「いくつか聞いときたいことがあるんだけど……ウォっ!」
カカシがマス越しに口を開いたら瞬間、腰の鈴目掛けて手裏剣が飛んだ。
今から戦うって言うのに普通に話しかけてくるのは本当に余裕があるからなんだろうけど、あいにく様、ワタリにはそんな物は存在しない。
相手が誰であろうがガンガン攻めるし、容赦なんてものははなっから存在しない。
数日前までアカデミー生だったワタリが勝てる相手ではないけど、だからこそだ。
負け確実とわかっていても戦って、“なんとかしようとした”という実績が欲しい。つまるところ、テストでいう部分点を貰いたいという、姑息な発想。
「せっかちだねぇ。そんなに鈴欲しいの?」
「まぁ、忍になれるかなれないかが掛かってるので」
答えつつも攻撃の手は一切緩めない。
なのにカカシは手裏剣を軽く避けてるし、小説を捲る手を止めない。
明らか舐められてるけど、それ自体は別にムカつかない。むしろ、感謝すら覚える。
だ強面で有名な人も子供の前ではだらしない笑顔を向けるように、格下相手なら普段は絶対にしない事をやってくれる。それは隙を見せると言う事。
そこを突けば、勝つことは部分点をもらえるかも………!
「そんで質問の続きだけど、なんでナルトは誘ったのにサスケやサクラは誘わなかったんだ?」
「ただの気まぐれですよ」
一番協力してくれそうなナルトに断られて、サクラは気絶してるし、サスケは言わずもかな。協力しようよと言って、素直にやってくれる性格ではなさそうだし、ワタリもそんな性格の子を引っ張れるようなタイプじゃない。
出来るなら協力したいけど、出来ないなら無理にやる必要はない。
たとえ、無理やりやって連携が取れなくて隙が生まれるってだけなら、本当にやる意味がないから放置した。それだけ。
「ホントにそれだけか?」
カカシが本から目線を上げて、ワタリを見つめた。
確実に攻撃を仕掛けてくる合図だったので、慌てて後ろに飛び退くが、既に遅かった。
「もっと他の理由があるんじゃないの?_____たとえば、裏切られるのが怖いとか」
後ろからカカシの声が聞こえてきたその瞬間、ワタリの体は空を舞う。
腹に伝わった衝撃と、僅かに上がったカカシの足から蹴られたことが分かった。なんとか空中で体制を整えて予め糸を通していた苦無を飛ばす。
当然のように避けられるが、それは想定内。
ワタリの狙いはカカシに苦無を当てることではなく地面に着地しないことなので、ターザンよろしく糸を手綱に離れた木の枝に着地する。
そして。繋がる先が無くなった糸がワタリの手の中でたらりと垂れた。
カカシも狙いに気づいていたから、落とすつもりで切ったんだろう。あと数秒落ちてたら確実に墜落していた。
拳に力を入れたのは、地面に落ちてしまうことへの恐怖じゃない。
そんなの何度も経験してきた。
拳に力を入れたのは、カカシに本心を言い当てられたからだ。
人を信じられない醜い心を見破られたのが怖かった。
「あはは、バレちゃいました?」
だからと言って、それを表に出したらいけない。
弱みになってしまう所は、硬い殻で包んで。敵にも味方にも、誰にも見せたらいけない。だって、弱い自分が周りにバレたら、苦労するのは兄さんなんだ。
もうこれ以上あの人に迷惑かけるわけにはいかない。
だから、にぃっと得意の上っ面の作り笑いを浮かべる。
「隠してたつもりなんですけど……まぁバレちゃったら仕方ないか」
「……」
