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花火

花火大会なんて、遠くからキラキラ光る花火を仲のいい友達と見に行くだけのイベント。
帰り道、写真フォルダを開くと見返さない動画と写真がたくさん残るのに消せない。それでもなぜか、毎年この季節になると花火を見に、夏の大三角の下を歩いていつもの湖岸公園に向かってしまう。

「あ、[漢字]葵凪[/漢字][ふりがな]なぎ[/ふりがな]ー!こっちこっち!」
「お待たせ、[漢字] 向夏[/漢字][ふりがな]こなつ[/ふりがな]」
「もうすぐ[漢字]日花[/漢字][ふりがな]ひばな[/ふりがな]も付くみたいだよ」
紺色の生地が向日葵の柄で彩られた大人っぽい浴衣を着た向夏は袖をはためかせながら笑う。彼女のスマホケースに中学時代、わたしと向夏、それから日花の三人で撮ったプリクラが大切に仕舞われているのが見えた。
「二人とも、遅れてごめん!」
「日花やっと来たー!私と葵凪も今来たとこだよ〜」
「今来たとこって、付き合いたてのカップルかよ」
そう言って微笑む日花の髪は編み込まれて、白い向日葵のヘアピンが差し込まれている。そういえばこないだ、先月の誕生日に恋人からもらったものだと嬉しそうに話していた。
そして、わたしのポシェットにはレジンで作られた向日葵のキーホルダーが揺れている。
三人で見る場所を探しながら草むらを歩き回る。花火を見に来た人たちの顔をふと見回すと、みんな笑顔に溢れていた。
そっか、きっとみんな友達とか家族、恋人とか好きな人と一緒に来たんだ。
大切な人が隣にいる。それだけで十分、幸せになれる。
わたしだって今、大切な人たちと一緒に花火に行けてとても幸せ。だけど、高校に入ってからもう一人、こういう時にそばにいて欲しい人ができた。
でも先輩はきっと、花火を見に行くよりも家でヘッドフォンで音楽を聴きながら小説を読む方が好きなんだろうな。そんな姿が目に浮かんで思わずくすっと笑う。部活以外でも、会いたいな。なのに、誘う勇気がない。だってあの人、ちょっと独特だから、余計に怖いんだ。
なんて言い訳して、ため息をつく。

時間を確認しようとスマホを取り出しかけたけど、花火が打ち上げられる音が聞こえてそのままポシェットに戻した。
白くて鋭い光が暗闇を突き抜けるこの瞬間が一番好き。だってワクワクするから。自然と頬が緩む。
その光はぱっと開いて夜空を彩る。赤、黄色、緑、水色が弾けて舞い、やがて夜空の闇に溶けていく。
まるで、バケツの水に溶けた絵の具みたいに。

ここにいるみんな、スマホ越しに花火を見ている。
だけどわたし、今年は画面を通さずに見ようかな。だってその方が色鮮やか。
ちらっと日花を見ると、彼女はスマホを構えながら生で花火を見るという器用なことをしていた。さすが、好きな曲を聴いてYouTubeを観ながらテスト勉強をしてそれなりの点数を取っていた日花らしいな。高校入ってから英語で28点とったとか言ってたけど。
その隣では向夏が、カラフルな花火にいちいち反応して目を輝かせている。

ふと、花火じゃない小さな光に気づいた。
夜空に咲く華やかな光に目を奪われて、暗闇の片隅で控えめにわたしたちを見下ろしている青い星にはきっと誰も気づいていない。
だけどもしかしたら、あの星だっていつもは一等星なのかも。だって、強い光にも掻き消されずに静かに、だけど凛と瞬いている。強いなぁと目を細める。わたしだったら、周りのせいにしてあきらめてしまう。そんなわたしに教えてくれてるのかな、あの星は。変わりたいんなら、周りのせいにするんじゃなくて、自分が頑張らないとって。
あの一等星は、まるで先輩みたい。どんな場所でも変わらずに、自分のまま輝いている。

