英語の授業。
今日のペアワークは、先生の指示で向かい合う形になった。
灯は心臓を押さえながら、ゆっくりと椅子を引く。
……隣……隣……蒼……!
やだ……落ち着け……
隣になった時ですでに瀕死なのに、さらに向かい合うとなると……もう無理。
灯「……あ、あの……」
小さく声を漏らす。
でも蒼は何も言わず、机越しにこちらを見る。
視線が、灯の目をまっすぐ捉えた。
——距離、近い。
——視線、逃げられない。
そして、ふわっと香る。
——シャンプー?
——制服?
灯の心臓は、確実に止まりかけた。
……っ……!?
……いい匂い…………
思わず視線を逸らそうとする。
でも、蒼は少しも動かず、淡々と灯を見ている。
逃げ場がない。
蒼「……あれ?なんて言うんだっけ?」
蒼が、英文を言う前に首をかしげる。
はっ……!?
灯の心臓が、さらに吹っ飛ぶ。
……っ……え……なに……可愛い……
……もう、最初からやばい……
蒼「……えっと、What is this?」
蒼がようやく口にする。
声が、耳に優しく響く。
灯は、その声、視線、匂い、そして天然バカな一言で、完全に瀕死。
必死で言葉を絞り出す。
灯「……えっと……This is…」
蒼は黙って待つ。
淡々と、でも無自覚に、目を見ている。
授業が終わるまで、この地獄は続く。
蒼はただバカで無自覚なまま、英文を言い合うだけ。
でも灯にとっては、
[大文字][太字] 視線+距離+香り+声+「なんて言うんだっけ?」=最強の攻撃。[/太字][/大文字]
……もう無理……瀕死……
星乃灯の心臓は、今日も蒼によって完全に破壊された。