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著しいキャラ崩壊あります!注意!
⚠️クロノアがキモい
⚠️ありえない解像度の低さ
辺りはもうすっかり薄暗くなっていた。
普段は同い年も上級生もいっぱいいる三丁目の児童公園も、今は俺、クロノアとぺいんとの2きりだ。
砂場のふちに散らかしたカードやおやつを入れたポシェットが、茂る広葉樹から漏れ出るオレンジの光に淡く照らされている。
俺らはその樹の下、大人の目を避けるように小さくうずくまって、ゲームのラスボスの討伐に勤しんでいた。ここはちょうと敷地の隅っこで、前にはすべり台があり、裏には看板あり、と人目から隠れるにはうってつけなのだ。
「あー!こいつ 攻撃はずした!」
画面の中の騎士に向かって隣のペいんとが抗議する。
いつもはにぱにぱと笑っているその顔もこの強敵を前には歪み、眉間には可愛らしく皺が寄っていた。ボタン操作も心做しかガチャガチャ荒いし。唇が妙にテラテラしているのは無意識のうちに自分で舐めているのかな。あ、頬に汗が一筋伝って、
「ねぇクロノアー!次 お前のターン!」
ハッと我に返り、慌てて自分の操作キャラの一手を考える。ここは防御か、攻撃か、はたまた回復か?考えようとすればするほど思考がもつれて、結局最強魔法をぶっぱなす形になった。
「はい、ぺいんとのターンだよ」
なんて雑に引き渡せば、お前やる気ある?なんて眉間のシワが更に深くなるが、また先程と同じように次の一攻撃を真剣に考えだすのだ。
そんなぺいんとを、俺はまた見つめる。うーんうーんとうなる声に、時折唾を飲んで動く細い喉。
俺は最近、「ぺいんと病」にかかってしまったのだ。
教室で席が隣になってから、国語のときも算数のときも、給食の時も下校の時までお隣さんの事で頭がパンクしそうで。嬉しそうなところを見たら顔があつくなって、擦りむいて泣いてるところを見たら胸がきゅうっとする。今すぐ駆け寄ってばんそうこうを貼ってあげたくなる。
大丈夫だよって言いたい。
かわいい。
ずっと見てたい。
ああ、守りたい!
そんな事ばっかり考えちゃって、胸のどきどきがいつも収まらない。
今だってペいんととふたりきりで、このボスは僕もなかなか倒せないから、じゃあ一緒に倒そうってこうやって遊んでるのに、俺は……
「あ~っ!負けたあ!」
あー、そんな事考えてるから負けちゃった。画面を見ると、積み上がったキャラ達がコミカルに目を回している。
「またボスダンジョンから攻略しなおしじゃ〜ん」
なんて肩を落とすぺいんとを見て、俺も地画に目を落とす。木漏れ日の影がいっそう濃くなっていた。
「……でも、クロノアが一緒なら、きっと倒せるよな!ボスダンジョンもっかいやろ!な!」
なんて言いながら距離を寄せ、ぽんっと肩を叩いてくるのだ。俺がぺいんと病である事も知らないで。
幾度となく通り抜けたボスダンジョンは、時間こそ無駄にかかるがほとんど作業のように攻略できる。禍々しい背景のフイールドを淡々と進んでいると、ふとぺいんとが口を開いた。
「......なー、クロノア」
「なに?」
「お前さ、どんなハナシされても、良い?」
急にこんな事を言い出した彼の瞳が酷く澄んでいた事に、この時の俺は気づかなかった。
「? いーよ、なんでも」
いたずらな風が吹いて木々の梢が擦れ、ざあっと鳴らす。彼はんー、と小さく声を漏らしたあと、緩慢に近づき、内緒話をするようにこちらに口を寄せて囁いてきた。
「……お前ってさ、ちゅー、した事ある?ほっぺとかオデコとかじやなくてさ、唇にする、ほんとのちゅー……」
ぼふん、と頭が爆発する音が響いた気がした。
この場にサーモグラフィーがあったら、僕の周りだけ真っ白になってたんじゃなかろうか。その声の小ささと先すぼまりな語尾から、これが普通の友達とするような戯れの冗談じゃないことが分かってしまったのだ。
「ど、どういうこと?」と本心を口にすると、彼はまたぽつぽつと言葉を落としはじめた。
