初夏の夕方に蝉の声を聞くのも、なかなか風情があっていいんじゃないか。暑いのは好きじゃないけど、蝉の声だけはなんだか好きだ。
そういえば、父さんも蝉が好きだったっけな、、、。
僕がしんみりした思いに浸っていると。
「やっほー宙知くん!ごめんね待った?」
彼女は空気を読むということを知らないのか。僕が彼女の立場だったら、話しかけていいのか分からずにその場で5分くらいは立ち止まってしまいそうだ。
「いや、待ってないよ。というか、君が手に持ってるそれは何?」
「そっかーよかった!ん?ああ、宙知くん知らないの?これはね、天体望遠鏡だよ!」
それくらいは知ってるけどさ。なんでこの場に望遠鏡なんか持ってきてるんだって聞いてるんだよ。
僕の心の声を察したのか、明星さんが理由を解説してくれた。
「ほら、この間宙知くんと天体観測できなかったでしょ?だから、そのリベンジ!」
「な、なるほど」
彼女は望遠鏡の扱いに慣れているのか、手際よく準備を進めていく。
雰囲気に流されて星を見ることになってしまったけど、僕の本来の目的は天体観測じゃない。
星を見たくてウキウキしてるであろう明星さんには申し訳ないけど、ここは譲れない。
「あ、あのさ、、実は、相談があって」
「ん、なに?明日の給食のプリンをよこせっていう相談以外ならなんでも乗るよ」
「残念ながら、僕は牛乳アレルギーだからプリンは食べないんだ」
そんな余計な会話をしながらも、僕は自分の目的を簡潔に話す。
僕は自分が嫌いで、変わりたいと思っていること。明星さんみたいに輝いた人生を送りたいこと。
そのために、明星さんの生き方を参考にしたいと思っていること。
父さんの死がきっかけでそう思ったことや、今の家庭環境については、なんとなく触れなかった。
まあ、父さんが死ぬ前から、自分のことは嫌いだったんだけどさ。
「ふむふむ、なるほどね!」
さっきから真剣に聞いてくれてたのに、彼女はそう言ったきりずっと望遠鏡を触っている。
デート中にスマフォばっかり触っている彼氏に対する彼女の苛立ちはこんな感じなのかな。
もっとも明星さんは僕の彼女でもなんでもないけど。
しばらくすると彼女は顔を上げて満足そうな表情で頷いた。
「見て見て、宙知くん。ケフェウスが見えるよ!」
「へ?」
いきなりどうしたんだろう。そう思いながらも彼女の言う通り望遠鏡を覗いてみると。
そこには、せいぜい4等星か5等星程度の地味な星が映っていた。暗くて目立たない。まるで僕みたいな星だなとひとりで自嘲する。
すると彼女は言った。
「ねえ、知ってる?」
「、、、何を?」
「この星ーー、ケフェウスはね別名ガーネットスターって呼ばれてるんだ。今は4等星だけど、もしこの星を地球から太陽までの距離と同じくらい近づけたらね。なんと、太陽の30万倍以上も明るくなるんだよ!!」
「へえ、、、」
すごい星だな。太陽よりも明るく輝けるなんて。僕に例えてしまったのが申し訳ないくらいだ。
だけど、、
「それって、僕の話に関係があるの?」
「あるある、大ありだよ!」
彼女は鼻息荒く頷いた。
「明るさが魅力に比例するんだとしたらだよ、つまり星って近づくほど魅力を知ることができるんじゃないかな!それって、人にも同じことが言えるんじゃない?」
ーーなるほど。
表面上だけの付き合いじゃなくて、もっと本音でぶつかれたら、深い関係になれたら、より魅力が輝くのではないか。
彼女は、そう言っているのか。
さすがだな、明星さんは。友達も沢山いて、みんなの人気者で。僕とは違う視点から物事を見るんだ。
彼女の言う通りにやってみれば、僕のなりたいような姿に近づけるかもしれない。そう思うと自然とワクワクしてきた。
だけど。僕にはそんな関係の人はいない。いまさらそんな関係の人を作れるほどコミュ力が高いわけでもない。
前はアイツがいたけど、僕はアイツに、許されないことをしたから。だから無理だな。
「ありがとう明星さん。参考にしてみるよ」
そう言って僕は立ち去ろうとした。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
急に彼女が焦った声を出した。確かに、一方的に相談だけして帰るのは失礼だったか。
「ごめん、どうしたの?」
「いや、その、、、さ」
珍しく口ごもる彼女を不思議に思って見つめると、彼女は深呼吸をして一気にその言葉を吐き出した。
「この一夏だけでいいから、、、宙知くんの時間をわたしにちょうだい!!」
