昼休み終了直前の教室。
空気はまだざわついているが、さっきより少しだけ静かになっている。
その原因は、たぶん一人。
夢雲 麩羽だった。
机に肘をつき、スマホを握りしめる彼女は、いつもより明らかに機嫌が悪い。
麩羽「……はぁ」
ため息ひとつ。
その時点で周囲の空気がわずかに冷える。
さっきの“うるさい男子群”……まだ騒いでますね。理解不能です
麩羽の視線の先では、例の男子たちがまだ笑っている。
その中の一人が、軽いノリで言った。
男子「てかさ、さっきの布教っぽいやつウケたわw」
その瞬間。
麩羽のスイッチが入った。
麩羽「……は?」
静かな声。
でも空気が一瞬止まる。
彼女はゆっくり立ち上がる。
麩羽「今、何を“ウケた”って言いましたか?」
男子たちが気づく。
さっきの匿名投稿の主が“近くにいる側の人間”だと。
男子「え、いや別に深い意味は……」
麩羽「深い意味がないなら、浅いノリで他人の“好き”を笑ったってことですね?」
一歩前へ。
声は小さいのに、妙に刺さる。
麩羽「麩羽は別に、押し付けてません。お願いしただけです」
麩羽「“聴いてください”っていうのは、“黙れ”よりずっと優しい言葉です」
麩羽「それをウケるとか言える神経、逆に尊敬します」
男子たちが少し黙る。
その隙を逃さず、麩羽は畳みかける。
麩羽「じゃあ説明しますね。あなた達が“面白い”って言った世界の外側」
スマホを軽く掲げる。
■いれいすとは
「歌い手グループです。複数人で活動してて、
歌ってみたとかオリジナル楽曲とか、色んな“声の表現”をやってる人たちです」
「例えば──」
麩羽の指が止まる。
麩羽「低音ラップが異常にかっこいい人がいます」
麩羽「見た目に油断すると心臓持ってかれます」
麩羽「歌が上手すぎて、感情の処理が追いつかない人もいます」
麩羽「普通に聴いてるだけで“なんでそんなに歌えるんですか?”ってなります」
麩羽「あと、声だけで殴ってくるタイプの人もいます」
麩羽「しかもメンバーとの絡みで精神が削られます。尊さで」
男子の一人がぼそっと言う。
男子「それただの熱量じゃん……」
麩羽、即答。
麩羽「熱量で何が悪いんですか?」
麩羽「“好き”って感情は、軽く扱っていいものじゃないです」
麩羽「笑うなら、理解してからにしてください」
一瞬の静寂。
■クロノヴァとは
麩羽は少しだけトーンを落とす。
麩羽「こっちは雰囲気が違います」
麩羽「声とか世界観とか、“刺さる人にだけ刺す”タイプです」
麩羽「静かに落とされる感じです」
麩羽「たとえば、声で胸撃ち抜かれた事ってありますか?」
男子「あります。普通にあります」
麩羽「それがクロノヴァです」
男子たち、完全に黙る。
さっきまでの笑い声は消えている。
麩羽はスマホをしまう。
麩羽「……以上です」
少し間を置いてから、最後に一言。
麩羽「で、もう一回聞きます」
麩羽「さっきの“ウケた”って、まだ言えますか?」
誰も答えない。
麩羽は小さく息を吐く。
麩羽「……じゃあいいです」
席に戻る途中、彼女は小さくつぶやく。
麩羽「布教って、やっぱり楽じゃないですね」
でもその声は、どこか少しだけ満足そうだった。
その後。
教室の空気は、少しだけ変わっていた。
誰かがスマホで「いれいす」を検索している。
誰かが「クロノヴァって何?」と小さく聞いている。
そして委員会のチャットに通知。
『評価:感情の揺さぶり確認。次フェーズへ』
麩羽は画面を見て、無表情で言う。
麩羽「まだ上があるんですか……?」
