【gnsn夢】君と出会う旅
#1
1話 きみと
ふわふわとした布のようなものを被って発光するいきもの。
草のカーペットの上で、膝を抱えている私の周りを漂いながら、一つの方向に行ったり来たり。
それになんとなく愛着が湧いてきて、指を伸ばせばすり寄ってくる。なんだろう、こう……さわれない寒天みたいな感触だ。
「……ふふ、かわいい子だね」
現実逃避にもいい加減にしないといけないのは分かっているが、眼前に広がる光景は今だ信じたくない。
ぶどう畑とファンタジー要素ましましの屋敷と小さな家。
テーマパークって言われたほうがまだ信じられる。
だが、残念かな。私がさっきまでいた日本という国ではこれだけ大規模なぶどう畑はあまり見ないし、なにより肌で感じる空気が、気候から違うと訴えかけてくる。
うーん、どうしたもんかな。
[中央寄せ]∷[/中央寄せ]
「春だねぇ」
「ああ、[漢字]花粉という人類の敵が我が物顔で空中を飛び交う季節[/漢字][ふりがな]春真っ只中[/ふりがな]だな」
外に出るときは薬を飲み、マスクにメガネに帽子。
花粉を落とせるナイロン素材の服で全身を覆う不審者ルックスの幼馴染は完全に花粉を敵としてみているようだった。
副音声に込まれられた怨念がすごい。
壮くんこと、私の幼馴染の柃 壮獅くんは花粉症である。
いつもはアウトドアで、しれっとどこかに行く猫のような壮獅くんだが、春というかスギ花粉が飛び交うこの季節ばっかりは引きこもりだ。
なのに何故完全防御形態で外に出ているかというと、
「はぁ、母さんも花粉症の息子を無理やり外に出すなよ……っハァーグゥシュンッ!!あ゙ークッソ」
柃家の権力者、壮くんママからの命令だ。
壮くんママが地域の組合で氏子をやっている神社まで、今年の春祭りについての書類を渡しに行く。いわく、春休みで暇なんだから行ってこいとのことだったそうだ。
「で、お前はなんでいるわけ?」
「家が気まずいから逃げてきた」
「あー、祐樹さん、受験生だもんなー」
「私の進路もママは不満げだったからねぇ。まぁ、もう決まったかからどうでもいいけど」
子にいい教育を受けさせたいという親心はわかるけど、こっちにも自分のペースってものがある。
いくら[漢字]2回目[/漢字][ふりがな]・・・[/ふりがな]でうまくやれるって言ったって、思春期には悩みが尽きないものだ。
前世、私が立花 彩として誕生する前は進路に悩んですらいなかったからね……。両親とはお互いに無関心すぎたと前世の反省をしております。
そうこうしている間に神社に到着。
あまりにも不審者すぎる壮くんに神主さんも最初は警戒心をあらわにしたけど、マスクを取って誰だか分かったらすぐ笑顔になってお饅頭をくれた。
私も勧められたけど、あんこが苦手で押し切りもらわなかった。
私が壮くんと家族以外の誰かから、絶対に食べ物関連は貰わないのを知っているかれはそれに何も言わず見ているだけ。
壮くんのそういうところ、嫌いじゃないよ。
せっかくだし、お参りしていきなよ。
と、いう神主さんの言葉に頷いてしまったが、ここの神社は小高い丘の上にあり、参拝時には結構急な階段を登る必要がある。
軽く頷いてしまった数分前の自分を恨みつつ、黙って登る。息こそ荒らげないものの、結構キツイ……。
「あ、5円玉は小銭切らしてたんだった。お賽銭って10円でもいいんだっけ?」
「確か10円は語呂合わせで遠縁になるから避ける人が多かった気がする」
「10円しかないから10円で行くわ。縁ぐらい自分で手繰り寄せねぇとな」
「私に聞いた意味ないじゃん」
私もお賽銭のためにおサイフを空けて、中を確かめる。
十円玉3枚、1円玉1枚。
他なし。
「私も5円玉なかった……。うーん、小銭、全部入れるか」
「全部は多くないか?」
「確かにそうだけど、たった31円だよ。それに31は素数でいいじゃん」
「素数は関係ねーだろ」
それがそうでもなよ壮くん。
素数から割り切れない=縁の持続ってことになる。私は特に新しい出会いは求めてないし、家ちょうどいい。
「それにね、壮くんの10円と合わせたら41円になるんだよ」
41円。
「始終(しじゅう)いい縁」ってね。
「おお、確かに」
「45円でもいいけど、素数じゃないし」
