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君の儚く消えた願いは。

「かっこいいなぁ……」

自分の席でそう、呟いた。
私の名前は|月雪 彩夜《つきゆき さや》。
今見ていたのは……言うまでもない、私の好きな人だ。
学年の人気者、|一ノ瀬 蒼樹《いちのせ あおき》。同じクラス。
でも、私の恋は叶わない。だって一ノ瀬くんってすっごいかっこいいし、それに……。


[水平線]


僕の名前は、一ノ瀬蒼樹。自分で言うのもあれだけど…ま、友達は多い方。
……今、月雪さんこっち見てた気がする。そういえば前もこっち見てたな。僕のこと好きなのかな~…なんて、自己意識過剰だよな。
「蒼樹?どうした?考え事?」
「あ、何でもない、笑」
周りから見てわかるほど考え事してたかな、……?
今の顔月雪さんに見られてない、?そしたら恥ずかしい……って、
なんでこんなに月雪さんのこと考えてんだろ。
……もしかして、''好き''なのかな。いや、もしかしてじゃない。
これは''好き''なんだ。行動は早い方が良い…明日、告白でもする、か。


[水平線]


「そしたらこの間弟がさぁ~w」
「えぇ、まじ~!?」
小学校からの親友の菜乃と一緒に廊下を歩く。
菜乃とは何でも言い合える仲で、好きな人が一ノ瀬くんだってことも言ってある。
あ、あれってもしかして……一ノ瀬くんだ。
ん?こっちへ向かってきてるような気がする…ま、気のせい気のせい!
「ねぇ、彩夜、一ノ瀬こっち向かってきてない?」
「え、え、まじで……?」
気のせい……じゃない!?菜乃もそう感じてるってことは……
「あの、月雪さん、放課後屋上来てくれる?」
「あ、はい…」
緊張しすぎて声が裏返ってしまったが、一ノ瀬くんはニコッと笑って去っていってしまった。恋してるからだろうか、心臓の動きが早い。いや、恋してる以外理由はないか。
というより、どうして放課後屋上になんか呼び出したんだろう……
告白……?も、もしそうだとしたら、————。


[水平線]


ついにこの時がやってきた。僕は今から月雪さんに告白をする。
実は、月雪さんの親友の菜乃さんから、月雪さんが僕のことを好きって聞いたんだよね。
だから多分、この告白は成功する…。
「あ、月雪さん」
「あの、一ノ瀬さん、どうして私をここに……?」
よし、今こそ思い切って言うべきだ。








「好きです。僕と付き合って下さい。」

















































「ごめんなさい、……」
「……え、?」
頭が追い付かない。い、今断られた……?

[水平線]


「好きです。僕と付き合って下さい。」
一ノ瀬さんは私にそう、言ってきた。嬉しかった。
でも、同時に罪悪感が私を襲った。
だって、この告白を私は断らなければいけないからだ。
だって、私は……


[水平線]

で、でも、月雪さんは僕のことを好きなはずじゃ……
厚ましいとは思いつつも、思い切って、聞いてみた。
「僕のことを好き、ではない……と、?」
「いえ、好きです。私は一ノ瀬さんを好きです。でも…」
でも…と言って、彼女は黙り込んでしまった。好きなのに何でOKと言ってくれないのだろう。
月雪さんに何か秘密でもあるのか、?
「り、理由って……聞いても、いい?」
「……実は、」











































「私、余命あと2ヶ月で…。思い残す事が何もないようにしたいから……」
「……え?」
彼女が言った言葉に、驚きと悲しみを隠せなかった。
月雪さんが今、余命という辛い思いをしているのに、
僕は何も知らずに告白なんて吞気なことをしてしまった。
「ごめんなさい、そんな理由も知らずに告白だなんて…」
「いえ、いいんです。あのー、





































 良かったら、私と一つ約束してくれませんか?」
「約束……?」
そう言って月雪さんは、大量の紙を渡してきた。
「私、死んでも一ノ瀬さんのこと大好きです。だから、……」





''私、毎年雪になって帰ってきます。だから、雪が降ったら私に手紙を送ってほしいんです''





