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いじめられっ子、最強殺し屋に転生。

#1

消えた席

教室の後ろの席は、いつも同じ空気を吸っていた。


埃っぽくて、誰にも気づかれない空気だ。


そこに座る少年の名前は[漢字]神谷 恒一[/漢字][ふりがな]かみや こういち[/ふりがな]。


背は低く、声も小さく、教科書の角はすり減っている。


理由は単純で、よく投げられるからだ。


???「おい、神谷」


前の席から振り返ったのは、クラスの中心にいる男子、[漢字]桐生 恒一[/漢字][ふりがな]きりゅう こういち[/ふりがな]だった。


名前が同じなのを、彼はことさらに気に入っていた。


桐生「お前さ、今日の体育見学な。邪魔だから」


その言い方に、周りの数人が笑う。


「またサボりかよ」
「ほんと根性ねーな」


神谷は何も言わない。


ただ、机の木目を見ている。


反論したところで、状況が変わることは一度もなかった。


むしろ、悪くなるだけだと知っていた。


桐生は神谷の机の中からプリントを引き抜き、わざとらしく破った。


桐生「これ、提出だっけ? まあいいや」


紙が裂ける音は、教室の笑い声にすぐ溶けた。


先生は見て見ぬふりをする。いつものことだった。  


放課後、神谷は誰よりも遅く教室を出る。


廊下の窓から見える空は、薄く灰色だった。


靴箱の前で、靴が一足だけひっくり返されているのを見つける。   


神谷の靴だ。


中に入っていた上履きは、水で濡れていた。  


誰がやったのか、考えるまでもない。


ただ、もう驚きもしなかった。


淡々と履き替え、校門へ向かう。


その途中で、背後から声が飛んだ。


桐生「おい、神谷」


振り返ると、桐生とその取り巻きが立っている。 


桐生「今日さ、ちょっと付き合えよ」


付き合え、というのは命令だ。


行き先は決まっている。


駅裏の、誰も来ない空き倉庫。


神谷は小さく息を吐いた。


神谷「……わかった」


その返事に、桐生は少しだけ拍子抜けした顔をしたあと、笑った。


桐生「最初からそう言えよ」


倉庫の中は、鉄と埃の匂いがした。


光はほとんど入らない。  


数人に囲まれた状態で、神谷は中央に立たされる。


桐生「今日はさ、ちょっと実験」


桐生は楽しそうに言う。


桐生「こいつ、どこまで我慢できるか試そうぜ」


笑い声。


最初の一発は、腹だった。


息が一瞬だけ止まる。


次は肩。


膝。


倒れても、終わらない。


痛みは、徐々に“現実感”を失っていく。


ただ、遠くで音がしているだけのようになる。


桐生がしゃがみ込み、耳元で囁いた。 


桐生「お前さ、生きてて楽しい?」


神谷は答えなかった。


答える必要が、もうどこにも見当たらなかった。


________________________________________________


その夜。


神谷は家に帰らなかった。


代わりに、河川敷の橋の下で座っていた。


雨は降っていないのに、全身が濡れている気がした。


スマホは壊れている。


正確には、壊された。


連絡する相手もいない。


ただ一つだけ、妙に鮮明に思い出すことがあった。


倉庫の奥、鉄骨の隙間に落ちていた古いケース。


中に入っていたのは、用途のわからない金属製の部品と、奇妙な刻印。


触れた瞬間、冷たさではなく――“静けさ”が指に広がった感覚。


その時、誰かの声がした気がした。


いや、声ではない。


もっと深い場所で、何かが“呼吸”したような。


______________________________________________________


翌朝。


神谷 恒一は学校に来なかった。


その代わりに、桐生 恒一の机の上には、一枚の紙が置かれていた。


何も書かれていない、真っ白な紙。


ただ一箇所だけ、黒く焼け焦げたような跡があった。


誰も、それに気づかなかった。


そして、その日を境に――


 神谷 恒一という存在は、学校から「いなかったこと」になった。
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作者メッセージ

いじめは許せない、相手は悪気がなかったとしても。

2026/05/09 16:31

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いじめられっこ暗殺者殺し屋

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