「お前のその素数に対するこだわりはなんなの?」
「気分かなぁ」
参道の端を歩いて、拝殿前で一礼。
壮くんが10円を入れて、私が31円を投げ入れてから鈴を鳴らして二礼二拍手一礼。
願い事も特にない……。
して言うなら、一人旅をしたいけど12歳……という外見年齢的に難しい。前と今生きてる歳を合わせれば成人してるけど、そういうことじゃないしなぁ。
拝殿をあとにしてて、階段を降りているち、壮くんがくしゃみを連発していた。
「っは、は……ハァックシュン!!」
「うわ、大丈夫?」
「大丈夫じゃねぇ……花粉の気配が濃すぎる……」
「気配って」
壮くんは本気で言っているらしく、マスク越しでも分かるほど眉をしかめている。
春の空気はやわらかく、遠くでウグイスが鳴いていた。
花粉症の壮くんには地獄の季節でも、私にとっては嫌いじゃない季節だ。
石段を降りきり、鳥居の前まで来る。
さぁ、家に帰ろうかという瞬間————音がなくなった。
比喩でもなんでもなく、鼓膜が破れたように何も聞こえない。
もちろんだが、叩かれた衝撃はないし、鼓膜を破るほどの爆音もなければ、耳が塞がったような異物感もない。
本当に突然、音がなくなった。
一瞬して訪れた強烈な違和感に、反射的に後ろにいるであろう壮くんを見た。
彼も耳に手を当てて、ひどく驚いた顔をしている。
「———————!!」
「ごねん、聞こえないっ!」
自分の声が届いたかも分からないが、とにかく異常事態だと直感できた。
壮くんはマスクとメガネをむしり取ると、いつもよりも大げさに唇を動かして何かを伝えようとする。
_______『逃げろ』
長年の勘から、彼がそう伝ようとしたのがわかった。
だからと言って、従う義理はない。
視界が強い光源を浴びせられたみたいに白むが、関係ない。
はやく、彼の手を。
もうにどと、失いたくない。
前世の壮くんの________いや、“ ”の最後が自然と重なる。
しかし、壮くんの指先が私の指先に触れるよりも早く、あたりは光りに包まれた。
まるで太陽を直接見たいような、目の奥から焼く白い光。
それでも最後まで目を開けて空けて、彼が——柃 壮獅が光に呑み込まれていく様を見た。
「まって、待って……!!」
手を伸ばして、空を掴んだ。
ああ。
ああ、まただ。
まら彼は目の前で彼が消えようとしている。また私届かない場所に行ってしまうのだ
そう思えば、分かっていても手を伸ばさずにはいられなかった。
「おいて、いかないで」
真っ白な視界の中、落ちるような浮かぶような、不思議な浮遊感と共に、意識は眠りに落ちるかのように消えていった。
そして、気づけば私はひとり、草原の中に取り残されていた。
あたりには、壮くんといたはずの神社の鳥居どころか、街すらなくなっていたのだ。
日本ではない、遠くの外国のような土地。
写真集に収められていそうな風景は、まるで夢だ。いやー、草木の匂いや歩く感覚も再現する夢なんて、すごいことこもあるもんだなァー。
……なーんて、現実逃避もしたけれど、もこれが誘拐や拉致といった人為的なものだった場合も考えて周りの情報を集めないと。
「それに、壮くんも探さないと」
近くには見当たらないけど、 私と壮くんは同じ条件下にいたはずだ。
私がここにいるなら壮くんも巻き込まれている可能性が高い。
早く会いたい。
そう願えば、自然と足が速くなるものだろう。
しかし、今の私は体力は前世と違い、ただの12歳だ。慣れない土地を歩き回れば当然バテてしまう。
一応、近くの崖の下に人と住居を見つけたが、これがまた信じられないことに豪邸といってもいい御屋敷だった。
そこに出入りするのはメイド服や燕尾服を着た執事やメイド。他にもいるけど、みんなライトノベルやゲームでよくある村人のような姿。一瞬、テーマパークにでも来たのかと思ったよ。
ぶどう畑を飛回る蝶々はなんか光ってるし、私の常識が見事に通じないので、人里目前にして行くのを躊躇っている。
夕暮れ時の今、火も起こせない私が野宿するのは危険しかなく、あそこに突撃するのは今がいいタイミングだろう。
いや、でもなぁ……っと、ためらっていたその時だ。
ふわふわとした布のようなものを被って発光するいきものが、突然私の前にやってきたのだ。
