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# 名前のない恋

放課後の教室は 、 いつもより少しだけ静かだった 。

窓の外で揺れるカーテンと 、 スマホの画面だけが 、 やけに現実感を持っている 。

「 ねえ 、 またその人の動画? 」

後ろの席の[漢字]春菜[/漢字][ふりがな]はるな[/ふりがな]が 、 呆れたように笑う 。

「 うん 」

私は画面を伏せずに 、 そのまま答えた 。

隠す理由なんて 、 もうとっくにない 。

むしろ 、 隠せるほど軽い気持ちじゃなかった 。

イヤホン越しに聞こえる声は 、 いつだって優しい 。

誰に向けているのかなんて分かってるのに 、 それでも 、 自分に話しかけられているみたいに感じてしまう 。

「 リアコってやつでしょ 、 それ 」

春菜は軽く言うけど 、 その一言はやけに重たく落ちた 。

[中央寄せ]リアコ 。[/中央寄せ]

現実に恋をしているみたいに 、 推しを好きになること 。

分かってる 。

届かないってことも 、 会えないってことも 、 名前すら知られることはないってことも 。

それでも 。

「 好きなんだよね 」

口に出すと 、 少しだけ楽になる 。

春菜は少し黙ってから 、 椅子を引いて隣に座った 。

「 しんどくない? 」

その質問は、優しかった 。

私は少し考えてから 、 首を横に振る 。

「 しんどいよ 。 でも 、 それ以上に楽しい 」

ライブ配信で名前を読まれた日 、 画面越しに笑ってくれた瞬間 、 
たった数秒の出来事で一日が全部報われるみたいな気持ちになる 。

「 その人 、 あんたのこと好きにならないよ? 」

分かってるよ 、 そんなこと 。

「うん 。 でも 、 私が好きでいることは 、 誰にも止められないでしょ 」

自分でもびっくりするくらい 、 まっすぐな言葉だった 。

春菜は一瞬だけ目を丸くして 、 それから笑った 。

「 なんか 、 それ青春って感じ 」

その一言で 、 胸の奥がじんわり熱くなる 。

ああ 、 これって 、 ちゃんと“ 今 ”なんだ 、

届かない距離にいる誰かをこんなに本気で好きになるなんて 、 きっと今しかできない 。

帰り道 、 夕焼けがやけに赤くて私はまたスマホを開いた 。

新しい投稿が上がっている 。

再生ボタンを押す前に 、 少しだけ深呼吸した 。

この気持ちは 、 たぶん報われない 。

でも 、 それでいい 。

誰にも知られなくても 、 叶わなくても、この胸の中で燃えているものは 、 本物だ 。

画面の向こうのあなたへ 。

届かなくても 、 ちゃんと私の[漢字]青春[/漢字][ふりがな]恋[/ふりがな]だよ 。

作者メッセージ

ちなみに わたくし も 一回 だけ 経験 ありまして ( 聞いてない )

見てる と 胸 が ぎゅうぎゅう なるし 、 目 合うと 顔 が 熱く なっちゃいます ( イラストでも )

今 は 同級生 に リアコ ちゅー 。

2026/07/12 15:38

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