った。彼女だけは、結衣香から渡された「鼻腔用ナノフィルター」を装着しており、平然としている。
彼女は駆け寄ってくると、パニックで立ち尽くす私の腰を引き寄せ、その耳元に唇を寄せた。
「……さて、次はウチラの番。ねえ、蒼ちゃん。一番可愛い声で、世界を壊して?」
先輩の指先が、私の首筋をなぞる。そのゾクゾクするような感触と、鼻の奥を突くコショウの刺激。
私は、もう限界だった。
「……っ、ふ……っ、……はっく、しゅん!!」
私のくしゃみは、誰よりも高く、澄んだ音で響いた。
その瞬間、凛先輩が私の唇に、自分の唇を重ねた。
千人のくしゃみと、先生たちの怒号、そして脳を焼くような先輩の甘い吐息。
「んっ……ふふ、初くしゃみ、ごちそうさま」
「山崎さん、作戦はフェーズ2に移行しました。逃げますよ」
いつの間にか背後にいた和島結衣香が、私の手首を掴む。彼女の瞳は、混乱する生徒たちのデータを冷静に記録しながらも、どこか楽しげに歪んでいた。
「風紀が乱れるところに、私の正義あり! 蒼さん、凛先輩、結衣香さん! こちらです!」
高田みおが、偽造した風紀委員の鍵を使い、閉鎖されていた非常口を蹴破る。
私たちは、煙とくしゃみが充満する体育館を後にし、初夏の光が降り注ぐ校庭へと飛び出した。
背後では、生活指導の先生たちが「ちいかわ待てぇぇ!!」と叫びながら追いかけてくるのが聞こえた。
「あははは! 逃げろ逃げろ! ウチラの青春は、ここからが本番っしょ!」
凛先輩と手を繋ぎ、全速力で走る。
重たかったはずのローファーが、今は羽根のように軽い。
校則という名の鎖が、一本ずつ引きちぎられていく音がした。
壇上の蛇崩先生の声が、怒りで低く震えていた。マイクを通したその声は、体育館の冷たい空気をビリビリと震わせる。
しかし、凛先輩は動じない。それどころか、校則で禁止されている「腰に手を当てるポーズ」で、さらに挑発を重ねた。
「だからぁ、耳悪いんすか? 『ちいかわ』だってば。あ、ついでに言うと、そのネクタイの結び目、コンマ五ミリ右にズレててダサいっすよ」
「貴様ぁぁぁ!!」
先生が咆哮し、教員たちが一斉に凛先輩へ駆け寄ろうとしたその瞬間だった。
私はポケットの中で、冷たくなったスイッチを強く押し込んだ。
――プシュッ。
天井の通気口から、目に見えないほど微細な、けれど確実に「牙」を持った粉末が、全校生徒の頭上に降り注いだ。
「……っ、……っく、……ッしゅん!!」
静寂を切り裂いたのは、列の最前列にいた二年生の声だった。
それを皮切りに、体育館は地獄、あるいは天国のような混沌へと変貌した。
「はっくしゅん!」「くちゅん!」「ぶえっくしょい!!」
一人、また一人と、鉄の規律で縛られていたはずの少女たちの体が、生理現象という抗えない本能によって弾ける。
「な、なんだ!? 何が起きている! 貴様ら、静縮しろ! 咳を止めろ! 嚔は校則違反だぞ!!」
蛇崩先生が絶叫するが、もはや手遅れだった。一度決壊したダムは止まらない。
生徒たちは涙目になりながら、鼻を押さえ、身をよじらせる。その光景は、厳格な宗教儀式が、一夜にして狂乱のダンスパーティーに変わったかのようだった。
「あはははは! 見てよ蒼ちゃん、サイコー! みんな、いい顔してるじゃん!」
混乱の渦中で、凛先輩が私の方を振り返った。彼女だけは、結衣香から渡された「鼻腔用ナノフィルター」を装着しており、平然としている。
彼女は駆け寄ってくると、パニックで立ち尽くす私の腰を引き寄せ、その耳元に唇を寄せた。
「……さて、次はウチラの番。ねえ、蒼ちゃん。一番可愛い声で、世界を壊して?」
先輩の指先が、私の首筋をなぞる。そのゾクゾクするような感触と、鼻の奥を突くコショウの刺激。
私は、もう限界だった。
「……っ、ふ……っ、……はっく、しゅん!!」
私のくしゃみは、誰よりも高く、澄んだ音で響いた。
その瞬間、凛先輩が私の唇に、自分の唇を重ねた。
千人のくしゃみと、先生たちの怒号、そして脳を焼くような先輩の甘い吐息。
「んっ……ふふ、初くしゃみ、ごちそうさま」
「山崎さん、作戦はフェーズ2に移行しました。逃げますよ」
いつの間にか背後にいた和島結衣香が、私の手首を掴む。彼女の瞳は、混乱する生徒たちのデータを冷静に記録しながらも、どこか楽しげに歪んでいた。
「風紀が乱れるところに、私の正義あり! 蒼さん、凛先輩、結衣香さん! こちらです!」
高田みおが、偽造した風紀委員の鍵を使い、閉鎖されていた非常口を蹴破る。
私たちは、煙とくしゃみが充満する体育館を後にし、初夏の光が降り注ぐ校庭へと飛び出した。
背後では、生活指導の先生たちが「ちいかわ待てぇぇ!!」と叫びながら追いかけてくるのが聞こえた。
「あははは! 逃げろ逃げろ! ウチラの青春は、ここからが本番っしょ!」
凛先輩と手を繋ぎ、全速力で走る。
重たかったはずのローファーが、今は羽根のように軽い。
校則という名の鎖が、一本ずつ引きちぎられていく音がした。