放課後の教室。
男子たちは机を囲んで、いつも通り騒いでいた。
友達「蒼それ絶対お前のせいやろ!」
蒼「は?マジで!?俺悪くねーって!」
笑い声の中心で、蒼は肩を揺らしている。
灯は帰り支度をしながら——また、見てしまった。
……ちっちゃい。
自分より少し低い位置にある頭。
友達に囲まれて、無邪気に笑う顔。
……だめ……
見ちゃいけないのに。
蒼が肘で突かれて、
蒼「痛っ」
って言いながら笑う。
その顔が——
……可愛い……
思ってしまった瞬間、心臓が跳ねた。
なに考えてるんだ……私……
その時。
蒼の笑顔が、ふっと消えた。
視線が、こちらに向く。
……っ!
目が合った。
逸らそうとしたのに、できない。
蒼は動かない。
からかいもしない。
ただ、気づいた、という顔で灯を見ている。
教室の音が遠くなる。
まばたきも、呼吸も、忘れる。
蒼の目が、少しだけ細くなる。
数秒。
灯には、永遠みたいだった。
先に視線を切ったのは、蒼だった。
何も言わず、友達の方へ戻る。
蒼「続きやろーぜ」
灯は、やっと息を吐いた。
胸が、苦しい。
……今の……なに……
蒼はもう、さっきまでと同じ調子で騒いでいる。
灯のことなんて、忘れたみたいに。
なのに。
灯の心だけが、置いていかれた。
…なんで……
夕方の教室が、やけに眩しかった。