放課後の教室。
灯は机に向かってノートを片付けていた。
心の中で、自分に言い聞かせる。
灯「蒼なんか、好きじゃない……山田くんの方が安心……」
でも、今日もどこか気になって、つい視線は教室の端にいる蒼に向いてしまう。
蒼はいつも通り、男子たちとゲームで大騒ぎ。
女子にはほとんど話しかけず、必要なことしか言わない。
でも、今日に限って、その「必要なこと」が灯の目の前に降ってきた。
蒼「星乃さん、これコピー貸すから」
手渡されたプリントに触れる瞬間、距離が近い。
灯の心臓は跳ね、頬が熱くなる。
灯「……あ……ありがとう……」
蒼はすぐに後ろに下がる。はずだった——
でも、タイミング悪く灯が後ろに下がろうとした瞬間、足が机に引っかかり、体勢を崩す。
灯「わっ……!」
慌てた灯は前に倒れ、気づけば______
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——蒼の上に乗っかっていた。
蒼「……おい、ちょっ……!」
いつも通りクールに見える蒼も、さすがにその状況に目を丸くする。
でも、すぐに落ち着いた声で言った。
蒼「……大丈夫やけん、動かないで」
灯は顔を真っ赤にして、胸の奥がぎゅうぎゅうに締め付けられる。
距離が近すぎる、香りが強すぎる、視線が近すぎる……
灯「……あ……あの……」
声が出ない。
心臓は、まるで大暴れしているかのように跳ねている。
蒼は淡々と、でも不自然なくらい手を添えて灯を支える。
「必要最低限」の行動なのに、その距離感と手の温もりだけで、灯の理性は完全に崩壊された。
——この……クズ男……!
——必要なことだけって……
——この距離……胸が……壊れる……
灯はそっと手を握りしめ、息を整えようとするが、胸の高鳴りはまったく収まらない。
今日もまた、「ちっちゃいのに態度がデカい男」に振り回されることを、身をもって痛感したのだった。