「うーん、上手くいかないなぁ……」
洗面所の前で貰ったばかりの額当てを結ぼうとがんばるが、一向に上手くいかない。
額当ては軽い金属で出来ているのけど、軽すぎて少し動いただけで額当てがズレて顔に落ちてくる。それをどうにかしようと悪戦苦闘するも、どうも上手くいかない。
本人も時々忘れてるが、ワタリは普通に女の子なのでやるなら可愛く着こなしたいので、朝から洗面所を占拠している訳だ。
そんな時に今日は遅番のコクマルがそろそろと二階から降りてきた。
いつも結っている母譲りの綺麗な赤髪を下ろして、浴衣も派手に着崩した完全寝巻きスタイル。
裾の割れ目から下着がちょろちょろ見えて居るのでワタリは目線に困る。兄妹とはいえ、ワタリは普通に思春期なので遠慮してほしい。
「おはよう、兄さん」
「はよう、ワタリ。お前、朝から洗面所でなにしてるんだよ」
「女の子が朝の洗面所でやる事って言ったら身支度でしょ」
「いや、団子にしてるから珍しくなくてな」
「ああ、額当て結ぼうとしてるんだけどズレるから、お団子にして引っ掛けようかなって」
「お前の髪の毛サラサラだもんな」
微笑ましいものを見る目でポンポンっと妹の頭を撫でると、コクマルはワタリのお団子に解く。ついでに額当ても取って、髪を全部下ろした姿にした。
何するの!と怒ろうとしたが、コクマルは手先が器用で下手をしたら自分よりの髪を結うのが上手いかもしれないことを思い出してワタリは大人しくなる。
と、思ったら何もせずにワタリをどかして自分の顔を洗い始めた。
「えっ、くくらないの!?」
「括ってもいいけど、お前はそのままで綺麗なんだし。それに長い髪を靡かせながら戦うのはロマンだしな」
「いや、だって動きにくいじゃん。絡まっちゃうし……」
「嫌だったら後から切ればいい話だろ」
「じゃあ額当てどうするの?」
「頭以外につけたら解決だろ」
「確かに」
確かに。
漠然と額当ては額につけるものだと思っていたけど、確かに班決めの教室のときは皆んな意外と自由な所につけてたな。昨日は額当てをつけると言う習慣が無さすぎてうっかりつけ忘れて行ってたし。
その事をコクマルに言えば、「お前なぁ……」と呆れた表情をした後にデコピンをした。
「まぁ額当ての話はいいや。そういやお前の担当上忍って誰なんだ?」
「んーカカシ先生って人」
瞬間、コクマルの思考が止まった。
思い出すのはかつてあの人に課された地獄の修行と、可愛い妹を育てると言う最重要任務を全く考慮せずに振り与えられる仕事の数々。
なぜよりにもよって、何人もいる上忍師の中でなぜよりにもよってあの人を引き当ててしまうのか。いや、ワンチャン別人の可能性も………。
「片目隠しててね、髪の毛も箒みたいに立ってるの。不審し、じゃかなかった、だいぶ怪しい感じだけど上忍だし、大丈夫だとは思うんだけど……」
「(絶対、例のあの人じゃん……)」
コクマルは顔を覆った。
なぜ、何人もいる上忍師の中でなぜよりにもよってあの人を引き当ててしまうのか。いや、別にワタリが選んだわけでなく、偶々あの人の班に振り分けられただけなのだが………。
それにしてもだ。
「兄さん、どうしたの?洗顔目に入っちゃった?」
「アー……うん。そんな感じ」
お前の行く末を案じてましたと、正直に言うには気が引けた。
「まぁ、あれだ……がんばれ」
「うん?がんばる」
[中央寄せ]⌘[/中央寄せ]
「ここにスズが3つある。___これをオレから昼までに奪い取ることが課題だ」
「(拝啓、兄さんへ。もう頑張れません)」
さっきの励ましはどこへやら、ワタリは早速諦めモードでアカデミーに戻る決意を固めていた。
いやでもこの試験落ちたら本家が嫌味を言ってくることは確実。ただですら兄さんに迷惑かけて居るんだし、本家に嫌味言われたら胃に穴空きそうだしな。
大変不本意ではあるが、鈴を奪う策を巡らす。
