生きる意味
#1
1章
目を開けると視界が薄紫色に染まった。淡い黄色や柔らかいピンク色の光が辺りを照らす。
こんなのまるで、、、
「、、、天国?」
「おやおや、お目覚めですか、かわいいお嬢さん。御名答、、、と言いたいところだけど、残念!ここは天国じゃないよ〜」
だ、だれこの男!?着崩した何かの制服を着て、ピアスをじゃらじゃら鳴らしている。見るからにチャラそう。そんなことより、と私は辺りを見渡す。
「ここはどこだって顔だね、玲奈ちゃん。まあ、無理もないか〜」
「そりゃそうでしょ、っていうか、なんで貴方私の名前知ってるの!?」
「あ、、えっとその、、、此岸からこちらに必要書類が送られてきてですね、、、」
「はぁ?」
必要書類って何よ。それに、しがん、、、?志願?ああ、此岸か。
なぜかあたふたしてる彼に目を向けると、彼は取り繕ったような笑みを浮かべた。
「いろいろ気になることがあるけど、まあいいわ。それより、此岸って言ったわよね?私、死んだの?」
そう言うと彼は唇の端をにっと上げた。
笑うと意外とかわいいー、こともない。
「いいや、死んだわけじゃない。簡単に言うと、玲奈ちゃんはいま、生と死の間を彷徨ってるってワケ。生きてもないけど、死んでるわけじゃない」
それにしても、と彼は続ける。
「自分が死にかけてるのに、玲奈ちゃんはずいぶん落ち着いてるね?」
「、、、まあね。別に生きてても、いいことないし」
「そっか」
彼の顔が少し曇った。まあ当然だよね、生きてる間は誰にも言えなかったこと。
でもそれも一瞬で、彼はまた余裕の笑みを浮かべた。
「そういえばね、レイちゃん知ってる?」
「、、、なにを?」
いきなり馴れ馴れしくなったな、、、元からだけど。
「さっき言ったよね、君はまだ死んでるわけじゃないって。生き返る方法、ないこともないんだよ?」
「あ、そう」
「あれ!?反応薄い!?!?」
「だって、、、」
私なんかが戻ったって、誰も喜ばない。
生きてた頃。ある程度顔が整ってたおかげで異性にはモテてた。だけど、その容姿と内気な性格で女子からはあまりよく思われていなかった、当然友達なんてひとりもいない。
「生き返っても、やることないしね」
私の言葉は、静かな天国に虚しく響いた。
ーーーーーーーーーー
「そういえば、貴方の名前は?」
名前だけじゃなく、私は彼のことをなんにも知らない。なんでここにいるのか、何歳なのか。
まあ年齢は私と近そうだけど。
「これはこれは、申し遅れました」
彼は芝居がかった仕草で礼をする。
「ボクの名前は天翔。元はレイちゃんみたいに此岸で普通に生きてたよ。だけど、ちょっとした病気にかかって死んじゃった」
「そう、なの。今はここで何してるの?まさか、ナンパってわけじゃないんでしょ?」
「レイちゃんみたいにかわいい女の子は誘っちゃうかも。今は、ここの受付係をやってるよ。レイちゃんみたいな子に、ここの事を説明するの」
なんでもかんでも私を引き合いに出すのはやめてほしい。
でも確かに、チャラいとはいえコミュ力も高くて顔もまあ、、、かっこいい彼は、接待業に向いてるかも。
「それから、ボクのことはテンって呼んでほしいな。、、、生きてた頃は、みんなにそう呼んでもらってたから」
「わ、わかった」
そうしおらしく言われたら断れないじゃない。私は思わずため息をついた。
「レイちゃんはしばらく、ここに住むんだよね?じゃあ、住むとこ紹介してあげる!」
「ありがとう。あと、しばらくじゃなくて、ずっとね。」
彼ーテンは、私の手を握って歩き出す。繋いだ彼の手は、じんわり温かかった。
ーーーーーーーーーー
彼に手を引かれ着いたところは、シンプルだけどオシャレな一戸建て。
家具も私が好きな水色で揃えてあって居心地がいい。これからここに住むことを考えると心が躍る。
「なんやかんやで疲れたでしょ、レイちゃんも。ボクは他にも仕事があるから、一旦戻るね〜」
また明日!と元気に手を振られ、思わず振り返す。ほんと、元気な人だな。
それにしても、ここは気が楽。関わらなきゃいけないのはテンだけだし、彼になら変な気を遣わないですむ。人付き合いが苦手な私にとっては、まるで天国みたい。あ、実際天国だけど。
ふかふかなベッドに腰掛けると、改めて疲れがどっと襲ってきた。柔らかいクッションに身を埋めるのが気持ちいい。
きっとテンは友達、多いんだろうな。私もできることなら欲しかったよ。
でも、内気な上に同性に煙たがられてるんだから仕方ない。
ふいにハッとする。そういえば、、、ひとりだけ、いた。
SNS上で仲良くなった、いわゆるネッ友だけど私にとっては大事な心の支え。いつも私に優しい言葉をかけてくれて、楽しく会話できる唯一の友達。
たしか、ハンドルネームは「あま」。天と書いてあまと読むらしい。あま、元気かな。陽気で楽しい雰囲気ってとこはテンに似てるような。
って、あまに失礼だよね、あんなやつと一緒にするなんて。
考え事をしすぎて頭がぐちゃぐちゃになってきた。謎の多いテンのことも考えたかったけどもう限界。
難しいことは明日考えることにして、もう寝よう。
パチン、と電気を落とすと、いっきに真っ暗闇に包まれた。
ーーーーーーーーーー
うっすら目覚ましが鳴っている。うるさいな、どこだ、、、?