「あんさ、この間いとこの結婚式に出てさ、ねーちゃんと旦那さんが、神父の前で、誓いのキスするとこ、見て……それで、ちゅーするってどんなだろう、『好きな人と結ばれる』って、どんなだろう……って、ずうっと考えちゃってさ……」
誓いのキス、ほんもののキス。確かにそれって、どんなだろう。
「そうなんだ、別にないけど」
そこまで言って、少し口の中に言葉を溜めて、
「……ぺいんとは誰かとしたいの?」
でも結局吐き出してしまった。
「……わかんない、ごめん、なんでもない」
そこで会話は途切れた。
心臓がドキドキして、もう飛び出そうで、次の言葉が思いつかなくなったのだ。風がまたざあっと吹いて、もうすっかり暗くなった辺りをすこし冷たくする。
誓いのキス。ペいんとが。
胸がぎゅうっと苦しくて、ぺいんと病が全身に転移しちゃったみたいに手に力が入らない。
道沿いの街灯とゲーム機の光以外に明かりがなくて、辺りはひどく暗かった。ぺいんとが今どんな顔をしてるのかも分からない。
そんな暗さだからだろう、ふとした拍子にペットボトルを倒した。風が吹いたのか、はたまた足が当たったのか。
確かまだ中身が入ってる。慌てて身を乗り出して立てようとすると、ゴチン、と固いものが頭にぶつかって。
フラッとバランスが崩れて、固いものと一緒に地面に倒れ込んでしまった。
「わ”!?」と甲高い声が同時に鳴るのを聞いて、それがぺいんとのおでこだと直感的に理解する。
さすがにデコをぶつけたら痛い。この暗さだ、きっと距離を測れてなかったのだろう、と薄目を開ける。驚いてマヌケな顔をしてるであるうぺいんとに少しだけ期待しながら。
……そう、だから、この数秒後に見ることになる、ペいんとの顔に、顔を耳まで赤らめ、潤んだ瞳を見開いてこちらをまっすぐに見つめるその顔に、抗うための心の準備をする事が出来なかったのだ。
互いのまつ毛が絡みそうな、鼻がくっつきそうな距離だった。ぺいんとの家の匂いがする。
そして、どろどろに甘い体温の元ではくはく動くその唇が、小さく、でも確かに、「ちかい」なんて動きをするものだから。
考えるより前に体が動いて、俺のあつさをぺいんとに押し付けてしまうのも……
きっと、仕方のない事だったのだ。
⚠️ありえない解像度の低さ
辺りはもうすっかり薄暗くなっていた。
普段は同い年も上級生もいっぱいいる三丁目の児童公園も、今は俺、クロノアとぺいんとの2きりだ。
砂場のふちに散らかしたカードやおやつを入れたポシェットが、茂る広葉樹から漏れ出るオレンジの光に淡く照らされている。
俺らはその樹の下、大人の目を避けるように小さくうずくまって、ゲームのラスボスの討伐に勤しんでいた。ここはちょうと敷地の隅っこで、前にはすべり台があり、裏には看板あり、と人目から隠れるにはうってつけなのだ。
「あー!こいつ 攻撃はずした!」
画面の中の騎士に向かって隣のペいんとが抗議する。
いつもはにぱにぱと笑っているその顔もこの強敵を前には歪み、眉間には可愛らしく皺が寄っていた。ボタン操作も心做しかガチャガチャ荒いし。唇が妙にテラテラしているのは無意識のうちに自分で舐めているのかな。あ、頬に汗が一筋伝って、
「ねぇクロノアー!次 お前のターン!」
ハッと我に返り、慌てて自分の操作キャラの一手を考える。ここは防御か、攻撃か、はたまた回復か?考えようとすればするほど思考がもつれて、結局最強魔法をぶっぱなす形になった。
「はい、ぺいんとのターンだよ」
なんて雑に引き渡せば、お前やる気ある?なんて眉間のシワが更に深くなるが、また先程と同じように次の一攻撃を真剣に考えだすのだ。
そんなぺいんとを、俺はまた見つめる。うーんうーんとうなる声に、時折唾を飲んで動く細い喉。
俺は最近、「ぺいんと病」にかかってしまったのだ。
教室で席が隣になってから、国語のときも算数のときも、給食の時も下校の時までお隣さんの事で頭がパンクしそうで。嬉しそうなところを見たら顔があつくなって、擦りむいて泣いてるところを見たら胸がきゅうっとする。今すぐ駆け寄ってばんそうこうを貼ってあげたくなる。
大丈夫だよって言いたい。
かわいい。
ずっと見てたい。
ああ、守りたい!
