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糸師叔母

#3

汝は叔母なりや? 03

 人間とは愚かなものです。特に私。

 某お笑いwebサイトのネタ画像のパリディを脳内でやりながら日が暮れかけている通学路を全力疾走。
 小6までサッカー少女をやっていたお陰で景色はスイスイと流れていって、絶望的に運動音痴だった前世では絶対味わえなかった走る楽しさを見出していた。

 だが、約40分前の私がやらかしたせいで今はそれどころじゃない。
 冴の写真が大量に詰まったスマホ……いや、今はガラケーか。まぁ、兎に角個人情報&甥っ子の写真が詰まった携帯をうっかり学校に忘れて来た。

 それに気づいたのは家に帰って来て、早速ギャンギャン泣いている冴をあやし、天使の寝顔を撮影して新しい待ち受けにしようとポケットに手を入れたときようやく、という具合。

 早く学校に行って携帯を回周しなければ………。
 待受は一度見ればどんな疲れも吹っ飛ぶ冴と噂のとゴンザレスが並んで寝ている画像。

 開かれたら私がかなりの叔母馬鹿ということと、冴が世界にバレちゃう……。
 そりゃ将来は作中では最強プレイヤーと名高い選手になるし、赤ん坊の頃から既に糸師家の美貌の気配がする完璧で究極な甥っ子ですが???私的にはまだ世に出すのは早すぎると思うんだよね。

 いや、今から出しても全然いいんだけどさぁ、叔母としてはまだもうちょっと今の天使期間を楽しんで独占したいというかぁうにゃうにゃ……。


 なんやかんやで学校に到着。

 秋から冬になっていって日が落ちるのも早くなってきているのでクラブも委員会も関係なく「はよ帰れや」と急かされて学校の門が閉まるので、最後まで残っていた生徒が校門から出て来ている。

 クラスメイトが何人か居たけど挨拶する時間がマジで時間ない。甥っ子の世界デビューが掛かってるんだ、道を開けてくれ……!


「糸師さん、ちょっといい?」


 おいおいおいおい、全然空気読まねぇなぁ!!見てわからんのか?今めっちゃ時間との勝負してるじゃん!!

 なーんて言えるわけもないし、人には逆らえないタイプなので、足を止めて振り向く。

 そこに居た人物のはよく言えばボリューミーな、悪く言えばモサッとしている髪の太眉くん。えっと、確か私の隣の席で、時々本の感想を言うだけ言ってそれで終わる微妙な関係の____


「…………赤司くん」
「赤葦だよ」


 やっべ、ミスって隣の席の男子をオヤコロ系男子にしてしまった。

 赤司なんて名字の人はうちにはいないし、人によってはオタバレ不可避。場合によっては私の学校生活が終わるかもしれない危機。とりあえずここは、素直に間違ったって謝っておこう。


「……間違った、ごめん」
「いや別に。それより、呼び止めてごめん。ちょっと渡したいものがあって」


 気にしないでおいてくれるのはありがたいけど、このタイミングで……?

 えっ、いつもは授業終わったら即荷物をまとめて一番乗りで校門潜ってる帰宅部エースと名高い私が、鞄を持たずに息を乱して最終下校時刻ギリギリでやって来て、今にも忘れ物取りにきましたって雰囲気を出してるのに、今渡すの???
 忘れたのがプリントとかならまだちょっと余裕のある返事できたんだけど、今はなぁ携帯だしなぁ〜〜。

 よし、ここは叔母さん頑張ろう。時々本について話す隣の席の赤葦くんでも容赦しないぞ!


「それって、今じゃないとダメなこと?」


 首を傾げて下から見上げる。
 普通に上目遣いに見えるかもしれないけど、なんと今世の私は糸師の血を引く爆美女少女。
 整いすぎた顔は全くと言って動かない。そして、「甥っ子がかかってるんだよぉおお!!」という気迫迫る感情を込めたターコイズブルーの瞳で睨みつけたら完成。

 以上、お兄様直伝の不満を伝える顔の作り方でした!モデルになれる美貌があってこそだけど、そこは私は糸師家のしたまつ毛を受け継いだ顔面タージ・マハルなので問題なし!