目を開けると、水色基調の部屋の中。えーっと、そうだ、私天国にいるんだった!
どうせならもっとゆっくり寝ればよかった、大嫌いな学校もないんだし。目覚ましなんかセットしたの、誰よ。昨日の晩の私だ。
昨日は疲れすぎていて、服も着替えずに寝てたみたい。おかげでお気に入りのワンピースがくしゃくしゃ。
違う服に着替えて外に出ると、暇そうなテンと出くわした。
「レイちゃんおはよう!早起きだね、昨日はよく眠れた?」
「まあね。それより、テンも早起きじゃない。もっと遅寝遅起きだと思ってた」
「ひどいな〜ボクは規則正しい生活を送ってるからね。」
テンって呼んでくれるんだ、と顔をくしゃっとさせて笑う彼。初めて見たそんな表情に、少しドキッとする。ほんとに少しだけだけど。
朝の天国もとっても綺麗。空の上の方は爽やかな水色で、地面の近くは柔らかいサンイエロー。透き通った湖を太陽が優しく照らしてくれてる。
「テン。私昨日から気になってたんだけど、その髪型なんなの?後ろがハネてる」
「レイちゃん知らないの?これが今のトレンドだよ〜」
「天国にもトレンドとかあるんだ」
くだらない会話をしつつ、もうひとつ気になってたことを聞いてみる。
「そういえばさ、私ってなんで、どうやって死んだの?」
昨日は気にならなかった違和感。私、なにか大事なことを忘れてる気がする。
天国の受付人なんだから、死因(まだ死んでないらしいけど)くらい知ってるだろう。
「死因か〜。知ってるけどね?ボク、それはレイちゃんにもうちょっと考えて欲しいんだ」
「考える、、、?考えて、わかるものなの?」
死因なんて、思い出せるものなの?
「うん。きっと、大事なことを思い出すんじゃないかな」
テンの声が妙に落ち着いていてで思わず顔を見上げると、彼は見たこともないくらい静かな顔をしていた。そこには今まで見てきた軽い笑顔はなくて、新鮮で目が離せなくなる。
それに気づいたのかテンは、いつもの笑顔でニコッと笑った。
ーーーーーーーーーー
考えたって、わかるかぁーー!