とは言ってもワタリはシカマルほど頭がいいわけではないし、鈴を取るだけといっても相手は上忍。おいそれと挑んで勝てる相手ではない。
鈴は一ヶ所に纏めてぶら下がってるけど、偽物って可能性もある。
その可能性を考慮してもしなくても、一番確実なのは全員で取りにいくことだ。
誰が1人が落ちるのかなんてその後決めても遅くない。
落ちるのは嫌だけど、アカデミーを卒業したって経歴は残るんだし、教育を受けた女子ってこで貰い手なら幾らかある………っと、思いたい。だけども、ワタリが普通の女の子として生きるにはいささか不要なものが背中にあった。
「(忍で居る分には役立つんだけどね……)」
カァーっと、林の側で鴉が鳴いて、ばさりと羽ばたいた。
カカシの殺気に敏感になったサクラがビクッと震えた後、先生が言った。
「よーい…始め!!」
まずは作成会議でもと、言おうとした時には既に全員が散り散りに隠れてしまった。ナルトも、サクラも、サスケもだ。
ワタリも思わず反射で隠れたけど、完全に出遅れたと思った感じた。
今から話し合うにも全員バラバラ。ある程度位置を特定出来る方法を探るにはまず相手側が何か物音を出してくれないと難しい……っと、思っていた時期がありました。
「カァーカァー」
「(そうだ、色葉がいる!)」
困った時こそ可愛い子の出番。
おいでっと、手招きすれば烏我家以外の鴉達もやってきて、ワタリを囲む。360度、どこを見ても可愛い鴉達が囲んでいる。
ある意味ハーレムだな、っと笑いながら鴉達に人探しを頼む。
彼らのリーダーにはしっかり訓練された色葉を置いて、指示を仰げるようにした。
第七班班員捜索部隊隊長よろしくねと、冗談混じりに言えば色葉ちょっぴり誇らしげに胸を張った。可愛い。
色葉が人泣きした後、空中を旋回。その後に続くように他の鴉達もくるりと一周回って森へ散って行った。
「カァー!カァー!カァー!」
「わっ、あの子も見つけてくれたんだ。ありがとうね」
よしよしっと、肩に止まった鴉を撫でなでる。
そうするともっと撫でてとばかりに頭を押しつけてくるが、後ろの色葉の視線が厳しいのでほどほどで辞める。
さて、少し現状を整理しようか。
第七班班員捜索部隊のおかげで捜索はかなり順調に進んでいる。
サクラはワタリが身を隠していた場所の近くに落ちていたので鴉達を使って探すほどでもなかったし、カカシとサスケは現在交戦中。当然と言えば当然だが、カカシの方が優勢らしい。
どちらも色葉との視覚共有でしっかり確認したので間違いはない。
サクラは気絶していたので起こそうとしたが、何か術を使ったのだろう。話しかけても揺すっても起きる気配がなかった。
女子を地べたにそのまま放っておくわけにもいかないので、体を起こして木にもたれかけさせて上着をかけておいた。一応鴉も配置しておいたので何かあればすぐに知ることが出来る。
まぁ、カカシが既に気絶している相手に追い討ちをかけるとは思わないが、念のためだ。
ワタリは交戦中の二人に飛び入るのは無謀と判断して、カカシのいないナルトと先に合流することを決めた。
ナルトを見つけた鴉に案内役を頼み、ワタリの頭上を飛ばせている片目だけ色葉と視覚を共有する。(※分かりやすくいうなら、ゲーム一人称視点と三人称視点を合わせた画面でプレイする感じ。ぶっちゃけめっちゃ動かしにくいし酔うけど、敵に囲まれてないかを見るには適している。)
左右で視点が違うというのは中々なれないが、ここは鳥使いの烏我家出身ならではの訓練を幼少期から積んできているだけあって慣れたもんだ。
ぴょんぴょんっと、身軽に木々をすり抜けて目的地を目指す。
そしてそこにつくと鴉は空中を二、三回旋回してナルトの頭上に止まった。完全に舐めているときの動作だ。
「うおーっ!!カラス!?!?あっちいけっ!!オレってば、メシなんかもってな___」
「あんまり乱暴にしないであげて」
「ワタリ!?」