空気はまだざわついているが、さっきより少しだけ静かになっている。
その原因は、たぶん一人。
夢雲 麩羽だった。
机に肘をつき、スマホを握りしめる彼女は、いつもより明らかに機嫌が悪い。
麩羽「……はぁ」
ため息ひとつ。
その時点で周囲の空気がわずかに冷える。
さっきの“うるさい男子群”……まだ騒いでますね。理解不能です
麩羽の視線の先では、例の男子たちがまだ笑っている。
その中の一人が、軽いノリで言った。
男子「てかさ、さっきの布教っぽいやつウケたわw」
その瞬間。
麩羽のスイッチが入った。
麩羽「……は?」
静かな声。
でも空気が一瞬止まる。
彼女はゆっくり立ち上がる。
麩羽「今、何を“ウケた”って言いましたか?」
男子たちが気づく。
さっきの匿名投稿の主が“近くにいる側の人間”だと。
男子「え、いや別に深い意味は……」
麩羽「深い意味がないなら、浅いノリで他人の“好き”を笑ったってことですね?」
一歩前へ。
声は小さいのに、妙に刺さる。
麩羽「麩羽は別に、押し付けてません。お願いしただけです」
麩羽「“聴いてください”っていうのは、“黙れ”よりずっと優しい言葉です」
麩羽「それをウケるとか言える神経、逆に尊敬します」
男子たちが少し黙る。
その隙を逃さず、麩羽は畳みかける。
麩羽「じゃあ説明しますね。あなた達が“面白い”って言った世界の外側」
スマホを軽く掲げる。
■いれいすとは
「歌い手グループです。複数人で活動してて、
歌ってみたとかオリジナル楽曲とか、色んな“声の表現”をやってる人たちです」
「例えば──」
麩羽の指が止まる。
麩羽「低音ラップが異常にかっこいい人がいます」
麩羽「見た目に油断すると心臓持ってかれます」
麩羽「歌が上手すぎて、感情の処理が追いつかない人もいます」
麩羽「普通に聴いてるだけで“なんでそんなに歌えるんですか?”ってなります」
麩羽「あと、声だけで殴ってくるタイプの人もいます」
麩羽「しかもメンバーとの絡みで精神が削られます。尊さで」
男子の一人がぼそっと言う。
男子「それただの熱量じゃん……」
麩羽、即答。
麩羽「熱量で何が悪いんですか?」
麩羽「“好き”って感情は、軽く扱っていいものじゃないです」
麩羽「笑うなら、理解してからにしてください」
一瞬の静寂。
■クロノヴァとは
麩羽は少しだけトーンを落とす。
麩羽「こっちは雰囲気が違います」
麩羽「声とか世界観とか、“刺さる人にだけ刺す”タイプです」
麩羽「静かに落とされる感じです」
麩羽「たとえば、声で胸撃ち抜かれた事ってありますか?」
男子「あります。普通にあります」
麩羽「それがクロノヴァです」
男子たち、完全に黙る。
さっきまでの笑い声は消えている。
麩羽はスマホをしまう。
麩羽「……以上です」
少し間を置いてから、最後に一言。
麩羽「で、もう一回聞きます」
麩羽「さっきの“ウケた”って、まだ言えますか?」
誰も答えない。
麩羽は小さく息を吐く。
麩羽「……じゃあいいです」
席に戻る途中、彼女は小さくつぶやく。
麩羽「布教って、やっぱり楽じゃないですね」
でもその声は、どこか少しだけ満足そうだった。
その後。
教室の空気は、少しだけ変わっていた。
誰かがスマホで「いれいす」を検索している。
誰かが「クロノヴァって何?」と小さく聞いている。
そして委員会のチャットに通知。
『評価:感情の揺さぶり確認。次フェーズへ』
麩羽は画面を見て、無表情で言う。
麩羽「まだ上があるんですか……?」