思わず私は心の中でそう叫ぶ。さすがに声には出さないけど。
テンに真剣な顔で無茶振りされてから一日。
自分の死因を考えろって言われても、記憶にないんだから思い出しようがない。テンは少し離れたとこれでニコニコしながら私を眺めてる。仕事ないのかな。
思い出そうと必死に頭をひねっても、なぜか気づくとテンのことを考えてしまう。
テンは本当に謎が多い人。どうして私の名前を知ってるのか、なぜ死んだのか、聞いても曖昧にはぐらかされる。
病気で死んじゃったって言っても、なんの病気なのかもわかんないし。なんだか考えすぎて頭がぼんやりしてきた。ここに来てからは考えてばっかだ。
思いきって聞いちゃえ。
「ねえ、テン。貴方前に、病気で死んじゃったって言ってたよね?なんの病気だったの?」
「あれ、レイちゃんにはまだ言ったなかったっけ。」
テンは一度息を吸い込んで、それから吐き出すように言った。
「膵臓がんだよ」
世界から、音が消えた。呼吸が浅くなったのか息が苦しい。
だって、その病気は、、、。
「私のお父さんの命を奪った病気と、同じ、、、」
こんなのまるで、、、
「、、、天国?」
「おやおや、お目覚めですか、かわいいお嬢さん。御名答、、、と言いたいところだけど、残念!ここは天国じゃないよ〜」
だ、だれこの男!?着崩した何かの制服を着て、ピアスをじゃらじゃら鳴らしている。見るからにチャラそう。そんなことより、と私は辺りを見渡す。
「ここはどこだって顔だね、玲奈ちゃん。まあ、無理もないか〜」
「そりゃそうでしょ、っていうか、なんで貴方私の名前知ってるの!?」
「あ、、えっとその、、、此岸からこちらに必要書類が送られてきてですね、、、」
「はぁ?」
必要書類って何よ。それに、しがん、、、?志願?ああ、此岸か。
なぜかあたふたしてる彼に目を向けると、彼は取り繕ったような笑みを浮かべた。
「いろいろ気になることがあるけど、まあいいわ。それより、此岸って言ったわよね?私、死んだの?」
そう言うと彼は唇の端をにっと上げた。
笑うと意外とかわいいー、こともない。
「いいや、死んだわけじゃない。簡単に言うと、玲奈ちゃんはいま、生と死の間を彷徨ってるってワケ。生きてもないけど、死んでるわけじゃない」
それにしても、と彼は続ける。
「自分が死にかけてるのに、玲奈ちゃんはずいぶん落ち着いてるね?」
「、、、まあね。別に生きてても、いいことないし」
「そっか」
彼の顔が少し曇った。まあ当然だよね、生きてる間は誰にも言えなかったこと。
でもそれも一瞬で、彼はまた余裕の笑みを浮かべた。
「そういえばね、レイちゃん知ってる?」
「、、、なにを?」
いきなり馴れ馴れしくなったな、、、元からだけど。
「さっき言ったよね、君はまだ死んでるわけじゃないって。生き返る方法、ないこともないんだよ?」
「あ、そう」
「あれ!?反応薄い!?!?」
「だって、、、」
私なんかが戻ったって、誰も喜ばない。
生きてた頃。ある程度顔が整ってたおかげで異性にはモテてた。だけど、その容姿と内気な性格で女子からはあまりよく思われていなかった、当然友達なんてひとりもいない。
「生き返っても、やることないしね」
私の言葉は、静かな天国に虚しく響いた。
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「そういえば、貴方の名前は?」
名前だけじゃなく、私は彼のことをなんにも知らない。なんでここにいるのか、何歳なのか。
まあ年齢は私と近そうだけど。
「これはこれは、申し遅れました」
彼は芝居がかった仕草で礼をする。
「ボクの名前は天翔。元はレイちゃんみたいに此岸で普通に生きてたよ。だけど、ちょっとした病気にかかって死んじゃった」
「そう、なの。今はここで何してるの?まさか、ナンパってわけじゃないんでしょ?」
「レイちゃんみたいにかわいい女の子は誘っちゃうかも。今は、ここの受付係をやってるよ。レイちゃんみたいな子に、ここの事を説明するの」
なんでもかんでも私を引き合いに出すのはやめてほしい。
でも確かに、チャラいとはいえコミュ力も高くて顔もまあ、、、かっこいい彼は、接待業に向いてるかも。
「それから、ボクのことはテンって呼んでほしいな。、、、生きてた頃は、みんなにそう呼んでもらってたから」
「わ、わかった」
そうしおらしく言われたら断れないじゃない。私は思わずため息をついた。
「レイちゃんはしばらく、ここに住むんだよね?じゃあ、住むとこ紹介してあげる!」
「ありがとう。あと、しばらくじゃなくて、ずっとね。」
彼ーテンは、私の手を握って歩き出す。繋いだ彼の手は、じんわり温かかった。
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彼に手を引かれ着いたところは、シンプルだけどオシャレな一戸建て。
家具も私が好きな水色で揃えてあって居心地がいい。これからここに住むことを考えると心が躍る。
「なんやかんやで疲れたでしょ、レイちゃんも。ボクは他にも仕事があるから、一旦戻るね〜」
また明日!と元気に手を振られ、思わず振り返す。ほんと、元気な人だな。
それにしても、ここは気が楽。関わらなきゃいけないのはテンだけだし、彼になら変な気を遣わないですむ。人付き合いが苦手な私にとっては、まるで天国みたい。あ、実際天国だけど。
ふかふかなベッドに腰掛けると、改めて疲れがどっと襲ってきた。柔らかいクッションに身を埋めるのが気持ちいい。
きっとテンは友達、多いんだろうな。私もできることなら欲しかったよ。
でも、内気な上に同性に煙たがられてるんだから仕方ない。
ふいにハッとする。そういえば、、、ひとりだけ、いた。
SNS上で仲良くなった、いわゆるネッ友だけど私にとっては大事な心の支え。いつも私に優しい言葉をかけてくれて、楽しく会話できる唯一の友達。
たしか、ハンドルネームは「あま」。天と書いてあまと読むらしい。あま、元気かな。陽気で楽しい雰囲気ってとこはテンに似てるような。
って、あまに失礼だよね、あんなやつと一緒にするなんて。
考え事をしすぎて頭がぐちゃぐちゃになってきた。謎の多いテンのことも考えたかったけどもう限界。
難しいことは明日考えることにして、もう寝よう。
パチン、と電気を落とすと、いっきに真っ暗闇に包まれた。
ーーーーーーーーーー
うっすら目覚ましが鳴っている。うるさいな、どこだ、、、?