と、言うわけで冒頭に戻る。
草のカーペットの上で、膝を抱えている私の周りを漂いながら、一つの方向に行ったり来たり。
それになんとなく愛着が湧いてきて、指を伸ばせばすり寄ってくる。なんだろう、こう……さわれない寒天みたいな感触だ。
「……ふふ、かわいい子だね」
現実逃避にもいい加減にしないといけないのは分かっているが、眼前に広がる光景は今だ信じたくない。
ぶどう畑とファンタジー要素ましましの屋敷と小さな家。
テーマパークって言われたほうがまだ信じられる。
だが、残念かな。私がさっきまでいた日本という国ではこれだけ大規模なぶどう畑はあまり見ないし、なにより肌で感じる空気が、気候から違うと訴えかけてくる。
うーん、どうしたもんかな。
[中央寄せ]∷[/中央寄せ]
「春だねぇ」
「ああ、[漢字]花粉という人類の敵が我が物顔で空中を飛び交う季節[/漢字][ふりがな]春真っ只中[/ふりがな]だな」
外に出るときは薬を飲み、マスクにメガネに帽子。
花粉を落とせるナイロン素材の服で全身を覆う不審者ルックスの幼馴染は完全に花粉を敵としてみているようだった。
副音声に込まれられた怨念がすごい。
壮くんこと、私の幼馴染の柃 壮獅くんは花粉症である。
いつもはアウトドアで、しれっとどこかに行く猫のような壮獅くんだが、春というかスギ花粉が飛び交うこの季節ばっかりは引きこもりだ。
なのに何故完全防御形態で外に出ているかというと、
「はぁ、母さんも花粉症の息子を無理やり外に出すなよ……っハァーグゥシュンッ!!あ゙ークッソ」
柃家の権力者、壮くんママからの命令だ。
壮くんママが地域の組合で氏子をやっている神社まで、今年の春祭りについての書類を渡しに行く。いわく、春休みで暇なんだから行ってこいとのことだったそうだ。
「で、お前はなんでいるわけ?」
「家が気まずいから逃げてきた」
「あー、祐樹さん、受験生だもんなー」
「私の進路もママは不満げだったからねぇ。まぁ、もう決まったかからどうでもいいけど」
子にいい教育を受けさせたいという親心はわかるけど、こっちにも自分のペースってものがある。
いくら[漢字]2回目[/漢字][ふりがな]・・・[/ふりがな]でうまくやれるって言ったって、思春期には悩みが尽きないものだ。
前世、私が立花 彩として誕生する前は進路に悩んですらいなかったからね……。両親とはお互いに無関心すぎたと前世の反省をしております。
そうこうしている間に神社に到着。
あまりにも不審者すぎる壮くんに神主さんも最初は警戒心をあらわにしたけど、マスクを取って誰だか分かったらすぐ笑顔になってお饅頭をくれた。
私も勧められたけど、あんこが苦手で押し切りもらわなかった。
私が壮くんと家族以外の誰かから、絶対に食べ物関連は貰わないのを知っているかれはそれに何も言わず見ているだけ。
壮くんのそういうところ、嫌いじゃないよ。
せっかくだし、お参りしていきなよ。
と、いう神主さんの言葉に頷いてしまったが、ここの神社は小高い丘の上にあり、参拝時には結構急な階段を登る必要がある。
軽く頷いてしまった数分前の自分を恨みつつ、黙って登る。息こそ荒らげないものの、結構キツイ……。
「あ、5円玉は小銭切らしてたんだった。お賽銭って10円でもいいんだっけ?」
「確か10円は語呂合わせで遠縁になるから避ける人が多かった気がする」
「10円しかないから10円で行くわ。縁ぐらい自分で手繰り寄せねぇとな」
「私に聞いた意味ないじゃん」
私もお賽銭のためにおサイフを空けて、中を確かめる。
十円玉3枚、1円玉1枚。
他なし。
「私も5円玉なかった……。うーん、小銭、全部入れるか」
「全部は多くないか?」
「確かにそうだけど、たった31円だよ。それに31は素数でいいじゃん」
「素数は関係ねーだろ」
それがそうでもなよ壮くん。
素数から割り切れない=縁の持続ってことになる。私は特に新しい出会いは求めてないし、家ちょうどいい。
「それにね、壮くんの10円と合わせたら41円になるんだよ」
41円。
「始終(しじゅう)いい縁」ってね。
「おお、確かに」
「45円でもいいけど、素数じゃないし」
「お前のその素数に対するこだわりはなんなの?」