「うん、そうだよ。カカシ先生の変化の術じゃないから安心してね。ごめんねその子、私の友達だから優しくしてあげて欲しいな」
「カ、カラスが?オレが言うのもなんだけど、ワタリってばそんなに友達がいないんだってばさ……?」
「失礼な人間の友達もちゃんといるよ。それに、この子は君を探すのに協力してくれた特別な鴉ちゃんなんだよ。お礼ぐらいいってあげなよ」
「カァー!カァーッ!!」
「ほらほら、感謝しろっていってるよ」
初手でカカシとの力の差を見せつけられたというのに、めげずに一人で挑んだ結果惨敗して木に吊るされているナルトは、若干不服そうである。頭の上の鴉は胸を張ってふんぞり返っているので、彼からしたら余計になんだろう。
まぁ、そんなところも可愛いんだけどね。
おいでっと手招きをすればナルトの頭から降りて、今度はワタリの腕に止まった。
「まぁいいや。それよりどうするの?」
「いや、助けてくれってばよ!?」
「あははそれは勿論。だけど、作戦会議とかしなくてもいいの?」
「作戦会議ィ?もしかしてワタリ、全員で鈴を狙うつもりだってばよ?」
「そりゃね。一人で出来ないなら、全員でやる方が確率は上がるでしょ」
「悪いけど、それは御免だってばよ!こんな演習くらい一人で出来なくっちゃ、火影になんかなれねェんだ……!それに、サクラちゃんのことも気になるしよ」
「それは残念」
袖に仕込んでいた苦無を投げて、ナルトが吊るされていたロープを切る。
そうすると見事にバラりと解けてナルトは元気に飛び降りた。
ワタリは協力できないなら仕方ないので、肩に止まっていた鴉にサクラのところまでナルトを案内するのを頼んだ。
ナルトは鴉が案内できるのかと半信半疑だったが、なんだかんだ言いつつついて行った。
「([漢字]里最強の忍者[/漢字][ふりがな]火影[/ふりがな]になるって言ってる割には簡単に人を信じるよね、君。まぁ、私も騙すつもはないけどさ)」
忍びたる者、何事も常に疑って掛かれとアカデミーでも家でも教えられてきたワタリ。
チームメイトや上司だからと言って、簡単に信じることは出来ない。だって、容易に信じてしまえばしまうほど、失う物は大きくなるとワタリは___烏我兄妹は知っている。
ナルトを見送った後、ワタリが向かったのはサスケの所だ。
「……生首かと思った」
「うるせぇ」
だけども首から下は地面に埋まって、首だけ出した状態というのは生で見ると中々インパクトがある。顔だけ出して、息を出来るようにしているのは温情か手加減か。
まぁどっちもだろうなぁ。っと、遠方から自分の様子を伺うカカシを、鴉の視界越しに見つめるワタリ。
「出るの、手伝った方がいい?」
「お前の手は借りねーよ」
「そっか」
「……それより、お前はスズ狙わねぇのかよ」
「この子達に先生探してもらってるところ。その途中で君を見つけたって言ったから、様子見にきたの」
ばさりっと、羽を震わせて存在をアピールする鴉達。
サスケの黒曜石のような目が、周りを飛んだり跳ねたりする鳥達を射抜いた。
「やけにカラスが多いと思ったら、お前の手下かよ」
「手下って……」
お友達と言ってよ。
と、ワタリが言えば、サスケはあからさまに「胡散臭ェ」という顔をした。
「助けは要らないみたいだし、私は行くね」
「そうかよ」
踵をくるりと返して、カカシのいる方向に進もうとすると、色葉が飛んできた。
二、三回サスケの上で回りながら「カァー、カァー!」と叫んで何かを伝えようとしている。サスケにはさっぱり分からないが、ワタリには伝わったらしい。
「へぇ。よかってね、サスケくんサクラちゃん来るってさ」
それだけ言ってワタリは瞬身の術で姿を消した。
これ便利な術だよなぁっと、思いながらカカシのいる場所へ案内を頼みながら。木々を縫うように枝を足場に走って、飛んで。
そして、上から見下げる形でカカシと対面を果たす。
「お前で最後だな」