目を開けると、水色基調の部屋の中。えーっと、そうだ、私天国にいるんだった!
どうせならもっとゆっくり寝ればよかった、大嫌いな学校もないんだし。目覚ましなんかセットしたの、誰よ。昨日の晩の私だ。
昨日は疲れすぎていて、服も着替えずに寝てたみたい。おかげでお気に入りのワンピースがくしゃくしゃ。
違う服に着替えて外に出ると、暇そうなテンと出くわした。
「レイちゃんおはよう!早起きだね、昨日はよく眠れた?」
「まあね。それより、テンも早起きじゃない。もっと遅寝遅起きだと思ってた」
「ひどいな〜ボクは規則正しい生活を送ってるからね。」
テンって呼んでくれるんだ、と顔をくしゃっとさせて笑う彼。初めて見たそんな表情に、少しドキッとする。ほんとに少しだけだけど。
朝の天国もとっても綺麗。空の上の方は爽やかな水色で、地面の近くは柔らかいサンイエロー。透き通った湖を太陽が優しく照らしてくれてる。
「テン。私昨日から気になってたんだけど、その髪型なんなの?後ろがハネてる」
「レイちゃん知らないの?これが今のトレンドだよ〜」
「天国にもトレンドとかあるんだ」
くだらない会話をしつつ、もうひとつ気になってたことを聞いてみる。
「そういえばさ、私ってなんで、どうやって死んだの?」
昨日は気にならなかった違和感。私、なにか大事なことを忘れてる気がする。
天国の受付人なんだから、死因(まだ死んでないらしいけど)くらい知ってるだろう。
「死因か〜。知ってるけどね?ボク、それはレイちゃんにもうちょっと考えて欲しいんだ」
「考える、、、?考えて、わかるものなの?」
死因なんて、思い出せるものなの?
「うん。きっと、大事なことを思い出すんじゃないかな」
テンの声が妙に落ち着いていてで思わず顔を見上げると、彼は見たこともないくらい静かな顔をしていた。そこには今まで見てきた軽い笑顔はなくて、新鮮で目が離せなくなる。
それに気づいたのかテンは、いつもの笑顔でニコッと笑った。
ーーーーーーーーーー
考えたって、わかるかぁーー!
思わず私は心の中でそう叫ぶ。さすがに声には出さないけど。
テンに真剣な顔で無茶振りされてから一日。
自分の死因を考えろって言われても、記憶にないんだから思い出しようがない。テンは少し離れたとこれでニコニコしながら私を眺めてる。仕事ないのかな。
思い出そうと必死に頭をひねっても、なぜか気づくとテンのことを考えてしまう。
テンは本当に謎が多い人。どうして私の名前を知ってるのか、なぜ死んだのか、聞いても曖昧にはぐらかされる。
病気で死んじゃったって言っても、なんの病気なのかもわかんないし。なんだか考えすぎて頭がぼんやりしてきた。ここに来てからは考えてばっかだ。
思いきって聞いちゃえ。
「ねえ、テン。貴方前に、病気で死んじゃったって言ってたよね?なんの病気だったの?」
「あれ、レイちゃんにはまだ言ったなかったっけ。」
テンは一度息を吸い込んで、それから吐き出すように言った。
「膵臓がんだよ」
世界から、音が消えた。呼吸が浅くなったのか息が苦しい。
だって、その病気は、、、。
「私のお父さんの命を奪った病気と、同じ、、、」