[漢字]星乃 灯[/漢字][ふりがな]ほしの あかり[/ふりがな]は、自分のことを「暗い人」だと思っている。
クラスでも、きっとそう呼ばれている。
黒いロングヘアは少し乱れていて、黒メガネの奥から人の顔を見るのが苦手。
制服だけはきちんと整えている。
灯「こんにちは……」
朝の挨拶は、今日も誰にも拾われない。
少し前の席に、山田健斗がいる。
ぽっちゃりしていて、いつも笑っていて、優しい。
灯「え?あ、はい!おはよー!」
それだけで胸がふわっとする。
——好き、だった。たぶん。
そのすぐ近くで、うるさい声。
友達「うわ〜、それバグやろ」
?「は?マジで!?」
[漢字]橋 蒼[/漢字][ふりがな]はし あお[/ふりがな]
顔だけは無駄に整っていて、性格はクソ。
しかも——ちっちゃい。
灯より、少しだけ背が低い。
なのに態度は誰よりもデカくて、
男子の真ん中でゲームしながら騒いでいる。
……近づかない方がいい人
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給食の時間。
灯はパンをちぎりながら、視線を落としていた。
前の方で、男子たちが笑っている。
友達「蒼、それ俺のプリン!」
蒼「は?名前書いてねーし」
蒼が、友達の肩越しにプリンを取ろうとして、
何か言われて——
一瞬だけ、笑った。
少し見上げる形で、
目が細くなって、口角が上がる。
……え
灯の視線が、思わず止まる。
背は低い。
声はうるさい。
性格は最悪。
なのに、その笑顔だけが、やけに自然で。
胸の奥が、きゅっと縮む。
……見なきゃよかった……
蒼はすぐに真顔に戻り、
蒼「早く食えって」
なんて言いながら給食に戻る。
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放課後。
帰ろうとして立ち上がった瞬間、前から誰かが来て——
[大文字][斜体]コツン。[/斜体][/大文字]
?「あ」
視線を上げると、すぐそこに蒼がいた。
自然と、灯は少しだけ見下ろす形になる。
蒼「あ、大丈夫やけん!」
蒼はすぐそう言って、一歩下がる。
その距離が、近い。
灯「……す、すいません……」
蒼「いや、俺こそ」
一瞬だけ、目が合う。
下から見上げられる形。
それだけで、心臓が変な音を立てた。
蒼はもう興味なさそうに、友達の方へ戻っていく。
——ただそれだけ。
なのに灯は、その場から動けなかった。
……………クズなのに………………
失礼なことを考えた自分に、少し自己嫌悪する。
でも同時に、
さっきの笑顔と、見上げられた視線が、頭から離れない。
山田くんの優しさは、安心する。
蒼の存在は——落ち着かない。
灯「……やだ……」
小さく呟いた声は、誰にも届かない。
星乃灯はまだ知らない。
この“[漢字] ちっちゃいのに態度がデカい男”に[/漢字][ふりがな]橋 蒼[/ふりがな]、
一番振り回されることを。
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