さーて、どう戦おうか。
洗面所の前で貰ったばかりの額当てを結ぼうとがんばるが、一向に上手くいかない。
額当ては軽い金属で出来ているのけど、軽すぎて少し動いただけで額当てがズレて顔に落ちてくる。それをどうにかしようと悪戦苦闘するも、どうも上手くいかない。
本人も時々忘れてるが、ワタリは普通に女の子なのでやるなら可愛く着こなしたいので、朝から洗面所を占拠している訳だ。
そんな時に今日は遅番のコクマルがそろそろと二階から降りてきた。
いつも結っている母譲りの綺麗な赤髪を下ろして、浴衣も派手に着崩した完全寝巻きスタイル。
裾の割れ目から下着がちょろちょろ見えて居るのでワタリは目線に困る。兄妹とはいえ、ワタリは普通に思春期なので遠慮してほしい。
「おはよう、兄さん」
「はよう、ワタリ。お前、朝から洗面所でなにしてるんだよ」
「女の子が朝の洗面所でやる事って言ったら身支度でしょ」
「いや、団子にしてるから珍しくなくてな」
「ああ、額当て結ぼうとしてるんだけどズレるから、お団子にして引っ掛けようかなって」
「お前の髪の毛サラサラだもんな」
微笑ましいものを見る目でポンポンっと妹の頭を撫でると、コクマルはワタリのお団子に解く。ついでに額当ても取って、髪を全部下ろした姿にした。
何するの!と怒ろうとしたが、コクマルは手先が器用で下手をしたら自分よりの髪を結うのが上手いかもしれないことを思い出してワタリは大人しくなる。
と、思ったら何もせずにワタリをどかして自分の顔を洗い始めた。
「えっ、くくらないの!?」
「括ってもいいけど、お前はそのままで綺麗なんだし。それに長い髪を靡かせながら戦うのはロマンだしな」
「いや、だって動きにくいじゃん。絡まっちゃうし……」
「嫌だったら後から切ればいい話だろ」
「じゃあ額当てどうするの?」
「頭以外につけたら解決だろ」
「確かに」
確かに。
漠然と額当ては額につけるものだと思っていたけど、確かに班決めの教室のときは皆んな意外と自由な所につけてたな。昨日は額当てをつけると言う習慣が無さすぎてうっかりつけ忘れて行ってたし。
その事をコクマルに言えば、「お前なぁ……」と呆れた表情をした後にデコピンをした。
「まぁ額当ての話はいいや。そういやお前の担当上忍って誰なんだ?」
「んーカカシ先生って人」
瞬間、コクマルの思考が止まった。
思い出すのはかつてあの人に課された地獄の修行と、可愛い妹を育てると言う最重要任務を全く考慮せずに振り与えられる仕事の数々。
なぜよりにもよって、何人もいる上忍師の中でなぜよりにもよってあの人を引き当ててしまうのか。いや、ワンチャン別人の可能性も………。
「片目隠しててね、髪の毛も箒みたいに立ってるの。不審し、じゃかなかった、だいぶ怪しい感じだけど上忍だし、大丈夫だとは思うんだけど……」
「(絶対、例のあの人じゃん……)」
コクマルは顔を覆った。
なぜ、何人もいる上忍師の中でなぜよりにもよってあの人を引き当ててしまうのか。いや、別にワタリが選んだわけでなく、偶々あの人の班に振り分けられただけなのだが………。
それにしてもだ。
「兄さん、どうしたの?洗顔目に入っちゃった?」
「アー……うん。そんな感じ」
お前の行く末を案じてましたと、正直に言うには気が引けた。
「まぁ、あれだ……がんばれ」
「うん?がんばる」
[中央寄せ]⌘[/中央寄せ]
「ここにスズが3つある。___これをオレから昼までに奪い取ることが課題だ」
「(拝啓、兄さんへ。もう頑張れません)」
さっきの励ましはどこへやら、ワタリは早速諦めモードでアカデミーに戻る決意を固めていた。
いやでもこの試験落ちたら本家が嫌味を言ってくることは確実。ただですら兄さんに迷惑かけて居るんだし、本家に嫌味言われたら胃に穴空きそうだしな。
大変不本意ではあるが、鈴を奪う策を巡らす。
