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『あなたの思い出をしまって。』

[水平線]プログラム起動[水平線]
[水平線]全機能正常確認[水平線]
[水平線]しばらくお待ちください・・・[水平線]
・・
・・・・
目を開くと窓から日の光が入る。

『もう朝か。』

私はベッドから体を起こしモーニングティーを用意する。
まぁ、本来そんなことする必要はないけど。

私は「ラウ」人類の文化や物を収集、保存する目的で作られたAIロボットだ。

大半の人類は未知の物質「瘴気」により全滅した。
もしかしたら生き残りがあるかもしれないけど・・ほぼ居ないだろう。

そんな中、私は任務をするついでに生存している人類を探している。
この任務を開始して5年。
誰1人として生存者はいない。

もしかしたら、生存者なんていないかもしれない。
だけど私は諦めない。
私は、貴方達の信じた奇跡を、実現させたいのだ。

『・・うん、今日のティーも美味しいね。』

『あぁ、だけどもうそろそろなくなっちゃう。また買わないとなぁ。』

生存者はいない。そう、機械以外は。

人類が絶滅する前、社会はとても発展していて、ロボットと人間が共存していた。

ロボット達は今も仕事を続けていて、いろいろな物を売ってくれる。

『次は違う茶葉でも買ってみよっかな。ふふっ!来週の楽しみが増えた!楽しみだな。』

『って!あっもうそろそろ任務に行かないと。』

今日も一日が始まる。
今日は何を見て、誰と出会うのだろうか。

[水平線]旧保護地区 Aー6区[水平線]

ここは旧保護地区、元々人間が保護されていたが、瘴気がここにも蔓延したため廃れてしまった地区だ。
だけどまだロボット達は動いていて買い物ができる。
私はここにいつも娯楽品などを購入しに来ている常連客だ。

『うーん、ここも瘴気が濃くなってきたな…』
きっとこの地区はよくて4日、悪くて今日には完全に錆びてしまうだろう。

今日、移住するか…

あぁ、ちなみに瘴気とは、触れた物を徐々に錆びさせていく病気のような物だ。
一応特効薬なども出されたけど…結局のところ進行を遅らせるだけだろう。
現に本当に特攻があったら人類は絶滅していない。


もちろん物を錆びさせる物だからロボットも影響を受ける。

『おーい!イナミさん!いるー?!』

店の奥の方から電子音が聞こえる。

どうやらまだ動けるらしいが、限界が近いだろう。

『あの茶葉をください。』

『あと…この写真、貰っていきますね。』

この写真は店主さんの宝物であろう、あの店主さんの息子さんであろう男の子の写真だ。

こんなに愛情が溢れてくるものはきっと数少ないだろう。
このまま錆びさせてしまうのはとても勿体無い。

茶葉を買い、写真をもらった後、私はこの地区をでた。

『うーん…なんだろう?あれ』

地面にドアのような物がある。
地下室だろうか?
開けてみるとハシゴが続いている。
私はゆっくりと梯子を降りていった。

『ふむふむ…これはアレだね。きっと「感染者」が自分を閉じ込めるために作ったものだね。』

「感染者」というのは瘴気に触れてしまった人間の中でも重症の者の呼称だ。

『ん?なんか床に落ちてる…』

床にあったのはビデオカメラだ。
まだ起動するようで、中身を見てみることにした。

[水平線]ビデオカメラの映像[水平線]

⦅えー…聞こえているでしょうか。⦆

男はカメラに首元をみせる。

⦅私は…はい、見てわかるように瘴気に蝕まれ、感染者となってしまいました。⦆

⦅娘や妻に瘴気を移さないよう、ここで生活することになり、今は助けを求められるようにとカメラを回しています。⦆

[水平線]ビデオカメラの映像 二日目[水平線]

男は口から血を吐き出している。

⦅ゔ…あぁ、どうやら瘴気がしんこ、うし、う、うまく喋り、喋れないぃ、ようです。⦆

男が咳き込み再び血を吐き出す。

⦅むず、娘は、今は保護地区の方にいるはず…か、がの、彼女はぁ、元気でしょうか…⦆

⦅今日はぁっ、妻の、誕生日っび、でぇ、むずめど頑張って、じゅっ準備したのにけっ結局、無駄だったのかなぁ…⦆

男は泣き出す

⦅じにだくないっ、!死にたくない…!⦆

[水平線]ビデオカメラの映像 三日目[水平線]

男の啜り泣く声が聞こえる。

⦅はぁ… はぁ… [小文字]ゔぇっ…[/小文字]⦆

⦅死に…だぐない…あい、たい…最後ぉっで、いいがら…!妻と、娘に、あいだいっ!⦆

[水平線]ビデオカメラの映像 ???日後[水平線]

⦅・・・・・・・・・・。⦆

ビデオカメラも瘴気に侵されたのだろうか。壊れて映像が止まる。

[水平線]

なんとも言えない。

きっとこの人は無念だった筈だ。
この人の言ってる保護地区というのは、きっと私のいたあの旧保護地区のことだろう。

瘴気が蔓延する前は、娘と妻がとなりにいて…
毎日がきっと楽しかっただろうに…

私には、手を合わせることぐらいしか出来ない。
彼は、天国で家族と会えたのだろうか。

『このビデオカメラ…もらっておきますね。』

私ができることは、貴方の生きた痕跡を保存することだ。

私は、決して忘れない。貴方が生きていたという証拠を。
だから…

『どうか…安らかに眠っていてください。』

作者メッセージ

読み切り三作品目となる作品です。

どうか生暖かい目で見守ってください。

2024/08/18 23:31

孤閨 鈴
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AI少女老人荒廃した世界

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