雪になって帰ってくるだなんて、余命2ヶ月の人が笑顔で言えることではない。
でも、月雪さんは、自分が思い残すことがないように、敢えて今、笑顔で''約束''として僕に伝えてくれたのだ。約束を受け入れる以外に選択肢はなかった。
「……うん、もちろん。」
「私の願いはそれだけ、もう思い残すことはないです。じゃあ、」
そう言って彼女は走り去ってしまった。
僕は諦めきれなかった。
そうだ、1週間だけでもいいから、付き合ってもらえないかな、?
もちろん、さっきみたいな軽い気持ちでは告白しない。
彼女が余命2ヶ月ということを分かっても決断だ。
まだあと2ヶ月ある…。

言うのはまだ先でいっか。

[水平線]

一ノ瀬さんが理由を聞いてきたから、私は、
余命2ヶ月で、思い残す事が何もないようにしたいということを伝えた。
彼は啞然としていて、驚いたような、悲しいような顔をしていた。
…そんな顔されたら、こっちまでもっと悲しくなってくるじゃん、笑
そう思いつつも、私は思い切ってこう言った。
「良かったら、私と一つ約束してくれませんか?」
約束してほしい。雪になって帰ってくるから。手紙を送ってほしい。
一ノ瀬さんが、いいよ、って言うかも分かんないけど、
願いを込めて言った。
「うん、もちろん。」
一言だったけど、それで十分。
嬉しかった。でも、それと同時に別れの時期が近づいてくるのを感じた————。
「私の願いはそれだけ、もう思い残す事はないです。ありがとう。じゃあ、」
''またね''と言いたかったけれど、私は言う前に走り去った。
一ノ瀬さん……いや、蒼樹くん、大好きです。



[水平線]




次の日。僕は平然を装って教室に入り、席に座った。
もちろん、好きな人が余命2ヶ月と知って、心は穏やかではない。
すると、先生が教室に入ってきた。
先生は、いつになく暗い雰囲気を漂わせていた。
友達が、
「せ、先生ー、どうしたんですか急に暗い顔しちゃって~~」
と、ふざけたように言って場を和ませようとしたが、先生はそれどころではなかったようで、みんなの前に立って、悲しい顔をした。
「皆さん、よく聞いて下さい。












































































月雪さんは、亡くなりました…」









































先生がそう言った瞬間、何かの間違いかと思った。
だ、だって、まだあと2ヶ月もあったのに。
頭の中が真っ白で、でも教室で泣くのはみっともないと思い、涙を堪えた。
菜乃さんは声をあげて泣いている。
きっと彼女も、月雪さんの余命のことを知っていたのであろう。
「……今日は皆さん特別に帰って大丈夫です。この件で授業も耳に入らないと思いますから」
悲しそうな目をして先生が去っていった。
そりゃあ、大事な生徒を1人、亡くしたんだから無理もない。
僕も家に帰った。

家に帰った途端に、
月雪さん……彩夜さんにもう会えない。
想いをこれ以上伝えられない。
という気持ちが溢れ出して、僕は泣き崩れた。
会いたい、君に。会いたい、月雪さんに。
その瞬間、僕は、月雪さんが言った言葉を思い出した。











































「私、毎年雪になって帰ってきます。だから、雪が降ったら私に手紙を送ってほしいんです。」





















































[水平線]


月雪さんが亡くなってから、1ヶ月後。

今日は|雪が降っている《君が帰ってきている》。
僕は、手紙を書いて、君の冥福を祈った。

[水平線]

月雪さんへ、

君と約束した、
君の''願い''をちゃんと叶えたよ。
雪になって帰ってきてくれてありがとう。
僕と月雪さんは、よくある、
''両片思い''ってやつなのかな、?笑
毎年、君にもらった紙で手紙を書くから、
待っててね。

[水平線]

君と付き合うという僕の願いは、

叶えられなかった……

僕の願いは儚く消えた。

でも、

君の儚く消えた願いは……

いや、君の儚く消えそうになった願いは、

僕が''約束''として叶えたよ。

月雪さん、大好きです。

2024/04/04 11:48

Hi-na.⁓°
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