「 神廼さん 、 次のボールこっちに来ます 」
そう言ったのは 、 [漢字]孤空[/漢字][ふりがな]こそら[/ふりがな] [漢字]結衣[/漢字][ふりがな]ゆい[/ふりがな]だった 。
コートの後ろで 、 少しだけ身をかがめたまま丸い目で相手を見ている 。
関西弁のやわらかい響きとは裏腹に 、 その視線は妙に鋭い 。
その横で 、 [漢字]絵寺[/漢字][ふりがな]えてら[/ふりがな] [漢字]神廼[/漢字][ふりがな]しんの[/ふりがな]はぱっと笑った 。
「 おっけー! じゃあ任せて! 」
何を考えているのか分からない 。
けれど 、 神廼の声には不思議なくらい迷いがなかった 。
体育館の空気は 、 試合の終盤らしく少しだけ張りつめている 。
あと一本取れば流れが変わる 。
そんな場面で 、 相手のエースが高く跳んだ 。
鋭いスパイク 。
誰もが一瞬息を止める 。
けれど結衣は 、 すでに動いていた 。
「 そこや! 」
小さな体が床を蹴る 。
腕を差し出して 、 ぎりぎりでボールを上げる 。
「 ナイス! 」
神廼の明るい声が飛ぶ 。
上がったボールは、少しだけ乱れていた 。
でも 、 神廼はまるで気にしない 。
「 ええやん! まだ終わってない! 」
そう言って駆け込むと 、 そのまま強く打ち抜いた 。
ボールは相手コートの真ん中に落ちる 。
「 ……入った! 」
ベンチからも歓声が上がった 。
神廼は満面の笑みで振り返る 。
「 見た!? 今の、めっちゃ良かったよね! 」
「 良かった 、 っていうか、かなり雑やったけどな 」
神廼は息を整えながら 、 ぼそっと言う 。
「 でも 、 入ったでしょ? 」
「 入った 」
「 なら勝ち! 」
神廼はそう言って 、 ぴしっと親指を立てた 。
結衣はそれを見て 、 少しだけ目を細める 。
この人は本当に 、 どこを見ているのか分からない 。
なのに 、 落ち込んでいる空気を一瞬で吹き飛ばしてしまう 。
そんな神廼の横で 、 結衣は静かに立ち上がった 。
「 次 、 うちが守る 」
「 お 、 頼もしい! 」
「 せやろ 」
「 自分で言うんかい 」
「 言う 」
その返しに 、 神廼は吹き出した 。
笑いながらも 、 次のラリーに備える 。
ふたりの呼吸は 、 少しずつ合ってきていた 。
少し前までは 、 神廼と結衣は真逆のように見られていた 。
神廼はいつも明るくて 、 勢いで突っ走る 。
結衣はふわっとしていて 、 何を考えているのか読めない 。
けれど 、 バレーの中では 、 不思議と噛み合う 。
神廼が空気を上げると 、 結衣がその流れを逃さない 。
結衣が相手の隙を読むと 、 神廼が一気に畳みかける 。
まるで違う形のまま同じ方向を向いているみたいだった 。
「 神廼さん 」
「 ん? 」
「 今の 、 ちょい怖かったで 」
「 え 、 そう? 」
「 せや 。 なんか 、 テンションだけで飛び込んでた 」
「 バレた? 」
「 そらバレる 」
神廼は「 えへへ 」と笑って頭をかいた 。
「 でもさ 、 結衣が拾ってくれるって思ってたし 」
その言葉に 、 結衣は一瞬だけ黙る 。
普通なら無茶だと怒るところかもしれない 。
でも結衣は 、 悪びれもしない顔でそう言う 。
「 ……ほんま、よう分からん人やな 」
「 褒めてる? 」
「 たぶん 」
「 よっしゃ! 」
神廼は両手を上げて喜んだ 。
その様子に 、 結衣はつい口元をゆるめる 。
試合は最後まで続いた 。
ラリーが長くなるたびに 、 神廼は声を出し続ける 。
「 いける! 」
「 まだまだ! 」
「 次ある! 」
そのたびチームの空気が少しずつ前を向いた 。
そして最後の一本 。
結衣が高く上げたボールを 、 神廼がしっかりと打ち込む 。
「 よっしゃああ! 」
決まった瞬間 、 神廼はその場で飛び跳ねた 。
結衣は少し遅れて、ほっと息を吐く 。
「 ……勝ったな 」
「 勝った! 」
神廼は結衣の方を向いて 、 満面の笑顔を見せた 。
「 結衣、めっちゃすごかった! 」
「 そっちこそ 。 うるさいくらい元気やった 」
「 え 、 褒めてる? 」
「 褒めてる 」
神廼は照れたように笑う 。
結衣はその笑顔を見て 、 ふっと目を細めた 。
「 まあ 、 神廼さんとやるバレー嫌いちゃう 」
「 ほんま!? 」
「 ほんま 」
「 やったー! 」
神廼は勢いよく両手を上げる 。
それを見て 、 結衣は小さく笑った 。
コートの上で交わす会話は 、 いつだって少し変で少しあたたかい 。
けれど 、 その不思議なやり取りこそがふたりを強くしていた 。
神廼は前を向く。 。
結衣はそれを受け止める 。
ふたりなら 、 もっと遠くまで行ける 。
そんな予感だけが 、 試合の余韻の中に静かに残っていた 。