「そうですよ。私はほとんど話したことのない同級生をそう簡単に信用できるほど単純じゃないし、信じた挙句の裏切りを許せるほど懐が深いわけじゃない」
だから、いっそのこと人を信じないのも手ではないかと。
誰かに裏切られても傷つくぐらいなら、はなから誰も信じない方がマシだと、思ったんですよ。
十年そこらしか生きてない小娘の浅い考えで、どう考えても人として問題があるのは自覚しているが、この考えが自分を守る方法だった。
「……似てるね」
「えっ」
ボソリと呟かれた声の後、またもや後ろから蹴りが飛んでくる。
早々に同じ手は喰らうわけにも行かないので避けて次の木へと飛び移り、その衝撃でしなる枝を利用して勢いをつけたままカカシに蹴りを入れる。
が、軽くいなされてしまう。内心舌打ちをするワタリをお構いなしにカカシは印を結ぶ。
「風遁・烈旋風」
口から吐き出された暴風が、周りの木の枝や葉っぱも巻き込んでワタリを地面へ叩きつけた。
空中で揉みくちゃにされながらもなんとか体制を整えたので、衝撃は減ったが、着地がうつ伏せになってしまったので痛みが全身を走った。
そして、振り向く間もなく腕を背中に組まれがっつり固定される。
「はい、捕まえた」
「まだ……、まだ終わってない!」
瞬間、カカシの目の前に黒い羽が広がった。
僕樹で塗りつぶされたような、でもしっかりと光沢のある艶やかな黒い羽。もちろん、これはワタリの鴉たちのものじゃない。
これは_____
「[漢字]鴉翼[/漢字][ふりがな]あよく[/ふりがな]っ!!」
「よくご存知、でっ!」
ワタリの背中から生えた大きな黒い翼。
広げられた翼はカカシの視界を黒で占領する。思わず距離を取ったら、ワタリはするっとカカシの拘束を抜け出してしまう。
バサリと音を立てて羽を振るわせ、飛んだ。
空はワタリが取った、そう思ったときに無機質な音があたり一体に響いた。
ジリリリリリリ!!
それは昼を告げる音で、試験終了を知らせる音でもあった。
[中央寄せ]⌘[/中央寄せ]
「……そう。4人とも、忍者をやめろ!!」
本格的に言い訳考えないといけなくなってきた。
思い浮かぶのは幼少期お世話()になった宗家の奥様の嫌味と折檻だ。たぶん、クロコの時間を奪っておきながら下忍にすらなれないとは何事だ!とか何とか言うんだろう。
このままニートになるのは流石に兄に申し訳ないので一般職で働こう。
ドーナツの穴をくり抜く仕事とかないかな………。虚無感に浸る仕事をしたい。
カカシの話を虚無虚無プリンで聞き流すワタリ。
途中、カカシの言葉に噛みついたサスケが抑えられて、それを見て叫んだサクラの声で現実に引き戻された。
「お前ら忍者なめてんのか?あ!?何の為に班ごとのチームに分けて演習やってると思ってる」
「え!?……どういうこと?」
スズは3つしかないのにチームワークどころか仲間割れだ、とサクラが正論をぶつける。
正直、ワタリもそう思うが、さっきカカシがなぜ皆んなを誘わなかったのかと聞いてきたことを鑑みるに、カカシが求めていたのはチームワークとか、協力しあうとか。
そう言うのを求めているんだろうな、っと一人答えを考えるワタリ。
「当たり前だ!これはわざと仲間割れするよう仕組んだ試験だ」
「え!?」
この状況下でも自分の利害関係なくチームワークを優先出来るのが合格の基準。そんな試験を、他人を信じることが出来ない自分では到底出来ないことだ。
