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#地味女子 クズ くっつく 方法

#6

声を殺して泣く。

______________________

体育の授業。


体育館に入った瞬間、灯の心臓がギュッと縮む。 


……私、運動神経、ゼロ。


しかも今日は、ペアでパス練習——



先生「はい、今日はペアでパス練なー。前回の席の隣同士で組め」


うっ。


灯の視線が横に行く。


……いる。


[漢字][大文字]橋 蒼[/大文字][/漢字][ふりがな]はし あお[/ふりがな]


蒼「……ああ、星乃さんか」


小さく呟いたその声が、灯には大きく響く。 


灯「……す、すいません……」


反射的に謝る。


蒼はちらっと灯を見て、すぐに視線を逸らす。


蒼「……いや、何も」


何もなしに言ったその一言が、胸に刺さる。


______________________


準備運動が終わり、ペア練習開始。


バスケットボールが灯の手に渡される。


……重い……
……怖い……


蒼は少し離れた位置で腕を組み、友達と話している。


蒼「じゃ、投げて」


灯「……は、はい……」


ぎこちなく構える。


思い切って投げると——


ボールは床に叩きつけられ、全然違う方向に転がる。


コロコロ… 🏐


蒼は無言で見ている。


拾いに行こうとするけど、うまく投げられない。


灯「……っ……」


顔が熱くなり、膝が震える。


蒼「もう一回」


声は淡々としている。


距離は冷たい。


二度目のパスも、弱すぎて途中で落ちる。


蒼「……」


また無言。


体育館のざわめきが、やけに大きく聞こえる。


蒼は小さく息を吐いた。


蒼「……俺あっち行ってくるからやってて」


灯「……え……?」


振り返ると、蒼は友達の方へ歩いていく。


振り返らない。


ただ。


灯だけが、その場に置き去りになった。


……そっか。
……私、邪魔なんだ。


胸の奥が、ずん、と沈む。


ボールを拾う手が、震える。



……頑張ろうって思ったのに……


一人で壁に向かって投げる。 


また落ちる。

拾う。

投げる。

落ちる。


視界が、にじむ。


……やだ……


泣きたくない。


誰にも、見られたくない。


灯は体育館の端に移動する。


みんなの視線から、少しだけ外れた場所。


ボールを胸に抱え、しゃがみこむ。


……ぐすんっ…


声を殺す。


涙がぽたっと床に落ちる。


……私、ほんとダメ……


蒼の「俺あっち行ってくるからやってて」が、頭の中で何度も再生される。


______一緒にやってくれない、でも怒ってるわけじゃない、でも……


灯は膝に顔を埋めたまま、息を整えようとする。


体育館のざわめきに、泣き声は消される。


誰にも、バレていない。


星乃灯は今日、
誰にも見られずに、泣いた。


そしてまた一つ、
橋 蒼という存在が、
胸の奥に、重く沈んでいった。

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