ここにある閃きは
#1
1話 いつしか…
スゥー…スゥー…
愛銃の銃身を布が撫でる音が優しく私の耳に届く。その音は心地よくて私の心を洗ってくれる気さえする。
私、徒花 彩桜はいつもそう思っている。
トン…トン…ツー…
ふと癒しの音の中に弱々しくも他の音にかき消されない程度の電子音が響く。こうやって私の無線機から何かが聞こえてくることはとても珍しい。
「よっと…」
愛銃の点検が終わり、私は聞こえにくいモールス信号を読み取ることに集中する。
いつしか…そんな風に電子音は言葉を紡いでいる。
日本語のようだが日本のどこで発せられている信号かは、私には分からない。
いつしか…残念ながら短点と長点が折り混ざる軽快な電子音はその一言だけを発して止まってしまった。
いつしか…このあとにはどんな言葉が繋がるのだろうか。この信号を発した人はこの先に何を見たかったのだろうか。
「いつしか…ねぇ。まっ、答えはその人のみぞ知るってこった。」
今の私にはこの言葉に続くいい言葉が思いつかなかった。いつしか分かるかな。
「ふふっ。」
やっぱり深く考えるのは良くないみたいだ。何となく生きる…この世界が栄えていた頃の姿を知らない私にはとても出来ないことだろう。
第三次世界大戦…私はそんな地獄すら生ぬるい火の海の中でこの世に生を受けた。
それから23年、結局私は死ぬことなくあの戦いを生き抜いた。
いや、生き抜いたと言うより死に損なったという表現のほうが正しそうだ。
まあ、そんな死に損ないである私は今こうして旅をしている。
目的は特になく自由にほっつき歩く、それだけだ。
ただ…強いてあるとするならば
どうして世界はこうなってしまってたのか、どうして第三次世界大戦は起きてしまったのか、まだ緑があった頃の…活気があったという世界は一体どんな形をしていたのか。
旅を始めて早3年、何となくで歩を進めたことはなかった。
復元したい…この世界をもとあった姿に。そうは思わなかった。ただ〝あの子達〟がもう怯えて戦わなくていいように。
いつもそれだけを考えていた。
「そろそろ…行くかな。」
旅の癒しは、あの戦火を生き延びた木々が作ってくれた影で涼むこと。
私はここに残せるものは何もない。本当に可哀想だ。
私がここに何か…思いじゃだめだ、概念的なものじゃない、しっかりと…幾星霜経ってもう一度ここへ来る因果が巡ってきた時、ああ、私昔…ここに来たなと思える。そんな物をここへ残したかった。
そうしないとここに生きるこの木々達も生き抜いたではなく死に損なったことになってしまいそうだ。
価値があれば生き抜いたことになる。だから残してあげたい、ここにこの子達の生きている価値を。
けど私はこの子達に何かを残すことはできない。
死に損ないの私がこの子達にあげられるのは死に損ないという烙印だけだ。本当に…本当に残念だ。
「またここに来る因果が巡ってきたら、今度は必ず君たちに価値を…生きる価値を教えるから…だから、今は静かに目を閉じていてほしい。」
立ち上がり、木の幹に優しく触れながら私は語りかける。相手は人間じゃない、私達の言語が伝わる種でもない。
だから行動で示すのだ。いつか必ず戻ってくる。
私は木々に背中を向ける。速く…自分自身があの戦火を生き抜いた、そう思える理由を探してこなければならない。
私があの戦火を生き抜いた、そう思えたのならば、この子達に死に損ないの烙印を押さずに済む。何かを残してあげられる。
私が…君たちがここにいるという証を。
私に束の間の休息を与えてくれた木々に背を向け歩み出す。
この世界を生き抜いた理由を見つけるために。
「止まるなよ…私。全て、振り切るの。」
生き抜いた理由が見つかるまで決して足を止めてはいけない。
森羅万象に生き抜いた価値を与える権利、それを得ようとするのもこの世界を歩く理由なのかもしれない。
いつしか…この世界で誰しもが…何もかもが生きていることそのものを奇跡だと思えるように。
「歩くよ、私。」
影が伸びた昼下がり、何度目だろうこの覚悟を心の中で唱えたのは。