「それなのにお前らときたら………。サクラ、お前は目の前のナルトじゃなくどこに居るのかも分からないサスケのことばかり。ナルト、お前は一人で独走するだけ。サスケ、お前は三人を足手まといだと決めつけ個人プレイ」
鴉で見てたけど、確かにそうだった。否定はできない。
「そしてワタリ!お前は利害損得ばっか考えて人を信用しなさすぎる!」
それも否定出来ない。
唇を結ぶワタリと3人にカカシはチームワークの大切さをといた。
チームワークを乱す者は仲間を危険に晒すことになる……と。自分のせいで誰かの命が危なくなるのは嫌だ。でも、簡単に人を信用出来ない。
「(そう考えると、私は木ノ葉の忍に向いてなさすぎる………)」
カカシの説教が終わった後、彼は3つのお弁当を残して消えていった。
言葉こそは厳しいが、カカシは正しい。言い換えたら、忍者になる資格もなく適正もない自分は辞めろってことだ。
午後からもっと厳しい演習があると言っていたが、ワタリは全部諦めてハローワークに行くつもりだ。流石にニートは嫌。
でも、みんなは違う。
カカシを一泡吹かせるつもり満々で、野望があると言っているサスケは絶対残るし、サスケが居るなら咲良も居るだろう。
そんなやる気のナルトが、空腹で過酷な演習に挑むのは可哀想だと、自己満足でもワタリはそう思った。
「はい、どうぞ」
「……………………えっ?」
縛られたナルトが驚いた顔をした。
だから、言葉を続けて弁当を押し付けた。
「うっかり朝ごはん食べてきちゃったから、お腹減ってないんだよね。だから君にあげる」
“あげる”なんて、自分が使うには烏滸がましい言葉だと思った。でも、見栄っ張りな自分はそれ以外の言葉を使おうとしなかったのだ。
「ちょ…ちょっとワタリ、さっき先生が!!」
「大丈夫、先生は近くに居ないよ。昼からは鈴、取りに行くんでしょ?ならお腹満たしておいて困ることはないよ」
ねー。っといえば、近くの木に泊まっていた色葉に同意を求めたら「カー」っと鳴いた。
自分は忍者やめる気満々なので他の子の邪魔をするつもりはない。
ワタリの思わぬ行動に目を剥いた二人だが、手元の弁当に視線を落とした。そして、ナルトにお弁当を差し出すサクラとサスケ。
3人の思わぬ行動に感動しているような表情を浮かべたナルトだが、丸太に縛られている彼は自分でそれを食べることは出来ない。誰が食べさせるのかという雰囲気の中、ワタリが弁当を見てぽろりと自分の考えをこぼした。
「……ねぇ、この弁当に毒が仕込まれてるってことないかな」
「はっ?」
「だって、午後から演習なんでしょ?一応、今は12時で午後の時間に入るわけだし、“もう始まってる”ってパターンも無いわけではないでしょ」
「……確かにな」
「えっ、どうしよう……私もサスケくんもお弁当食べちゃったわよ!?」
「あくまで可能性の話だよ?でも、調べといて損はないね」
早速人間不信を発症させてるワタリの意見にサスケは一理あるという顔でうなずく。
ナルトも固唾を飲んでその様子を見守る。
そんな緊張した雰囲気の中、派手な音がして黙々と白い煙が立ち上る。その向こうに、カカシが現れた。
「お前らぁぁあ!!………………ごーかっく♡」
流れていないはずの関西の血が騒いでズッコケそうになったワタリ。
テンションの差がありすぎでしょっと、文句を言いつつ苦無を太もものポーチに入れ直しながらカカシの言葉を脳内で反芻する。
……ごーかっく。
……ごーかく?合格…………???
つまり、ハロワ行かなくていいって……コトっ!?
