文字サイズ変更

花火〜向夏の場合〜

花火が打ち上がるたびに、大きい音がお腹に響く。
「ちょっと葵凪、見てみて!今の、向日葵の形だった!」
親友の葵凪の肩を揺らすと、彼女はびっくりしたみたいに目を見開いた。
「ぇ?」
まったく〜、葵凪ったらさては寝てたな?それか、先輩のことでも考えてたか。
中学の頃からの親友の葵凪は、ああ見えて好きな人ができやすい。まだ恋したことがない私にはよくわかんないけど、葵凪の顔を見るときっと幸せで楽しいことなんだろうなって思う。
スマホを構えながら肉眼でも花火を見るという器用なことをしている日花を見て、そういえばこいつも恋人ができたんだっけと思い出す。
私の親友たちが幸せそうで、満足満足。
だけど、最近ちょっとだけ焦る。
高校に入ってからクラスの友達はみんな、好きな人ができたとか恋人がなんとかとか、そういう話題で盛り上がってる。
みんな楽しくていい子達だけど、その時だけわたしは置いて行かれたみたいでなんだかもやもやする。
前に読んだ漫画で、恋は花火のように情熱的なんて主人公が言ってたけど、そんなもんなのかな。
今度は真っ赤な花火が空を覆って、すっごく綺麗で思わずはしゃぐ。こんなに楽しくて綺麗なもの、楽しまなきゃ損だよね!
隣から日花が呆れた視線を送ってきたから、笑顔でピースしてみたけど動画に撮ってはくれなかった。相変わらずつれないなぁ。

中学の時の私は、いまよりもっとあほみたいな性格だった。
すきあらばふざけてて、やりたいように生きて、おかしいと思ったことは迷わず言って。
そんな私は女子の世界で浮いてたらしい。
だんだんとクラスで話しかけられる回数が減って、ペアワークの時に一人余るようになっていって。
さすがの私でも気づいた。このままじゃダメだって。
でも、気付いたからって変われるわけでもなくて、なれない毎日に落ち込んでた。
そのときの私の唯一の救いは部活だったんだ。あそこはあったかくて、クラスで浮いてるからとか関係なくみんなが仲良くいられる最高の場所。
私が、私らしくいられる居場所。

変なところで素直になれない私は、部活が大好きな葵凪のことを茶化していじってた。でもほんとは、いつもはわりとおとなしくて控えめな方なのに、部活が大好きっていうその気持ちだけは譲らず堂々としてる葵凪のことを尊敬してた。あと、ちょっとだけ羨ましかったり。
だからね、そんな葵凪を見てて、私も好きなものを堂々と好きって言えるようになったんだよ。
葵凪はいつも私のことを、明るくて元気ですごいって言ってくれるけど、私だって葵凪のことすごいって思ってるんだからね!

葵凪と日花は、部活がない時も毎日一緒に帰ってくれて、ずっと一緒にいてくれて、大好きな親友たち。私にとっての一番はもちろん2人だし、心のどこかでは2人にとっての一番もお互いだと思ってた。
だから、二人に特別な人ができて、私は、、、。
よくわかんないもやもやした気持ちになってる。

でもま、いっか。難しいこと考えるより私にとっては目の前の友達と花火の方が大事。
「あ、フィナーレ」
「ほんとだ!」
日花の声に反応して叫ぶ。いよいよだ。毎年、これを楽しみに来てるくらいなんだから!
次々と白い光が打ち上がって、ぱっと花開く。
葵凪は去年、花火が打ち上がる瞬間が一番好きって言ってたけど、私はどっちかというと一番盛り上がるとこが好きかな〜。華やかで楽しいもん。
白い光が夜空を埋め尽くして、真っ白に染めていく。なんだか、紺色を塗りたくった画用紙に白い絵の具を溶かしたみたい。なーんて、元美術部らしいこと言ってるね私!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「来年も見に行こうね!」
「約束!」
葵凪たちと指切りしてから、浮かんだ涙を拭って歩き出す。
ふと葵凪が立ち止まってスマホを開く。と同時に、すごくびっくりした顔をして固まってる。

「どした、葵凪」
日花が尋ねる横で、私も葵凪の顔を覗き込む。
どうしたんだろ、葵凪。ちょっとだけ心配。
だったけどーーー。
大丈夫そう。だって、夏が始まったばっかりに会ったあの時とは全然違う顔をしてる。
あの時の葵凪、なんだか周りを気にしてうまく笑えてなかったもん。部活が大好きって宣言してたあの頃の葵凪じゃないって思った。
あそこでまた、中学の時みたいに笑い合えたあの時間のおかげで、私も葵凪も日花もみんな、毎日を楽しめるエネルギーを充電できたのかな。
覚悟を決めたかのように葵凪が叫ぶ。
その言葉に私たちは笑って頷いた。葵凪にとって今一番大事な人に会いに行くのかも。
でもきっと、葵凪にとって私と日花もおんなじくらい大事な存在だって信じられる。
「また遊ぼうね、葵凪!」
私たちに手を振ってから駆け出した葵凪のポシェットには、いつかプレゼントした向日葵のキーホルダーが揺れていた。

作者メッセージ

「花火」の向夏目線です!

2026/08/13 20:36

ぱっぱ
ID:≫ 2x0.i.yGLoFtM
コメント

クリップボードにコピーしました

この小説につけられたタグ

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はぱっぱさんに帰属します

TOP