愛銃の銃身を布が撫でる音が優しく私の耳に届く。その音は心地よくて私の心を洗ってくれる気さえする。
私、徒花 彩桜はいつもそう思っている。
トン…トン…ツー…
ふと癒しの音の中に弱々しくも他の音にかき消されない程度の電子音が響く。こうやって私の無線機から何かが聞こえてくることはとても珍しい。
「よっと…」
愛銃の点検が終わり、私は聞こえにくいモールス信号を読み取ることに集中する。
いつしか…そんな風に電子音は言葉を紡いでいる。
日本語のようだが日本のどこで発せられている信号かは、私には分からない。
いつしか…残念ながら短点と長点が折り混ざる軽快な電子音はその一言だけを発して止まってしまった。
いつしか…このあとにはどんな言葉が繋がるのだろうか。この信号を発した人はこの先に何を見たかったのだろうか。
「いつしか…ねぇ。まっ、答えはその人のみぞ知るってこった。」
今の私にはこの言葉に続くいい言葉が思いつかなかった。いつしか分かるかな。
「ふふっ。」
やっぱり深く考えるのは良くないみたいだ。何となく生きる…この世界が栄えていた頃の姿を知らない私にはとても出来ないことだろう。
第三次世界大戦…私はそんな地獄すら生ぬるい火の海の中でこの世に生を受けた。
それから23年、結局私は死ぬことなくあの戦いを生き抜いた。
いや、生き抜いたと言うより死に損なったという表現のほうが正しそうだ。
まあ、そんな死に損ないである私は今こうして旅をしている。
目的は特になく自由にほっつき歩く、それだけだ。
ただ…強いてあるとするならば
どうして世界はこうなってしまってたのか、どうして第三次世界大戦は起きてしまったのか、まだ緑があった頃の…活気があったという世界は一体どんな形をしていたのか。
旅を始めて早3年、何となくで歩を進めたことはなかった。
復元したい…この世界をもとあった姿に。そうは思わなかった。ただ〝あの子達〟がもう怯えて戦わなくていいように。
いつもそれだけを考えていた。
「そろそろ…行くかな。」
旅の癒しは、あの戦火を生き延びた木々が作ってくれた影で涼むこと。
私はここに残せるものは何もない。本当に可哀想だ。
私がここに何か…思いじゃだめだ、概念的なものじゃない、しっかりと…幾星霜経ってもう一度ここへ来る因果が巡ってきた時、ああ、私昔…ここに来たなと思える。そんな物をここへ残したかった。
そうしないとここに生きるこの木々達も生き抜いたではなく死に損なったことになってしまいそうだ。
価値があれば生き抜いたことになる。だから残してあげたい、ここにこの子達の生きている価値を。
けど私はこの子達に何かを残すことはできない。
死に損ないの私がこの子達にあげられるのは死に損ないという烙印だけだ。本当に…本当に残念だ。
「またここに来る因果が巡ってきたら、今度は必ず君たちに価値を…生きる価値を教えるから…だから、今は静かに目を閉じていてほしい。」
立ち上がり、木の幹に優しく触れながら私は語りかける。相手は人間じゃない、私達の言語が伝わる種でもない。
だから行動で示すのだ。いつか必ず戻ってくる。
私は木々に背中を向ける。速く…自分自身があの戦火を生き抜いた、そう思える理由を探してこなければならない。
私があの戦火を生き抜いた、そう思えたのならば、この子達に死に損ないの烙印を押さずに済む。何かを残してあげられる。
私が…君たちがここにいるという証を。
私に束の間の休息を与えてくれた木々に背を向け歩み出す。
この世界を生き抜いた理由を見つけるために。
「止まるなよ…私。全て、振り切るの。」
生き抜いた理由が見つかるまで決して足を止めてはいけない。
森羅万象に生き抜いた価値を与える権利、それを得ようとするのもこの世界を歩く理由なのかもしれない。
いつしか…この世界で誰しもが…何もかもが生きていることそのものを奇跡だと思えるように。
「歩くよ、私。」
影が伸びた昼下がり、何度目だろうこの覚悟を心の中で唱えたのは。