「…………忍者は裏の裏を読むべし。忍者の世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる。………けどな!仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ」
忍者に人間性を求めるのか……まぁ、でもこれが木ノ葉の方針なんだろう。
自分とは相性が悪いと分かりながらも成ってしまったら後には引けないので、大人しくこのチームで下忍になることにした。
「これにて演習終わり!全員合格!よーし、第七班は明日より任務開始だ!」
「やったああああってばよ!オレってば忍者!忍者!!」
「カーカー!!カーカー!!」
いつの間にか飛び降りてきた色葉がくるくると頭の上で飛び回る。一緒になって喜んでいるみたいだった。
カカシがマス越しに口を開いたら瞬間、腰の鈴目掛けて手裏剣が飛んだ。
今から戦うって言うのに普通に話しかけてくるのは本当に余裕があるからなんだろうけど、あいにく様、ワタリにはそんな物は存在しない。
相手が誰であろうがガンガン攻めるし、容赦なんてものははなっから存在しない。
数日前までアカデミー生だったワタリが勝てる相手ではないけど、だからこそだ。
負け確実とわかっていても戦って、“なんとかしようとした”という実績が欲しい。つまるところ、テストでいう部分点を貰いたいという、姑息な発想。
「せっかちだねぇ。そんなに鈴欲しいの?」
「まぁ、忍になれるかなれないかが掛かってるので」
答えつつも攻撃の手は一切緩めない。
なのにカカシは手裏剣を軽く避けてるし、小説を捲る手を止めない。
明らか舐められてるけど、それ自体は別にムカつかない。むしろ、感謝すら覚える。
だ強面で有名な人も子供の前ではだらしない笑顔を向けるように、格下相手なら普段は絶対にしない事をやってくれる。それは隙を見せると言う事。
そこを突けば、勝つことは部分点をもらえるかも………!
「そんで質問の続きだけど、なんでナルトは誘ったのにサスケやサクラは誘わなかったんだ?」
「ただの気まぐれですよ」
一番協力してくれそうなナルトに断られて、サクラは気絶してるし、サスケは言わずもかな。協力しようよと言って、素直にやってくれる性格ではなさそうだし、ワタリもそんな性格の子を引っ張れるようなタイプじゃない。
出来るなら協力したいけど、出来ないなら無理にやる必要はない。
たとえ、無理やりやって連携が取れなくて隙が生まれるってだけなら、本当にやる意味がないから放置した。それだけ。
「ホントにそれだけか?」
カカシが本から目線を上げて、ワタリを見つめた。
確実に攻撃を仕掛けてくる合図だったので、慌てて後ろに飛び退くが、既に遅かった。
「もっと他の理由があるんじゃないの?_____たとえば、裏切られるのが怖いとか」
後ろからカカシの声が聞こえてきたその瞬間、ワタリの体は空を舞う。
腹に伝わった衝撃と、僅かに上がったカカシの足から蹴られたことが分かった。なんとか空中で体制を整えて予め糸を通していた苦無を飛ばす。
当然のように避けられるが、それは想定内。
ワタリの狙いはカカシに苦無を当てることではなく地面に着地しないことなので、ターザンよろしく糸を手綱に離れた木の枝に着地する。
そして。繋がる先が無くなった糸がワタリの手の中でたらりと垂れた。
カカシも狙いに気づいていたから、落とすつもりで切ったんだろう。あと数秒落ちてたら確実に墜落していた。
拳に力を入れたのは、地面に落ちてしまうことへの恐怖じゃない。
そんなの何度も経験してきた。
拳に力を入れたのは、カカシに本心を言い当てられたからだ。
人を信じられない醜い心を見破られたのが怖かった。
「あはは、バレちゃいました?」
だからと言って、それを表に出したらいけない。
弱みになってしまう所は、硬い殻で包んで。敵にも味方にも、誰にも見せたらいけない。だって、弱い自分が周りにバレたら、苦労するのは兄さんなんだ。