 普段何考えてるかわからない赤司くんでも効いてくれたらいいんだけど………。


「別に今じゃなくて大丈夫だけど、一応糸師さんのために今日中に渡したいんだけど」
「わかった。忘れ物取ったら出来るだけ早く戻ってくる」


 効いた!

 よっしゃこれで冴の世界デビューはまだギリギリ防げる。
 ありがと兄さん……と、心の中のイマジナリー兄さんに御礼を言う。イマジナリー兄さんに「本人に言えよ」と言われた気がしたけどまぁ無視だ。

 下校時とサッカー以外で使わないスピードで階段を駆け上がって、私のクラスである1- 4組に到着。
 中1の階は4階なので地味に体力が削られてるけど、構わず私の席をガサガサと漁る。

 一応、うちの学校は親との連絡用で携帯を持ってくるのが許可されていて、それ以外で使用したら容赦なく生活指導の鬼塚先生に「めっ!(※マイルドな表現)」されるので、携帯でゲームしようとする人は殆どいない。

 私も「めっ!(※マイルドな表現)」とはされたくないので連絡以外では使わないのだけど、最後の6時間目の授業が苦手な先生が担当する苦手な理科だったので元気をもらうためにこっそり机の下で待受を見た。
 そこで先生が入って来たので慌てて机の中に入れて……ってところから記憶がないので、携帯は机の中あるはずなんだけど、全然出てこない。

 色々漁ってみたけど、副教科の置かれた棚は教科書にはまず入れないしなぁ。


 ……まさか、誰かに取られた?

 有り得そうで怖い。
 今の私って顔だけはいいかららなぁ………考えたくないけど嫌がらせか、ストーカーとかあり得るかもしれない。

 引きこもりだし友達もいないから学校以外で一人で外出するときはほとんどないし、冴関連の買い出しを頼まれることあるけど、だいたいお母さんかお父さんとか、珍しときはお兄ちゃんが一緒についてくるから不審者には遭遇したことない。

 だけどボッチを極めてる学校となるとちょっとヤバいのに遭遇してもおかしくないしなぁ………。
 よし、とりあえず職員室に行って担任の先生に携帯をなくしたことを言おう。

 と、思っていたら鍵を締めに来た先生と廊下でばったり出会った。


「あれ、糸師じゃないか。どうしたんだ、こんな時間に?」


 部活もしてないお前が珍しいなぁ……と、副音声が聞こえたような気がしたが、気のせいか?


「携帯が無くなったので探しに来ただけです」
「糸師の携帯……?ああ、あれならお前の隣の席の生徒やつが落とし物として届けてくれたんだけど、ちょうどお前が校門から走ってきてるの見えたから、直接渡してやれって頼んだんだよ。上に上がって来てるのを見るに、すれ違った感じか」


 と、聞けば先生はめったに話しかけに来ない私を珍しがりながらも答えてくれた。
 しかし、隣の席の生徒って…………[漢字]赤葦[/漢字][ふりがな]アイツ[/ふりがな]じゃねーかっ!!!!

 なるほどね、だから私を呼び止めたんだね!
 てっきりクラスで担任の先生のサプライズお誕生日パーティー企画書かと思ったよ。慌てすぎて確認しなかった私も悪いけど、携帯持ってるならもったいぶらずにちゃんと言ってくれてもよかったんじゃない?

 心の中で大分理不尽な文句を言いながら階段を駆け降りて昇降口まで行くと、靴を履き替えて待っていてくれた赤葦くんが居た。

 彼も意外と天然なところあるかもだし、まぁちょっと冷静になろうぜ私。

 パタパタと小走りで近づいていけば、足音に気がついたのかこっちに視線をくれた。
 赤葦くんの顔がいいばっかりにファンサみたいにな言い方になってしまった。この身長と顔でこの前まで小学生ってマジですか?


