コンビニの明かりと、君のランドセル
#1
夜中の救世主 。
午前二時 。
コンビニの自動ドアが 、 ウィーンと無機質な音を立てて開く 。
私の視界は 、 蛍光灯の光に焼かれてひどく白く滲んでいた 。
「 ……あーあ 、 またやっちゃった 」
小野真実( おの・まみ ) 、 二十六歳 。
職業 、 社畜 。
今日も今日とて 、 終わらない資料と理不尽な上司の要求に押しつぶされ 、 帰宅途中の歩道で力尽きた 。
アスファルトの冷たさが 、 火照った頬に心地いい 。
このままここで、いっそ道端の石ころにでもなってしまいたい。
意識が遠のきかけた 、 その時だった 。
「 ……大丈夫すか? 」
頭上から 、 鈴を転がすような 、でもどこか落ち着いた声が降ってきた 。
ゆっくりと瞼を持ち上げると 、 そこにはランドセルを背負った少年が立っていた 。
街灯の光を背負ったその横顔は 、 驚くほど整っている 。
整いすぎていて 、 夜の闇に溶け込んでしまいそうだ 。
「 ……君 、 こんな時間に何してるの 」
「 それはこっちのセリフっすよ 。 道端で寝るなんて 、 危ないっす 」
少年は呆れたように溜息をつくと 、 慣れた手つきでコンビニの袋から温かい缶コーヒーを取り出し 、私の手に押し付けた 。
指先が触れ合う 。
少年の手は小さくて 、 驚くほど温かかった 。
「 ……ありがと 」
「 別に 。 ……俺 、 [漢字]山元 健[/漢字][ふりがな]やまもと けん[/ふりがな] 。 この先のマンションに住んでるんすけど 、 いつもこの時間 、 ここを通るんで 」
「 健 」と名乗った少年は 、 私の隣にちょこんと腰を下ろした 。
小学生が深夜に一人歩き 。
普通なら通報案件かもしれない 。
けれど 、 今の私にはそんなことを気にする気力も 、 社会的な正義感も残っていなかった 。
「 ……私 、 小野真実 。 死んだように生きてる会社員 」
「 ふーん 。 真実さん 、 顔色悪いっすよ 。 ……明日も仕事? 」
「 ……うん 」
「 じゃあ 、 また明日もここで会えるかもっすね 」
健はそう言って 、 悪戯っぽく笑った 。
その笑顔があまりに眩しくて 、 私は思わず目を細める 。
ブラック企業の冷たいオフィス 、 怒鳴り声 、 終わらないタスク 。
そんな私の日常に、初めて「楽しみ」という名のノイズが混じった気がした。
「 ……明日も 、 会えるかな 」
「 俺は毎日ここにいるから 。 ……真実さんが 、 また倒れないように見張っててやる 」
深夜のコンビニ前 。
ランドセルを背負った美少年と 、 疲れ切った社畜女子 。
そんな 、 誰にも言えない秘密の寄り道が 、 ここから始まった 。
コンビニの自動ドアが 、 ウィーンと無機質な音を立てて開く 。
私の視界は 、 蛍光灯の光に焼かれてひどく白く滲んでいた 。
「 ……あーあ 、 またやっちゃった 」
小野真実( おの・まみ ) 、 二十六歳 。
職業 、 社畜 。
今日も今日とて 、 終わらない資料と理不尽な上司の要求に押しつぶされ 、 帰宅途中の歩道で力尽きた 。
アスファルトの冷たさが 、 火照った頬に心地いい 。
このままここで、いっそ道端の石ころにでもなってしまいたい。
意識が遠のきかけた 、 その時だった 。
「 ……大丈夫すか? 」
頭上から 、 鈴を転がすような 、でもどこか落ち着いた声が降ってきた 。
ゆっくりと瞼を持ち上げると 、 そこにはランドセルを背負った少年が立っていた 。
街灯の光を背負ったその横顔は 、 驚くほど整っている 。
整いすぎていて 、 夜の闇に溶け込んでしまいそうだ 。
「 ……君 、 こんな時間に何してるの 」
「 それはこっちのセリフっすよ 。 道端で寝るなんて 、 危ないっす 」
少年は呆れたように溜息をつくと 、 慣れた手つきでコンビニの袋から温かい缶コーヒーを取り出し 、私の手に押し付けた 。
指先が触れ合う 。
少年の手は小さくて 、 驚くほど温かかった 。
「 ……ありがと 」
「 別に 。 ……俺 、 [漢字]山元 健[/漢字][ふりがな]やまもと けん[/ふりがな] 。 この先のマンションに住んでるんすけど 、 いつもこの時間 、 ここを通るんで 」
「 健 」と名乗った少年は 、 私の隣にちょこんと腰を下ろした 。
小学生が深夜に一人歩き 。
普通なら通報案件かもしれない 。
けれど 、 今の私にはそんなことを気にする気力も 、 社会的な正義感も残っていなかった 。
「 ……私 、 小野真実 。 死んだように生きてる会社員 」
「 ふーん 。 真実さん 、 顔色悪いっすよ 。 ……明日も仕事? 」
「 ……うん 」
「 じゃあ 、 また明日もここで会えるかもっすね 」
健はそう言って 、 悪戯っぽく笑った 。
その笑顔があまりに眩しくて 、 私は思わず目を細める 。
ブラック企業の冷たいオフィス 、 怒鳴り声 、 終わらないタスク 。
そんな私の日常に、初めて「楽しみ」という名のノイズが混じった気がした。
「 ……明日も 、 会えるかな 」
「 俺は毎日ここにいるから 。 ……真実さんが 、 また倒れないように見張っててやる 」
深夜のコンビニ前 。
ランドセルを背負った美少年と 、 疲れ切った社畜女子 。
そんな 、 誰にも言えない秘密の寄り道が 、 ここから始まった 。