そんな事ばっかり考えちゃって、胸のどきどきがいつも収まらない。
今だってペいんととふたりきりで、このボスは僕もなかなか倒せないから、じゃあ一緒に倒そうってこうやって遊んでるのに、俺は……
「あ~っ!負けたあ!」
あー、そんな事考えてるから負けちゃった。画面を見ると、積み上がったキャラ達がコミカルに目を回している。
「またボスダンジョンから攻略しなおしじゃ〜ん」
なんて肩を落とすぺいんとを見て、俺も地画に目を落とす。木漏れ日の影がいっそう濃くなっていた。
「……でも、クロノアが一緒なら、きっと倒せるよな!ボスダンジョンもっかいやろ!な!」
なんて言いながら距離を寄せ、ぽんっと肩を叩いてくるのだ。俺がぺいんと病である事も知らないで。
幾度となく通り抜けたボスダンジョンは、時間こそ無駄にかかるがほとんど作業のように攻略できる。禍々しい背景のフイールドを淡々と進んでいると、ふとぺいんとが口を開いた。
「......なー、クロノア」
「なに?」
「お前さ、どんなハナシされても、良い?」
急にこんな事を言い出した彼の瞳が酷く澄んでいた事に、この時の俺は気づかなかった。
「? いーよ、なんでも」
いたずらな風が吹いて木々の梢が擦れ、ざあっと鳴らす。彼はんー、と小さく声を漏らしたあと、緩慢に近づき、内緒話をするようにこちらに口を寄せて囁いてきた。
「……お前ってさ、ちゅー、した事ある?ほっぺとかオデコとかじやなくてさ、唇にする、ほんとのちゅー……」
ぼふん、と頭が爆発する音が響いた気がした。
この場にサーモグラフィーがあったら、僕の周りだけ真っ白になってたんじゃなかろうか。その声の小ささと先すぼまりな語尾から、これが普通の友達とするような戯れの冗談じゃないことが分かってしまったのだ。
「ど、どういうこと?」と本心を口にすると、彼はまたぽつぽつと言葉を落としはじめた。
「あんさ、この間いとこの結婚式に出てさ、ねーちゃんと旦那さんが、神父の前で、誓いのキスするとこ、見て……それで、ちゅーするってどんなだろう、『好きな人と結ばれる』って、どんなだろう……って、ずうっと考えちゃってさ……」
誓いのキス、ほんもののキス。確かにそれって、どんなだろう。
「そうなんだ、別にないけど」
そこまで言って、少し口の中に言葉を溜めて、
「……ぺいんとは誰かとしたいの?」
でも結局吐き出してしまった。
「……わかんない、ごめん、なんでもない」
そこで会話は途切れた。
心臓がドキドキして、もう飛び出そうで、次の言葉が思いつかなくなったのだ。風がまたざあっと吹いて、もうすっかり暗くなった辺りをすこし冷たくする。
誓いのキス。ペいんとが。
胸がぎゅうっと苦しくて、ぺいんと病が全身に転移しちゃったみたいに手に力が入らない。
道沿いの街灯とゲーム機の光以外に明かりがなくて、辺りはひどく暗かった。ぺいんとが今どんな顔をしてるのかも分からない。
そんな暗さだからだろう、ふとした拍子にペットボトルを倒した。風が吹いたのか、はたまた足が当たったのか。
確かまだ中身が入ってる。慌てて身を乗り出して立てようとすると、ゴチン、と固いものが頭にぶつかって。
フラッとバランスが崩れて、固いものと一緒に地面に倒れ込んでしまった。
「わ”!?」と甲高い声が同時に鳴るのを聞いて、それがぺいんとのおでこだと直感的に理解する。
さすがにデコをぶつけたら痛い。この暗さだ、きっと距離を測れてなかったのだろう、と薄目を開ける。驚いてマヌケな顔をしてるであるうぺいんとに少しだけ期待しながら。
……そう、だから、この数秒後に見ることになる、ペいんとの顔に、顔を耳まで赤らめ、潤んだ瞳を見開いてこちらをまっすぐに見つめるその顔に、抗うための心の準備をする事が出来なかったのだ。
互いのまつ毛が絡みそうな、鼻がくっつきそうな距離だった。ぺいんとの家の匂いがする。
そして、どろどろに甘い体温の元ではくはく動くその唇が、小さく、でも確かに、「ちかい」なんて動きをするものだから。
考えるより前に体が動いて、俺のあつさをぺいんとに押し付けてしまうのも……
きっと、仕方のない事だったのだ。