加奈さんの目が少し揺れたのを私は見逃さなかった。
全てを諦めているような目と、私に向けてきた希望の光。
硝子みたいな綺麗な目に、傷が入ったような。
そんな気がした。
加奈「……なんてね。はは、周り風評被害食らった?」
笑いを込めて呟く加奈さん。
…私には、それが現実逃避しているようで辛かった。
諦めがついてしまったならもう、元に戻るのは難しい。
私もよく分かっている。
多分、ここにいる人たちも――。
結以「はいはい。勝手に巻き込まないでくれます?…じゃ、蓮、案内して」
蓮と呼ばれた、加奈さんが副店と呼んでいた男性がこちらの方へ来る。
蓮「ここのコンビニ来たことある?」
そんな質問に、私は「ないです」と答える。
蓮さんは「なら配置場所とか教えないとかー」と少し落胆した様子だ。
すると、すかさず男性が「普通教えなくてどーすんですか」と突っ込む。
日常の一コマが、さっきの加奈さんの目が、凄く私の心に刺さってくる。
もう忘れてしまった、遠い、だけど数年前の出来事。
なんの為に働いて、なんの為に金を稼いで……。
そんな事もう忘れた。
思い出すのも、思い出させるのも遅すぎた。
ぼーっとして、視界がぼやける。
蓮「遥香さん、こっちがキッチンで、こっちが…」
蓮さんの声でぼやけていた視界がはっきりとしてくる。
私はなるべく思い出さないように、そっと心に蓋をした。
[水平線]
遥香が蓮に連れ去られた後。
結以「諦めるにしては早いなーって思うんだけど。…ってか、恋愛っていつからでもできるし」
結以は遥香の方を見て言った。
加奈には自分に向けて言われている様な気もして、結以に少し笑いを込めて言う。
加奈「それ結以が言いますー?」
結以「ちょ、加奈さんは無駄口多い」
笑い声がバックヤードに響く。
すぐに壁に吸収されて声は消えた。
数十秒の沈黙が続いた時、それを切り裂くように入店音が聞こえてきた。
加奈は深呼吸して、結以に喋りかける。
加奈「……………もしかするとさ―――、」
言い終わる前に蓮が結以を引き連れて帰ってきた。
結以は疑問が浮かぶ。
私にあんな言い方をあまりしないからだ。
加奈はすぐさま遥香に目を向ける。
「どう?理解してきた?」と遥香に話しかける加奈。
その姿に、結以は聞けなかった文よりも先に、既視感を覚えた。
結以がアルバイトとして来た時のこと。
今よりずーーっと、暗かったバックヤードで自己紹介がされて、結以は困惑していた。
他の誰からも紹介がない。
名前も知らない、どうやって呼べばいいのか。
適当に案内され、説明もされず、どうすればいいのか。
その時に、加奈がこんな暗い自分に話しかけてくれて、店のことを細かいことまで教えてくれて。
結以は思い切って、加奈に恋愛のことを聞いてみた。
あの時、あの場所、何かを間違えてしまった、よく分からない感情。
少し傷が付いてしまった、加奈の目。
だが、結以にはそれが自分に駆けた希望の光に見えた。
今、遥香に向けているあの目。
昔、私に向けた目に見えて、少し胸が苦しくなった。
変わってない。
変わることが“できていない”。
結以は、数年前にした加奈との約束を、しっかりと覚えている。
全てを諦めているような目と、私に向けてきた希望の光。
硝子みたいな綺麗な目に、傷が入ったような。
そんな気がした。
加奈「……なんてね。はは、周り風評被害食らった?」
笑いを込めて呟く加奈さん。
…私には、それが現実逃避しているようで辛かった。
諦めがついてしまったならもう、元に戻るのは難しい。
私もよく分かっている。
多分、ここにいる人たちも――。
結以「はいはい。勝手に巻き込まないでくれます?…じゃ、蓮、案内して」
蓮と呼ばれた、加奈さんが副店と呼んでいた男性がこちらの方へ来る。
蓮「ここのコンビニ来たことある?」
そんな質問に、私は「ないです」と答える。
蓮さんは「なら配置場所とか教えないとかー」と少し落胆した様子だ。
すると、すかさず男性が「普通教えなくてどーすんですか」と突っ込む。
日常の一コマが、さっきの加奈さんの目が、凄く私の心に刺さってくる。
もう忘れてしまった、遠い、だけど数年前の出来事。
なんの為に働いて、なんの為に金を稼いで……。
そんな事もう忘れた。
思い出すのも、思い出させるのも遅すぎた。
ぼーっとして、視界がぼやける。
蓮「遥香さん、こっちがキッチンで、こっちが…」
蓮さんの声でぼやけていた視界がはっきりとしてくる。
私はなるべく思い出さないように、そっと心に蓋をした。
[水平線]
遥香が蓮に連れ去られた後。
結以「諦めるにしては早いなーって思うんだけど。…ってか、恋愛っていつからでもできるし」
結以は遥香の方を見て言った。
加奈には自分に向けて言われている様な気もして、結以に少し笑いを込めて言う。
加奈「それ結以が言いますー?」
結以「ちょ、加奈さんは無駄口多い」
笑い声がバックヤードに響く。
すぐに壁に吸収されて声は消えた。
数十秒の沈黙が続いた時、それを切り裂くように入店音が聞こえてきた。
加奈は深呼吸して、結以に喋りかける。
加奈「……………もしかするとさ―――、」
言い終わる前に蓮が結以を引き連れて帰ってきた。
結以は疑問が浮かぶ。
私にあんな言い方をあまりしないからだ。
加奈はすぐさま遥香に目を向ける。
「どう?理解してきた?」と遥香に話しかける加奈。
その姿に、結以は聞けなかった文よりも先に、既視感を覚えた。
結以がアルバイトとして来た時のこと。
今よりずーーっと、暗かったバックヤードで自己紹介がされて、結以は困惑していた。
他の誰からも紹介がない。
名前も知らない、どうやって呼べばいいのか。
適当に案内され、説明もされず、どうすればいいのか。
その時に、加奈がこんな暗い自分に話しかけてくれて、店のことを細かいことまで教えてくれて。
結以は思い切って、加奈に恋愛のことを聞いてみた。
あの時、あの場所、何かを間違えてしまった、よく分からない感情。
少し傷が付いてしまった、加奈の目。
だが、結以にはそれが自分に駆けた希望の光に見えた。
今、遥香に向けているあの目。
昔、私に向けた目に見えて、少し胸が苦しくなった。
変わってない。
変わることが“できていない”。
結以は、数年前にした加奈との約束を、しっかりと覚えている。