もうこれ以上あの人に迷惑かけるわけにはいかない。
だから、にぃっと得意の上っ面の作り笑いを浮かべる。
「隠してたつもりなんですけど……まぁバレちゃったら仕方ないか」
「……」
「そうですよ。私はほとんど話したことのない同級生をそう簡単に信用できるほど単純じゃないし、信じた挙句の裏切りを許せるほど懐が深いわけじゃない」
だから、いっそのこと人を信じないのも手ではないかと。
誰かに裏切られても傷つくぐらいなら、はなから誰も信じない方がマシだと、思ったんですよ。
十年そこらしか生きてない小娘の浅い考えで、どう考えても人として問題があるのは自覚しているが、この考えが自分を守る方法だった。
「……似てるね」
「えっ」
ボソリと呟かれた声の後、またもや後ろから蹴りが飛んでくる。
早々に同じ手は喰らうわけにも行かないので避けて次の木へと飛び移り、その衝撃でしなる枝を利用して勢いをつけたままカカシに蹴りを入れる。
が、軽くいなされてしまう。内心舌打ちをするワタリをお構いなしにカカシは印を結ぶ。
「風遁・烈旋風」
口から吐き出された暴風が、周りの木の枝や葉っぱも巻き込んでワタリを地面へ叩きつけた。
空中で揉みくちゃにされながらもなんとか体制を整えたので、衝撃は減ったが、着地がうつ伏せになってしまったので痛みが全身を走った。
そして、振り向く間もなく腕を背中に組まれがっつり固定される。
「はい、捕まえた」
「まだ……、まだ終わってない!」
瞬間、カカシの目の前に黒い羽が広がった。
僕樹で塗りつぶされたような、でもしっかりと光沢のある艶やかな黒い羽。もちろん、これはワタリの鴉たちのものじゃない。
これは_____
「[漢字]鴉翼[/漢字][ふりがな]あよく[/ふりがな]っ!!」
「よくご存知、でっ!」
ワタリの背中から生えた大きな黒い翼。
広げられた翼はカカシの視界を黒で占領する。思わず距離を取ったら、ワタリはするっとカカシの拘束を抜け出してしまう。
バサリと音を立てて羽を振るわせ、飛んだ。
空はワタリが取った、そう思ったときに無機質な音があたり一体に響いた。
ジリリリリリリ!!
それは昼を告げる音で、試験終了を知らせる音でもあった。
[中央寄せ]⌘[/中央寄せ]
「……そう。4人とも、忍者をやめろ!!」
本格的に言い訳考えないといけなくなってきた。
思い浮かぶのは幼少期お世話()になった宗家の奥様の嫌味と折檻だ。たぶん、クロコの時間を奪っておきながら下忍にすらなれないとは何事だ!とか何とか言うんだろう。
このままニートになるのは流石に兄に申し訳ないので一般職で働こう。
ドーナツの穴をくり抜く仕事とかないかな………。虚無感に浸る仕事をしたい。
カカシの話を虚無虚無プリンで聞き流すワタリ。
途中、カカシの言葉に噛みついたサスケが抑えられて、それを見て叫んだサクラの声で現実に引き戻された。
「お前ら忍者なめてんのか?あ!?何の為に班ごとのチームに分けて演習やってると思ってる」
「え!?……どういうこと?」
スズは3つしかないのにチームワークどころか仲間割れだ、とサクラが正論をぶつける。
正直、ワタリもそう思うが、さっきカカシがなぜ皆んなを誘わなかったのかと聞いてきたことを鑑みるに、カカシが求めていたのはチームワークとか、協力しあうとか。
そう言うのを求めているんだろうな、っと一人答えを考えるワタリ。
「当たり前だ!これはわざと仲間割れするよう仕組んだ試験だ」
「え!?」
この状況下でも自分の利害関係なくチームワークを優先出来るのが合格の基準。そんな試験を、他人を信じることが出来ない自分では到底出来ないことだ。
「それなのにお前らときたら………。サクラ、お前は目の前のナルトじゃなくどこに居るのかも分からないサスケのことばかり。ナルト、お前は一人で独走するだけ。サスケ、お前は三人を足手まといだと決めつけ個人プレイ」
鴉で見てたけど、確かにそうだった。否定はできない。
「そしてワタリ!お前は利害損得ばっか考えて人を信用しなさすぎる!」