そう言ったのは 、 [漢字]孤空[/漢字][ふりがな]こそら[/ふりがな] [漢字]結衣[/漢字][ふりがな]ゆい[/ふりがな]だった 。
コートの後ろで 、 少しだけ身をかがめたまま丸い目で相手を見ている 。
関西弁のやわらかい響きとは裏腹に 、 その視線は妙に鋭い 。
その横で 、 [漢字]絵寺[/漢字][ふりがな]えてら[/ふりがな] [漢字]神廼[/漢字][ふりがな]しんの[/ふりがな]はぱっと笑った 。
「 おっけー! じゃあ任せて! 」
何を考えているのか分からない 。
けれど 、 神廼の声には不思議なくらい迷いがなかった 。
体育館の空気は 、 試合の終盤らしく少しだけ張りつめている 。
あと一本取れば流れが変わる 。
そんな場面で 、 相手のエースが高く跳んだ 。
鋭いスパイク 。
誰もが一瞬息を止める 。
けれど結衣は 、 すでに動いていた 。
「 そこや! 」
小さな体が床を蹴る 。
腕を差し出して 、 ぎりぎりでボールを上げる 。
「 ナイス! 」
神廼の明るい声が飛ぶ 。
上がったボールは、少しだけ乱れていた 。
でも 、 神廼はまるで気にしない 。
「 ええやん! まだ終わってない! 」
そう言って駆け込むと 、 そのまま強く打ち抜いた 。
ボールは相手コートの真ん中に落ちる 。
「 ……入った! 」
ベンチからも歓声が上がった 。
神廼は満面の笑みで振り返る 。
「 見た!? 今の、めっちゃ良かったよね! 」
「 良かった 、 っていうか、かなり雑やったけどな 」
神廼は息を整えながら 、 ぼそっと言う 。
「 でも 、 入ったでしょ? 」
「 入った 」
「 なら勝ち! 」
神廼はそう言って 、 ぴしっと親指を立てた 。
結衣はそれを見て 、 少しだけ目を細める 。
この人は本当に 、 どこを見ているのか分からない 。
なのに 、 落ち込んでいる空気を一瞬で吹き飛ばしてしまう 。
そんな神廼の横で 、 結衣は静かに立ち上がった 。
「 次 、 うちが守る 」
「 お 、 頼もしい! 」
「 せやろ 」
「 自分で言うんかい 」
「 言う 」
その返しに 、 神廼は吹き出した 。
笑いながらも 、 次のラリーに備える 。
ふたりの呼吸は 、 少しずつ合ってきていた 。
少し前までは 、 神廼と結衣は真逆のように見られていた 。
神廼はいつも明るくて 、 勢いで突っ走る 。
結衣はふわっとしていて 、 何を考えているのか読めない 。
けれど 、 バレーの中では 、 不思議と噛み合う 。
神廼が空気を上げると 、 結衣がその流れを逃さない 。
結衣が相手の隙を読むと 、 神廼が一気に畳みかける 。
まるで違う形のまま同じ方向を向いているみたいだった 。
「 神廼さん 」
「 ん? 」
「 今の 、 ちょい怖かったで 」
「 え 、 そう? 」
「 せや 。 なんか 、 テンションだけで飛び込んでた 」
「 バレた? 」
「 そらバレる 」
神廼は「 えへへ 」と笑って頭をかいた 。
「 でもさ 、 結衣が拾ってくれるって思ってたし 」
その言葉に 、 結衣は一瞬だけ黙る 。
普通なら無茶だと怒るところかもしれない 。
でも結衣は 、 悪びれもしない顔でそう言う 。
「 ……ほんま、よう分からん人やな 」
「 褒めてる? 」
「 たぶん 」
「 よっしゃ! 」
神廼は両手を上げて喜んだ 。
その様子に 、 結衣はつい口元をゆるめる 。
試合は最後まで続いた 。
ラリーが長くなるたびに 、 神廼は声を出し続ける 。
「 いける! 」
「 まだまだ! 」
「 次ある! 」
そのたびチームの空気が少しずつ前を向いた 。
そして最後の一本 。
結衣が高く上げたボールを 、 神廼がしっかりと打ち込む 。
「 よっしゃああ! 」
決まった瞬間 、 神廼はその場で飛び跳ねた 。
結衣は少し遅れて、ほっと息を吐く 。
「 ……勝ったな 」
「 勝った! 」
神廼は結衣の方を向いて 、 満面の笑顔を見せた 。
「 結衣、めっちゃすごかった! 」
「 そっちこそ 。 うるさいくらい元気やった 」
「 え 、 褒めてる? 」
「 褒めてる 」
神廼は照れたように笑う 。
結衣はその笑顔を見て 、 ふっと目を細めた 。
「 まあ 、 神廼さんとやるバレー嫌いちゃう 」
「 ほんま!? 」
「 ほんま 」
「 やったー! 」
神廼は勢いよく両手を上げる 。
それを見て 、 結衣は小さく笑った 。
コートの上で交わす会話は 、 いつだって少し変で少しあたたかい 。
けれど 、 その不思議なやり取りこそがふたりを強くしていた 。
神廼は前を向く。 。
結衣はそれを受け止める 。
ふたりなら 、 もっと遠くまで行ける 。
そんな予感だけが 、 試合の余韻の中に静かに残っていた 。