「気分かなぁ」
参道の端を歩いて、拝殿前で一礼。
壮くんが10円を入れて、私が31円を投げ入れてから鈴を鳴らして二礼二拍手一礼。
願い事も特にない……。
して言うなら、一人旅をしたいけど12歳……という外見年齢的に難しい。前と今生きてる歳を合わせれば成人してるけど、そういうことじゃないしなぁ。
拝殿をあとにしてて、階段を降りているち、壮くんがくしゃみを連発していた。
「っは、は……ハァックシュン!!」
「うわ、大丈夫?」
「大丈夫じゃねぇ……花粉の気配が濃すぎる……」
「気配って」
壮くんは本気で言っているらしく、マスク越しでも分かるほど眉をしかめている。
春の空気はやわらかく、遠くでウグイスが鳴いていた。
花粉症の壮くんには地獄の季節でも、私にとっては嫌いじゃない季節だ。
石段を降りきり、鳥居の前まで来る。
さぁ、家に帰ろうかという瞬間————音がなくなった。
比喩でもなんでもなく、鼓膜が破れたように何も聞こえない。
もちろんだが、叩かれた衝撃はないし、鼓膜を破るほどの爆音もなければ、耳が塞がったような異物感もない。
本当に突然、音がなくなった。
一瞬して訪れた強烈な違和感に、反射的に後ろにいるであろう壮くんを見た。
彼も耳に手を当てて、ひどく驚いた顔をしている。
「———————!!」
「ごねん、聞こえないっ!」
自分の声が届いたかも分からないが、とにかく異常事態だと直感できた。
壮くんはマスクとメガネをむしり取ると、いつもよりも大げさに唇を動かして何かを伝えようとする。
_______『逃げろ』
長年の勘から、彼がそう伝ようとしたのがわかった。
だからと言って、従う義理はない。
視界が強い光源を浴びせられたみたいに白むが、関係ない。
はやく、彼の手を。
もうにどと、失いたくない。
前世の壮くんの________いや、“ ”の最後が自然と重なる。
しかし、壮くんの指先が私の指先に触れるよりも早く、あたりは光りに包まれた。
まるで太陽を直接見たいような、目の奥から焼く白い光。
それでも最後まで目を開けて空けて、彼が——柃 壮獅が光に呑み込まれていく様を見た。
「まって、待って……!!」
手を伸ばして、空を掴んだ。
ああ。
ああ、まただ。
まら彼は目の前で彼が消えようとしている。また私届かない場所に行ってしまうのだ
そう思えば、分かっていても手を伸ばさずにはいられなかった。
「おいて、いかないで」
真っ白な視界の中、落ちるような浮かぶような、不思議な浮遊感と共に、意識は眠りに落ちるかのように消えていった。
そして、気づけば私はひとり、草原の中に取り残されていた。
あたりには、壮くんといたはずの神社の鳥居どころか、街すらなくなっていたのだ。
日本ではない、遠くの外国のような土地。
写真集に収められていそうな風景は、まるで夢だ。いやー、草木の匂いや歩く感覚も再現する夢なんて、すごいことこもあるもんだなァー。
……なーんて、現実逃避もしたけれど、もこれが誘拐や拉致といった人為的なものだった場合も考えて周りの情報を集めないと。
「それに、壮くんも探さないと」
近くには見当たらないけど、 私と壮くんは同じ条件下にいたはずだ。
私がここにいるなら壮くんも巻き込まれている可能性が高い。
早く会いたい。
そう願えば、自然と足が速くなるものだろう。
しかし、今の私は体力は前世と違い、ただの12歳だ。慣れない土地を歩き回れば当然バテてしまう。
一応、近くの崖の下に人と住居を見つけたが、これがまた信じられないことに豪邸といってもいい御屋敷だった。
そこに出入りするのはメイド服や燕尾服を着た執事やメイド。他にもいるけど、みんなライトノベルやゲームでよくある村人のような姿。一瞬、テーマパークにでも来たのかと思ったよ。
ぶどう畑を飛回る蝶々はなんか光ってるし、私の常識が見事に通じないので、人里目前にして行くのを躊躇っている。
夕暮れ時の今、火も起こせない私が野宿するのは危険しかなく、あそこに突撃するのは今がいいタイミングだろう。
いや、でもなぁ……っと、ためらっていたその時だ。
ふわふわとした布のようなものを被って発光するいきものが、突然私の前にやってきたのだ。
と、言うわけで冒頭に戻る。