とは言ってもワタリはシカマルほど頭がいいわけではないし、鈴を取るだけといっても相手は上忍。おいそれと挑んで勝てる相手ではない。
鈴は一ヶ所に纏めてぶら下がってるけど、偽物って可能性もある。
その可能性を考慮してもしなくても、一番確実なのは全員で取りにいくことだ。
誰が1人が落ちるのかなんてその後決めても遅くない。
落ちるのは嫌だけど、アカデミーを卒業したって経歴は残るんだし、教育を受けた女子ってこで貰い手なら幾らかある………っと、思いたい。だけども、ワタリが普通の女の子として生きるにはいささか不要なものが背中にあった。
「(忍で居る分には役立つんだけどね……)」
カァーっと、林の側で鴉が鳴いて、ばさりと羽ばたいた。
カカシの殺気に敏感になったサクラがビクッと震えた後、先生が言った。
「よーい…始め!!」
まずは作成会議でもと、言おうとした時には既に全員が散り散りに隠れてしまった。ナルトも、サクラも、サスケもだ。
ワタリも思わず反射で隠れたけど、完全に出遅れたと思った感じた。
今から話し合うにも全員バラバラ。ある程度位置を特定出来る方法を探るにはまず相手側が何か物音を出してくれないと難しい……っと、思っていた時期がありました。
「カァーカァー」
「(そうだ、色葉がいる!)」
困った時こそ可愛い子の出番。
おいでっと、手招きすれば烏我家以外の鴉達もやってきて、ワタリを囲む。360度、どこを見ても可愛い鴉達が囲んでいる。
ある意味ハーレムだな、っと笑いながら鴉達に人探しを頼む。
彼らのリーダーにはしっかり訓練された色葉を置いて、指示を仰げるようにした。
第七班班員捜索部隊隊長よろしくねと、冗談混じりに言えば色葉ちょっぴり誇らしげに胸を張った。可愛い。
色葉が人泣きした後、空中を旋回。その後に続くように他の鴉達もくるりと一周回って森へ散って行った。
「カァー!カァー!カァー!」
「わっ、あの子も見つけてくれたんだ。ありがとうね」
よしよしっと、肩に止まった鴉を撫でなでる。
そうするともっと撫でてとばかりに頭を押しつけてくるが、後ろの色葉の視線が厳しいのでほどほどで辞める。
さて、少し現状を整理しようか。
第七班班員捜索部隊のおかげで捜索はかなり順調に進んでいる。
サクラはワタリが身を隠していた場所の近くに落ちていたので鴉達を使って探すほどでもなかったし、カカシとサスケは現在交戦中。当然と言えば当然だが、カカシの方が優勢らしい。
どちらも色葉との視覚共有でしっかり確認したので間違いはない。
サクラは気絶していたので起こそうとしたが、何か術を使ったのだろう。話しかけても揺すっても起きる気配がなかった。
女子を地べたにそのまま放っておくわけにもいかないので、体を起こして木にもたれかけさせて上着をかけておいた。一応鴉も配置しておいたので何かあればすぐに知ることが出来る。
まぁ、カカシが既に気絶している相手に追い討ちをかけるとは思わないが、念のためだ。
ワタリは交戦中の二人に飛び入るのは無謀と判断して、カカシのいないナルトと先に合流することを決めた。
ナルトを見つけた鴉に案内役を頼み、ワタリの頭上を飛ばせている片目だけ色葉と視覚を共有する。(※分かりやすくいうなら、ゲーム一人称視点と三人称視点を合わせた画面でプレイする感じ。ぶっちゃけめっちゃ動かしにくいし酔うけど、敵に囲まれてないかを見るには適している。)
左右で視点が違うというのは中々なれないが、ここは鳥使いの烏我家出身ならではの訓練を幼少期から積んできているだけあって慣れたもんだ。
ぴょんぴょんっと、身軽に木々をすり抜けて目的地を目指す。
そしてそこにつくと鴉は空中を二、三回旋回してナルトの頭上に止まった。完全に舐めているときの動作だ。
「うおーっ!!カラス!?!?あっちいけっ!!オレってば、メシなんかもってな___」
「あんまり乱暴にしないであげて」
「ワタリ!?」