「、、、、え?」
夏の訪れはすぐそこまで来ている。
そういえば、父さんも蝉が好きだったっけな、、、。
僕がしんみりした思いに浸っていると。
「やっほー宙知くん!ごめんね待った?」
彼女は空気を読むということを知らないのか。僕が彼女の立場だったら、話しかけていいのか分からずにその場で5分くらいは立ち止まってしまいそうだ。
「いや、待ってないよ。というか、君が手に持ってるそれは何?」
「そっかーよかった!ん?ああ、宙知くん知らないの?これはね、天体望遠鏡だよ!」
それくらいは知ってるけどさ。なんでこの場に望遠鏡なんか持ってきてるんだって聞いてるんだよ。
僕の心の声を察したのか、明星さんが理由を解説してくれた。
「ほら、この間宙知くんと天体観測できなかったでしょ?だから、そのリベンジ!」
「な、なるほど」
彼女は望遠鏡の扱いに慣れているのか、手際よく準備を進めていく。
雰囲気に流されて星を見ることになってしまったけど、僕の本来の目的は天体観測じゃない。
星を見たくてウキウキしてるであろう明星さんには申し訳ないけど、ここは譲れない。
「あ、あのさ、、実は、相談があって」
「ん、なに?明日の給食のプリンをよこせっていう相談以外ならなんでも乗るよ」
「残念ながら、僕は牛乳アレルギーだからプリンは食べないんだ」
そんな余計な会話をしながらも、僕は自分の目的を簡潔に話す。
僕は自分が嫌いで、変わりたいと思っていること。明星さんみたいに輝いた人生を送りたいこと。
そのために、明星さんの生き方を参考にしたいと思っていること。
父さんの死がきっかけでそう思ったことや、今の家庭環境については、なんとなく触れなかった。
まあ、父さんが死ぬ前から、自分のことは嫌いだったんだけどさ。
「ふむふむ、なるほどね!」
さっきから真剣に聞いてくれてたのに、彼女はそう言ったきりずっと望遠鏡を触っている。
デート中にスマフォばっかり触っている彼氏に対する彼女の苛立ちはこんな感じなのかな。
もっとも明星さんは僕の彼女でもなんでもないけど。
しばらくすると彼女は顔を上げて満足そうな表情で頷いた。
「見て見て、宙知くん。ケフェウスが見えるよ!」
「へ?」
いきなりどうしたんだろう。そう思いながらも彼女の言う通り望遠鏡を覗いてみると。
そこには、せいぜい4等星か5等星程度の地味な星が映っていた。暗くて目立たない。まるで僕みたいな星だなとひとりで自嘲する。
すると彼女は言った。
「ねえ、知ってる?」
「、、、何を?」
「この星ーー、ケフェウスはね別名ガーネットスターって呼ばれてるんだ。今は4等星だけど、もしこの星を地球から太陽までの距離と同じくらい近づけたらね。なんと、太陽の30万倍以上も明るくなるんだよ!!」
「へえ、、、」
すごい星だな。太陽よりも明るく輝けるなんて。僕に例えてしまったのが申し訳ないくらいだ。
だけど、、
「それって、僕の話に関係があるの?」
「あるある、大ありだよ!」
彼女は鼻息荒く頷いた。
「明るさが魅力に比例するんだとしたらだよ、つまり星って近づくほど魅力を知ることができるんじゃないかな!それって、人にも同じことが言えるんじゃない?」
ーーなるほど。
表面上だけの付き合いじゃなくて、もっと本音でぶつかれたら、深い関係になれたら、より魅力が輝くのではないか。
彼女は、そう言っているのか。
さすがだな、明星さんは。友達も沢山いて、みんなの人気者で。僕とは違う視点から物事を見るんだ。
彼女の言う通りにやってみれば、僕のなりたいような姿に近づけるかもしれない。そう思うと自然とワクワクしてきた。
だけど。僕にはそんな関係の人はいない。いまさらそんな関係の人を作れるほどコミュ力が高いわけでもない。
前はアイツがいたけど、僕はアイツに、許されないことをしたから。だから無理だな。
「ありがとう明星さん。参考にしてみるよ」
そう言って僕は立ち去ろうとした。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
急に彼女が焦った声を出した。確かに、一方的に相談だけして帰るのは失礼だったか。
「ごめん、どうしたの?」
「いや、その、、、さ」
珍しく口ごもる彼女を不思議に思って見つめると、彼女は深呼吸をして一気にその言葉を吐き出した。
「この一夏だけでいいから、、、宙知くんの時間をわたしにちょうだい!!」
「、、、、え?」
夏の訪れはすぐそこまで来ている。