それも否定出来ない。
唇を結ぶワタリと3人にカカシはチームワークの大切さをといた。
チームワークを乱す者は仲間を危険に晒すことになる……と。自分のせいで誰かの命が危なくなるのは嫌だ。でも、簡単に人を信用出来ない。
「(そう考えると、私は木ノ葉の忍に向いてなさすぎる………)」
カカシの説教が終わった後、彼は3つのお弁当を残して消えていった。
言葉こそは厳しいが、カカシは正しい。言い換えたら、忍者になる資格もなく適正もない自分は辞めろってことだ。
午後からもっと厳しい演習があると言っていたが、ワタリは全部諦めてハローワークに行くつもりだ。流石にニートは嫌。
でも、みんなは違う。
カカシを一泡吹かせるつもり満々で、野望があると言っているサスケは絶対残るし、サスケが居るなら咲良も居るだろう。
そんなやる気のナルトが、空腹で過酷な演習に挑むのは可哀想だと、自己満足でもワタリはそう思った。
「はい、どうぞ」
「……………………えっ?」
縛られたナルトが驚いた顔をした。
だから、言葉を続けて弁当を押し付けた。
「うっかり朝ごはん食べてきちゃったから、お腹減ってないんだよね。だから君にあげる」
“あげる”なんて、自分が使うには烏滸がましい言葉だと思った。でも、見栄っ張りな自分はそれ以外の言葉を使おうとしなかったのだ。
「ちょ…ちょっとワタリ、さっき先生が!!」
「大丈夫、先生は近くに居ないよ。昼からは鈴、取りに行くんでしょ?ならお腹満たしておいて困ることはないよ」
ねー。っといえば、近くの木に泊まっていた色葉に同意を求めたら「カー」っと鳴いた。
自分は忍者やめる気満々なので他の子の邪魔をするつもりはない。
ワタリの思わぬ行動に目を剥いた二人だが、手元の弁当に視線を落とした。そして、ナルトにお弁当を差し出すサクラとサスケ。
3人の思わぬ行動に感動しているような表情を浮かべたナルトだが、丸太に縛られている彼は自分でそれを食べることは出来ない。誰が食べさせるのかという雰囲気の中、ワタリが弁当を見てぽろりと自分の考えをこぼした。
「……ねぇ、この弁当に毒が仕込まれてるってことないかな」
「はっ?」
「だって、午後から演習なんでしょ?一応、今は12時で午後の時間に入るわけだし、“もう始まってる”ってパターンも無いわけではないでしょ」
「……確かにな」
「えっ、どうしよう……私もサスケくんもお弁当食べちゃったわよ!?」
「あくまで可能性の話だよ?でも、調べといて損はないね」
早速人間不信を発症させてるワタリの意見にサスケは一理あるという顔でうなずく。
ナルトも固唾を飲んでその様子を見守る。
そんな緊張した雰囲気の中、派手な音がして黙々と白い煙が立ち上る。その向こうに、カカシが現れた。
「お前らぁぁあ!!………………ごーかっく♡」
流れていないはずの関西の血が騒いでズッコケそうになったワタリ。
テンションの差がありすぎでしょっと、文句を言いつつ苦無を太もものポーチに入れ直しながらカカシの言葉を脳内で反芻する。
……ごーかっく。
……ごーかく?合格…………???
つまり、ハロワ行かなくていいって……コトっ!?
「…………忍者は裏の裏を読むべし。忍者の世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる。………けどな!仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ」
忍者に人間性を求めるのか……まぁ、でもこれが木ノ葉の方針なんだろう。
自分とは相性が悪いと分かりながらも成ってしまったら後には引けないので、大人しくこのチームで下忍になることにした。
「これにて演習終わり!全員合格!よーし、第七班は明日より任務開始だ!」
「やったああああってばよ!オレってば忍者!忍者!!」
「カーカー!!カーカー!!」
いつの間にか飛び降りてきた色葉がくるくると頭の上で飛び回る。一緒になって喜んでいるみたいだった。