「うん、そうだよ。カカシ先生の変化の術じゃないから安心してね。ごめんねその子、私の友達だから優しくしてあげて欲しいな」
「カ、カラスが?オレが言うのもなんだけど、ワタリってばそんなに友達がいないんだってばさ……?」
「失礼な人間の友達もちゃんといるよ。それに、この子は君を探すのに協力してくれた特別な鴉ちゃんなんだよ。お礼ぐらいいってあげなよ」
「カァー!カァーッ!!」
「ほらほら、感謝しろっていってるよ」
初手でカカシとの力の差を見せつけられたというのに、めげずに一人で挑んだ結果惨敗して木に吊るされているナルトは、若干不服そうである。頭の上の鴉は胸を張ってふんぞり返っているので、彼からしたら余計になんだろう。
まぁ、そんなところも可愛いんだけどね。
おいでっと手招きをすればナルトの頭から降りて、今度はワタリの腕に止まった。
「まぁいいや。それよりどうするの?」
「いや、助けてくれってばよ!?」
「あははそれは勿論。だけど、作戦会議とかしなくてもいいの?」
「作戦会議ィ?もしかしてワタリ、全員で鈴を狙うつもりだってばよ?」
「そりゃね。一人で出来ないなら、全員でやる方が確率は上がるでしょ」
「悪いけど、それは御免だってばよ!こんな演習くらい一人で出来なくっちゃ、火影になんかなれねェんだ……!それに、サクラちゃんのことも気になるしよ」
「それは残念」
袖に仕込んでいた苦無を投げて、ナルトが吊るされていたロープを切る。
そうすると見事にバラりと解けてナルトは元気に飛び降りた。
ワタリは協力できないなら仕方ないので、肩に止まっていた鴉にサクラのところまでナルトを案内するのを頼んだ。
ナルトは鴉が案内できるのかと半信半疑だったが、なんだかんだ言いつつついて行った。
「([漢字]里最強の忍者[/漢字][ふりがな]火影[/ふりがな]になるって言ってる割には簡単に人を信じるよね、君。まぁ、私も騙すつもはないけどさ)」
忍びたる者、何事も常に疑って掛かれとアカデミーでも家でも教えられてきたワタリ。
チームメイトや上司だからと言って、簡単に信じることは出来ない。だって、容易に信じてしまえばしまうほど、失う物は大きくなるとワタリは___烏我兄妹は知っている。
ナルトを見送った後、ワタリが向かったのはサスケの所だ。
「……生首かと思った」
「うるせぇ」
だけども首から下は地面に埋まって、首だけ出した状態というのは生で見ると中々インパクトがある。顔だけ出して、息を出来るようにしているのは温情か手加減か。
まぁどっちもだろうなぁ。っと、遠方から自分の様子を伺うカカシを、鴉の視界越しに見つめるワタリ。
「出るの、手伝った方がいい?」
「お前の手は借りねーよ」
「そっか」
「……それより、お前はスズ狙わねぇのかよ」
「この子達に先生探してもらってるところ。その途中で君を見つけたって言ったから、様子見にきたの」
ばさりっと、羽を震わせて存在をアピールする鴉達。
サスケの黒曜石のような目が、周りを飛んだり跳ねたりする鳥達を射抜いた。
「やけにカラスが多いと思ったら、お前の手下かよ」
「手下って……」
お友達と言ってよ。
と、ワタリが言えば、サスケはあからさまに「胡散臭ェ」という顔をした。
「助けは要らないみたいだし、私は行くね」
「そうかよ」
踵をくるりと返して、カカシのいる方向に進もうとすると、色葉が飛んできた。
二、三回サスケの上で回りながら「カァー、カァー!」と叫んで何かを伝えようとしている。サスケにはさっぱり分からないが、ワタリには伝わったらしい。
「へぇ。よかってね、サスケくんサクラちゃん来るってさ」
それだけ言ってワタリは瞬身の術で姿を消した。
これ便利な術だよなぁっと、思いながらカカシのいる場所へ案内を頼みながら。木々を縫うように枝を足場に走って、飛んで。
そして、上から見下げる形でカカシと対面を果たす。
「お前で最後だな」
さーて、どう戦おうか。