「忘れ物見つかった?」
「赤葦くんが持ってるって先生が言ってた」
「ああ、やっぱ糸師さんが言ってた忘れ物ってコレなんだ」


 はい、っと差し出したのは黒色のガラケー。
 兄さんのお下がりの黒色で、義姉さんから貰ったストラップお花のストラップも付いている。間違いなく私のものだった。

 ありがたく受け取らせて頂いただくけど、やっぱりって言っているあたり確信犯だ。
 ちょっとムッとしたけど、これ以上会話を広げたくないので御礼だけ言って立ち去ろうと決意する。


「携帯持っててくれてありがとう。じゃあまた明日」


 よし、帰ろう。
 最終下校時刻はもうすぎてるけど、まだギリギリ開いているに賭けて全力疾走。

 下校時間は若干過ぎているので、しまっているかもしれないが、鍵を貰うとかはしない。いざとなったら飛び越える。
 だってスーパープリティでエンジェルな可愛い甥っ子が、家にいるのだ。あと、今日はトンカツなのでつまみ食いもしたい。

 赤葦くんは置いてけぼりだけど、一緒に帰るとかそういう選択肢はないので問題なしっ!

 走って見えて来た校門はしっかりしまっていた。うーん今日の校門閉める係さんは真面目なようだ。
 仕方ない、私のいざというときの全力ジャンプをお見せしよう。

 まずは助走だけど、今全力で走っているのでこれはクリア。あとは天性の運動神経に任せて…………


 1、2、3!!


 1m半ほどの校門を勢いとジャンプ力を味方につけて全部を乗り切った。
 あとは両手足をつけて、勢いを分散させたら怪我なく乗り越えられる、そう思っていた。

 でも、ジャンプして校門を乗り越えた瞬間に、神様がイタズラをしたのだ。

 ぶわっ。
 そこそこ強い風が当たり一体に吹いた。

 風が吹き抜ける中で、私は一瞬「まずい!」と思ったけど、スカートがひらりと浮き上がり、私のスカートを捲り上げた。そして、それだけでは飽き足らず、後ろから来ていた明石くんにしっかり私のパンツを見せつけたのだ。

 私は着地したときの衝撃より、彼にしっかりスカートの中身を見られた事のほうが痛かった。もちろん、精神的に……。

 私はギギギっと、錆びついたブリキのオモチャみたいにゆっくりと、後ろを振り向く。
 するとやっぱり赤葦くんが居た。

 走ってきたのか少し息が荒くて、ほっぺが赤くて、目を限界まで目を開いている赤葦くんが居た。


 …………ワ。
 ワアァァァァアアアッ!!!!!


 絶対見た反応だァアア!!
 見られた!!!私の!!!パンツを!!!!

 今すぐここに蹲って世界から消えたくなったけど、それをどうにかその衝動を抑える。これ以上クラスメイトに醜態を晒すわけにはいかなかった。
 そして挙動不審すぎる私に気がついた赤葦くんが校門越しに言葉をかける。


「あの、糸師さん」


 いつの間にか落ち着きを取り戻し、いつもの無表情というか真顔の鉄仮面を装備した赤葦くん。
 そんな明石くんとは反対に私はいつものクールビューティー(笑)な表情は形無し。湯気を出しながら「ぅ、ぇえっと、」と、言葉にもならない謎の音を口から漏らしていた。


「ぅ、あ………さ、さようならっ!」


 動揺して何を言っているのか自分でもわからなくなっていた。
 あの瞬間、完全に目撃されてしまったから、何を言おうともう遅い。

 それを自覚した瞬間、茹蛸もドンびくぐらいに顔を真っ赤にしてその場を駆け出していた。

 赤葦くんは私を呼び止めるように名前を呼んでいたけど、私は振り返る間もなく携帯を握りしめて通学路を走っていた。


 つまり、逃亡である。

作者メッセージ

懐かしいのを投稿です。
あと、スランプが落ち着いて、承認欲求が暴れ出したのでコメントをください。

2025/09/22 21:46

白鯨@更新低速
ID:≫ 4yOs/kl2X2mU.
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