転移
「そこの若い者、ちょいと止まっておくれ」
大きな病院の敷地内にいる老人が、病院の前の歩道に向かって叫んだ。
元から人通りのかなり少ない歩道だったため、Aに声を掛けたことで間違いない。
Aは不思議に思いながらも病院の敷地内に入り、老人の方に歩みを進めた。
「どうしましたか?」
「名前は何というんだい?」
「Aですけど…」
名前を聞いた老人は嬉しそうに笑った。
「何という偶然か。私もAだ」
「奇遇ですね」
Aは反応に困りながらも、言葉を絞り出して言葉を返した。
「ふふふ、君はぴったりだ」
「はい?」
「私は今病気を患っていてな、入院しているんだ」
「そうなんですね」
「…不治の病なんだ」
突然の告白にAは困惑した。
「治療法は本当にないんですか…?」
治療法がないから"不治の病"なのだと、理解していながら聞いてしまったAは後悔した。
「…1つだけあるんだ」
「じゃあ、どうして不治の病と?」
「私が申し訳なくなってしまうんだ」
「どのような治療法なんですか?」
「転移させるんだよ、他の人の身体に移植するしか治療法はない」
老人は小さく俯いた。
「しないんですか、転移」
「私だってしたいがね」
「じゃあしましょう」
「…?」
「僕が病院に掛け合って来るので、ちょっと待っててください」
Aが病院の自動ドアに歩いて行く背中を、老人はただ見つめていた。
大きな病院の敷地内にいる老人が、病院の前の歩道に向かって叫んだ。
元から人通りのかなり少ない歩道だったため、Aに声を掛けたことで間違いない。
Aは不思議に思いながらも病院の敷地内に入り、老人の方に歩みを進めた。
「どうしましたか?」
「名前は何というんだい?」
「Aですけど…」
名前を聞いた老人は嬉しそうに笑った。
「何という偶然か。私もAだ」
「奇遇ですね」
Aは反応に困りながらも、言葉を絞り出して言葉を返した。
「ふふふ、君はぴったりだ」
「はい?」
「私は今病気を患っていてな、入院しているんだ」
「そうなんですね」
「…不治の病なんだ」
突然の告白にAは困惑した。
「治療法は本当にないんですか…?」
治療法がないから"不治の病"なのだと、理解していながら聞いてしまったAは後悔した。
「…1つだけあるんだ」
「じゃあ、どうして不治の病と?」
「私が申し訳なくなってしまうんだ」
「どのような治療法なんですか?」
「転移させるんだよ、他の人の身体に移植するしか治療法はない」
老人は小さく俯いた。
「しないんですか、転移」
「私だってしたいがね」
「じゃあしましょう」
「…?」
「僕が病院に掛け合って来るので、ちょっと待っててください」
Aが病院の自動ドアに歩いて行く背中を、老人はただ見つめていた。