先輩、今どうしてるかなぁ。同じ空、見上げてるかな。

「ちょっと葵凪見てみて!今の、向日葵の形だった!!」
「え?」
慌てて見上げた頃には、向日葵だったものは細かい塵になってキラキラと湖に降っていった。
「も〜、ぼーっとしてるから」
それにしても、と向夏は続ける。
「なんか好きだな、この空気。みんなが楽しそうで、あったかい」
「あー、なんかわかる気がする」
みんな、花火を楽しもうという情熱は持ってるけど、後ろに立ってる人の邪魔になっていないか、自分のせいで見えづらくなっている人はいないかって考えて、気遣ってる。だからこの空間は、暑くて熱くてあったかい。
「あ、いよいよフィナーレ」
「ほんとだ!」
お腹に響くどっしりした音が次々に鳴り響いて、いくつもの光が夜空を突き抜けて。
真っ白な花が、たくさん、本当にたくさん咲いた。夜空を埋め尽くすように。暗闇を塗り替えるように。
それでもさっきの星は薄く光っていた。
花火はあっという間に、余韻を残して散っていった。季節外れの雪が、湖に降り注ぐ。
すごかった、、、。
名残惜しくてまだ立ち上がらずにいると、次の瞬間会場が拍手に包まれた。
きっと、打ち上げてくれた人たちと、夜を彩ってくれた花火にありがとうって。
あぁ、本当に、あったかいな、ここは。
うっすら涙を浮かべている向夏と、まだスマホを構えたままの日花も、星を見上げて拍手をしている。
ありがとう、今年も楽しかったです。
そんな気持ちが空に届いてほしくて、わたしも拍手する。あの星にも、届いていますように。
「来年も、見に行こうね」
「もちろん!」
三人で指切りしてから、再び歩き出す。

時間を見ようと今度こそスマホを開く。すると、一件の通知が来ていた。
10分前にラインが来ていたらしい。
条件反射でタップすると、一方的に見慣れたアイコンから。
「、、、っ!?」
そのアイコンが誰のものか気づくまで3秒かかった。
気づいた途端、心臓が激しく暴れだす。血液が全身に送り込まれる感覚がやけにはっきりわかった。
先輩からだ。
《葵凪、花火大会来てる?》
震える指で、はいとだけ打って送信する。
「どした、葵凪」
不思議そうな顔で二人が尋ねる。
「〜〜っ、ごめん向夏、日花。先帰ってて!」
「うん?わかった、気をつけてね」
「また遊ぼうね、葵凪!」
「うん!ふたりともありがとう」
二人に手を振ってから駆け出して、深く息を吸う。夏の夜の蒸し暑いけどどこか涼やかな空気が胸いっぱいに入ってきた。
一気に文章を打ってそのまま送る。
肌を破って心臓が飛び出てくるんじゃないかって思うくらい、ドキドキしてる。珍しく、すぐに既読がついた。
《いいよ》
短い返事と同時に、電話がかかってきた。
「もっ、もしもし!!ごごご機嫌ようっ!?」
『こんばんは。どうしたの?急に電話したいって』
演劇部で鍛えた発声のせいで恐ろしく大きな声が出て、恥ずかしさのあまり頭を抱える。緊張して謎すぎる挨拶になってしまったわたしにも動じずに会話を進めてくれる。
さすが部内一のマイペースの権化。
「ぁ、、あの。今度、ふたりでどこか行きませんかっ?」
足が震える。沈黙に心が耐えきれず、いつもみたいに笑って誤魔化したくなるけど、必死にこらえる。
ここで逃げたら、後悔する。だって。
変わりたいんなら、自分が頑張るしかない。
先輩の反応が読めなくて怖いからとか、あの子の方がお似合いだとか。全部、周りのせいにしているだけ。周りの強い光に埋もれようとしているだけ。
少しでもいいから、自分の力で輝くんだ。

『、、、いいよ?』
「ああぁあありがとうございますっ!!」
慌ててかぶせるように言うとまた思い切り噛んで、自分でも笑っちゃう。不格好になっちゃったけど、言えた。
しかも、あの先輩と部活以外でも会えるんだ!まさかokしてもらえるとは思わなかったな。
自分で掴んだ未来にワクワクしながら、天を仰ぐ。
空には、さっきの一番星、きっと中学の時向夏たちと見上げたあの星が瞬いていた。

作者メッセージ

急いで書いたのでぐだぐだになってますすいません!😢
コメントいただけると嬉しいです!!!

2026/08/13 20:37

ぱっぱ
ID:≫ 2x0.i.yGLoFtM
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